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一旦仮  作者: 羽田智鷹
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高校二年生が終わると僕はヤマモトのいる宮内庁舎へ戻った。

仮初めの高校生は終了だ。


高校二年生という1年間だけだったか、色々な思い出ができた。


学校祭が終わると、河井と岩屋さんは少しずつ教室でも楽しそうな会話を繰り広げ、かつての仲の良い関係以上のものに変わりつつあるようだった。

放課になると仲良く、グラウンドに駆け出している。


僕が初めて会った頃の河井からは全く想像が出来ないくらい、いい方向に変わったんだなと思う。

岩屋さんも見ての通り、部活内で競い合う相手をずっと待っていたようだった。

部活に復帰しつつある河井と競争している姿を僕は教室からたまに見かけた。


誰もいなくなった教室で一人、僕は窓の外の部活動の様子を眺めて過ごした。

演劇部から勧誘を受けた片山がたまに放課後の教室に顔を出す。

学校祭が終わって皆変わったよなあ、と片山は感慨深い声を出す。

次はどんな役をやるんだ、と訊くと、最高に悪い奴で最高に楽しいヤツ、と返ってくる。


僕の高校生活はなんだかんだ片山に助けられてしまった気がした。

なんか色々とありがとな、と言うと、俺は俺のためにしか動いていないぜ、と笑われてしまう。

どこまでいっても良い奴だった。

僕は河井と岩屋さんがどうやって仲直りしたのか気になって聞いてみたが、河井は最後まで教えてくれなかった。


休日には時々片山が、みんなで遊ばないかと誘ってくれた。

クリスマスや大晦日、雪合戦にバレンタインと、学生としての日々を謳歌した。

仮の一年を僕は思いきり楽しんだ。

二年生の終業式が終わるとみんなで桜を見に出掛けた。


僕は河井以外の人には親の都合で転校することになったと伝えた。

三年生になった彼女たちは恐らく今頃、最後の夏の大会に向けて二人で頑張っているのだろう。

僕は遠く離れた場所からではあるが、心の中で彼らのエールを送り続ける。



「お疲れさまです」 


久しぶりに宮内庁舎に戻ってきた僕にヤマモトが言う。


本当に高校生活は一年間でよかったのですか。まだ延長してもいいのですよ。としつこいくらいさっきから僕に話しかけてくる。


「それより、ヤマモトさ。朝霧高校で“歴史渡り”を知っているのが樅山先生だって元から知っていたんじゃないのか?」 


僕はずっと疑い思っていたことを聞いてみる。


「はい、もちろん知ってしましたよ」 


「じゃあなんで?」


「なんで古久根君を行かせたのかというと……。君がここで引きこもって退屈そうにしていたからですね。何かいい刺激を受けてきてもらえればな、と」 


「…………。本当は?」


「…………。阿久津君に心を開いてもらって、“歴史書”の空白を埋めるためです。実際に彼も空白の時を生きているのですから、当時の出来事くらい嫌でも耳に入るでしょうし。何より彼も歴史好きなのです。きっと何かのきっかけさえあれば、阿久津が来てくれるだろうって。高校生に戻って、悩んだり藻掻いたりする君を見て、彼が心を開いてくれれば“歴史書”の空白を教えてくれると思ってました。どうやら上手くいったみたいでよかったです」 


そう言って“歴史渡りの管理人”としての屈託のない笑顔を見せた。


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