08 共犯者・・・
ミリアムは居間のソファで例の悲劇の続きを読んでいた。その時、裏口がノックされた。
門をあけてなかに入って来たのだ。
訪問者は二人組の男性だった。
金髪のほうが
「念の為にお話を聞くだけです」と優しく笑いながら頭を下げた。
ミリアムはカイルに向かって
「どうぞ、客間に玄関に回っていただいて」と言った。
だが、二人は
「かしこまらないでお話したいので、ここで」とカイルを押しのけてなかに入って来た。
おろおろと立ち上がったミリアムは
「どうぞ、散らかってますが」と二人に椅子をすすめた。
「家庭的でくつろげる場所ですね」と金髪が愛想よくミリアムに言った。
カイルは二人を睨んだが、ため息をついてお茶の用意を始めた。
茶色の髪のほうが
「奥様、ケティ・パーマーをご存知ですね」と言った。
ミリアムは
「はい、ミザリーの運転手の娘ですね」と答えた。
茶色のほうが
「はい、昨日死体で発見されました。死んだのはおとといの夜から昨日の朝にかけて。昨日の昼すぎ、仕事に来ないので、心配して部屋を訪ねて死んでいるのが見つかりました。殺人事件です。毒です」
「は?!」
「リア、大丈夫ですか?」とカイルがそばにすっ飛んで来て
茶色の髪の男も
「奥様!」と立ち上がり
金髪も
「いきなり話すな!」と茶色の髪の男に向かって言った。
ミリアムは微笑みを浮かべ、三人を交互に見ながら
「大丈夫です。大丈夫。三回目ですもの。平気です」と言った。
だが、すぐ一生懸命に
「いえ、平気じゃないですよ。若いお嬢さんですもの。会ったばかりだし」と言いながら、胸を押さえた。
カイルは
「ちょっとミリアムを休ませて良いですか?」と二人に聞いた。
「えぇ、勿論です」
カイルはミリアムを抱き上げると部屋を出た。
「奥様にいきなりは酷でしたね」
「いや、失敗した、もう一度ですね」
「気の毒ですね・・・」と二人は話していた。
一度戻って来たカイルは、棚からクスリの小瓶を取り出すと
「頭痛がすると言うので飲ませてきます。もう少し待って下さい」と再び部屋を出て行った。
カイルが出ると二人は棚を調べ、下の段のカゴに空き瓶が入っているのを確認した。
「お待たせしました」とカイルが戻って来た。カイルは空き瓶をカゴに入れるとお茶を用意して椅子に座った。
三人は黙ってお茶を飲んだ。
「ケティさんと知り合った経緯を教えて下さい」
カイルは、ミザリーの葬式の日に彼女の運転手の花輪も手配したこと。偶然市場で会って一緒に食事をしたがびっくりしたこと。その時に嫌悪感を感じたことも正直に話した。
何度も家に来られて迷惑だったこと。あの日急に腹痛を訴えたので医者に連れて行こうと自動車に乗せたが、途中で回復したので、近くまで送って別れたことを話した。
順番に話そうと考え、考え、話をしたカイルは
「正直、ケティさんのことよりミリアムの方が、心配だったので早く帰れてよかったですよ」と話を締めくくった。
黙ってメモを取りながら話を聞いていた警官は、質問を始めた。
「お茶はいつもあなたが入れますか?」
「はい、いつもわたしです。・・・あっケティさんが来た日、最後の日はミリアムが入れました。わたしが庭を見せに連れて行きましたので・・・・そのお茶を飲んで腹が痛いとか、ミリアムが気に病むでしょう。まったく」とカイルが不機嫌に言った。
「なるほど・・・・」
「ミリアムさんはケティさんを恨むといったことはないでしょうか」
えっ?カイルはびっくりしたが、すぐに
「ありません。考えられない・・・世界が違います」と答えた。
だが、二人を不安そうに見て
「あの。お茶を飲んで死んだとか・・・・ありませんよね」と言った。
「いえ、毒はワインに入ってました」
「そうですか、やーーー良かった。・・・あっいえ良くないですね」とカイルはあわてて付け足した。
警官二人は軽く笑うと
「一応、必要な質問なので」と前置きしてから
「カイルさんは彼女に恨みは」
すぐにカイルは
「ありません。なんだか気持ち悪い人でした。腹痛になったり・・・・恨むと言うより迷惑でした・・・・・ただ、死んだと聞けば・・・・」とため息混じりに答えた。
「それでですね。奥様のお話も聞きたいのですが・・・・回復してからで・・・」
カイルは思わず
「ミリアムは関係ないですよ。わかるでしょ。お茶じゃないんだから」と警官に怒鳴った。
「そうなんですね。よくわかりますが、これも規則でね」と警官はカイルの怒号に動じずに続けた。
その時ドアが開いた。
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