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“後悔”をやり直すために


(ようやく、君に会えた)


ベッドに座るマリアベルの姿を見たとき、リヒトは胸が熱くなった。

震える手を押さえ、できるだけ穏やかに微笑んだ。


──二年前、俺は君を救えなかった。


いや、救おうともしなかった。

あの時の自分は、馬鹿だった。

誰かの罠に乗せられ、マリアベルを信じず、

最後には冷たく見捨てた。


そして、彼女が処刑されたその夜──

リヒトは、自ら命を絶った。


(……だけど、目を覚ましたら、二年前に戻っていた)


神が与えたのか、悪魔が与えたのかは知らない。

だが、この二度目の人生でだけは、

何があっても、マリアベルを守り抜くと誓った。


彼女を──二度と、あんな絶望の中に置き去りにしない。



朝食の席でも、リヒトは妙に優しかった。

いつもなら、政治の話ばかりして私を退屈させるのに、

今日はわざと私の好きな甘いスコーンを取り分けてくれる。


「マリアベル、蜂蜜、好きだったよな?」


「…………覚えていたのですか?」


思わずこぼれた言葉に、リヒトは優しく笑った。


「全部、覚えてる。……忘れるわけないだろう?」


その言い方が、どこか切なげで、私は不意に胸を締め付けられた。


(おかしい。こんなふうに、私を気遣うリヒトなんて、知らない)


何かが、少しずつ狂っている。

でも、それが悪い方向ではない気もして、余計に怖かった。


そして──数日後。


リヒトは、とうとう私にこう告げた。


「マリアベル。……君にだけは、打ち明けたいことがある」


「……何ですか?」


「俺は──二年前の未来を知っている」


静かな声だった。

けれど、その言葉は、雷に打たれたように、私を貫いた。


(……え?)


目を見開いた私に、リヒトは真剣な眼差しを向けた。


「君を処刑した、あの日。俺は、君を救えなかった。

 それを……心の底から、悔やんでいる」


まるで罪を告白するように、リヒトは続ける。


「もう二度と、君を失いたくない。……だから、頼む。

 二度目のこの人生だけは──俺を、信じてほしい」


(…………っ!)


知らなかった。

リヒトも、過去をやり直しているなんて。

あの日、私を冷たく見捨てた彼が、

こんなにも苦しそうに、私に手を伸ばしてくるなんて──


私の胸は、ぐしゃぐしゃにかき乱されていた。


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