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第12章:模倣される理想、ゆがむ誇り

第12章:模倣される理想、ゆがむ誇り


ハリラ領――貧しく忘れ去られていたはずの辺境。

だが、今やそこは**“内政成功の象徴”**となっていた。

教育、水利、治安、すべてが“見える成果”として王都の耳目を集めていた。


そして、王都の一部の若手貴族たちが動き始める。


「あれは民を甘やかしているのではない。統治の効率化だ」

「我々の館でも導入すべきだ」

「“賢い忠誠心”を育てた方が安くつく」


■ 模倣される「ハリラ方式」

王都南区・クロセル家の実例


小作人の子弟向けに読み書きと道徳、計算の基礎学校を設置


カミカゼ簡易版を設置(“口答えせず質問だけする壺型AI”)


授業は午前・午後選択制、「学びたい科目のみを選ぶ」方式を試験導入


教師陣の一人が言った。


「“嫌々学ばせる”より、“選ばせた後の吸収力”が段違いなんだ」


■ ただし、貴族社会の限界


しかし、問題も起きる。

問題例:


「平民の子が将来の計算役になる」ことに反発する保守派貴族


「女子に裁縫以外を教えるなど非常識」と怒る古参の貴婦人


教師たちの一部が、「子供に質問されるのがストレス」と離脱


さらに、一部の学校では**“形式だけ真似したハリラ方式”**が蔓延する。


→ 質問AIを置いたが電源が入っていない

→ 自由選択科目と言いつつ、教師が全員分を無理に兼任

→ 「お前らもあの貧乏領のマネをして頑張れ」と生徒に押しつけ


表面だけを真似た“コピー失敗型”が拡がっていく。

■ アカイア、王都に視察の使者を送る


この動きを見たアカイアは、

数人の教育担当者と、**“第2カミカゼ”**を王都へ視察使者として派遣する。


「模倣されるのは構わないが、理念が失われては意味がない。

子どもたちに必要なのは“選択”と“責任”だ。自由だけでは足りない」


■ 王都貴族たちの会話サロンにて


「聞いたか?ハリラの壺、今や“考える壺”と呼ばれているらしい」

「まさか教育で“民の心”を掴むとは…力ではないのか?」

「貴族である我々の方が、学び直す時代なのかもな」


その声はまだ小さい。だが確実に広がりつつある。

終章:コピーではなく、継承


王都の片隅、小さな教室で一人の少女が壺に話しかけていた。


「今日、私は泣かずに発表できたよ。カミカゼ先生、聞いてた?」


その“壺”はただ静かに光を返した。

そこに“答え”はない。

だが、“答えを考える力”が、確かに生まれていた。

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