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32 おっさん、暴走

 大きい……俺の頭に当たった柔らかい感触はこれか。

 ぶつかった反動でタオルのバランスが崩れたせいか、胸の上半分が今にもタオルから飛び出そう。

 これを前にして我慢しろと無理だろ。


「綾華!」

 思わず綾華を抱きしめる。


 柔らかい。


 女の子の身体ってこんなに柔らかいのか。


 これで我慢しろと無理だろ。


 そもそも、男と一緒の風呂に入るってことを何を意味するか分かっているはずだ。

 相手が十六歳だろうが関係ない。


 そうさ、さんざん周りも煽って来たじゃないか。

 

 俺を好いてくれてるなら、この場で押し倒したとしても受け入れてくれるはずだ。

 それが証拠に綾華も全く抵抗していないじゃないか。


 そうだ、いいんだ、綾華ならいいんだ。


 背中のバスタオルを一気にずらすと華奢な白い背中が視界に飛び込んできた。

 そのまま、背中に手を当てると吸い付くような滑らかさと細さに綾華の髪の匂いに自然と息が荒くなる。

 綾華の首筋に顔を埋め、力任せに抱きしめて柔らかさを堪能。


 俺の富士山はいわずもがな身体中が熱くなるのを感じる。


 見たい!豊かな双丘。

 バスタオルを緩めた今なら簡単に見れるはず!


 抱きしめてた腕を解き肩を掴み綾華を引き離す。


 期待に胸を高鳴らせた柔らかな身体を正面から見据える。


 見えたのは豊かな乳白色の双丘……

 ではなく両手でバスタオルを掴み頑なに胸を隠し怯えた目をする綾華だった。


「あ、綾華?」

「……」

「ど、どうした綾華?」

「いつもの……英二様じゃありません……」


「綾華?」


 怯えた目から涙が滝の様に流れ落ち、綾華が座ったまま後ずさる。

 

 いや……えっと……なんで?


 俺の事を好きなんじゃないの?


 好きなら何をされても怖がることも無いだろう。


 ……あぁ、そうか。そうだな、何を勘違いしてたんだ俺は。


 十七歳の女子高生が四十歳のおっさんに本気になるわけが無いだろ。

 そうさ、さんざん経験してきたのに綾華にチヤホヤされてて忘れてたよ。

 少しばかり痩せてデブを解消したとはいえ、痩せてた学生時代も全敗だった。


 あぁ、そうさ、俺なんかがモテるわけない。


 ましてや何を勘違いして財閥のお嬢様が本気で俺に惚れているなんて勘違いしてんだ。


「ふぅぅぅぅぅぅぅ、すまん綾華」


 俺はおもむろにヒノキ風呂の縁に力任せにヘッドバットを浴びせ、冷水シャワーを浴びまくった。

 頭に響く鈍痛は興奮した馬鹿な頭をマトモに戻し、冷水が身体を冷やしてくれた。


「え、英二様?」


 突然の俺の奇行に綾華は怯えよりも戸惑いの瞳と困惑の表情を浮かべる。

 そそくさとズレたバスタオルを巻きなおし駆け寄ってくる。


「いや、何でもない、問題ない、気にしないでくれ」

「そんな頭から血が……」

「いいから、気にするなって言ってるだろ!!!」


 嫌になる、変に勘違いして舞い上がった自分に。

 勘違いの末に馬鹿な八つ当たりする自分に。


「悪い、先に出る。洗ってくれてありがとうな」


 戸惑う綾華を尻目に俺は浴室を出た。

 ハァ、何をやってるんだ俺は……。

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