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ショート・クリスマスイブ

作者: 大虎

こんにちは。大虎と申します。

今日はクリスマスイブということで初めて短編小説を書いてみました。

至らない点もあるかと思いますが最後まで読んで貰えると嬉しいです。

夢の世界へと行っていた〝私〟を目覚めさせたのはジリリリリッッという煩い音でした。

アラームのやかましい音で起きた私は時計を手探りで探し、音を止める。

窓を見ると外は朝を迎え、淡々と雪が降っていた。

「う〜ん・・・」

寒いと思いながらもベットから体を起こし背伸びをした。

時計を見ると12月24日 7時43分と表示されている。

そうか、今日はクリスマスイブか。

多くの人々が幸せな気分になる日とも言えるだろう。

サンタさんを待ちわびるている子供たちも居れば、愛を育んでいるカップルたちも多くいることだろう。

もっとも、私にはイブを一緒に過ごす彼氏など居ないのだが。

私の友達たちもきっと彼氏とよろしくやるのだろう。

少しだけどんよりとした私だがすぐに気持ちを切り替える。

夜は家族と一緒に過ごす予定だから別にいいのだ。

だが、夜までが暇だ。どうしたものか。

高校3年生にもなるとクリスマス関係なしに勉強している人もいるだろうが、私はすでに受験が終わっているので気が楽だ。

私は欠伸をした。

「とりあえず・・・どこかに出かけよう」

せっかくのクリスマスイブなので外に出かけようと決意する。

行先は後々決めるとしてまずは朝ごはんを食べることにしよう。

私は目をこすりながら朝食が待っているであろうリビングへと向かった。







9時31分。

待ち合わせの広場に着いた僕は深く深呼吸をした。

周りには親子やカップルが歩いている。

クリスマス仕様のイルミネーションが眩しく感じた。

本当は10時に待ち合わせの予定なのだが、つい早く着きすぎてしまった。

今日は待ちに待ったデートの日なのだ。

「・・・・・・」

普段は付けないワックスで固めた髪を触る。

本当は付けるつもりはなかったのだが、〝親友のY〟に『デートくらい髪セットしろ』と言われて慣れない手つきでセットした。

しかし、再び親友Yに『どうやったらそんな戦闘民族みたいな髪型になるんだよ。ちょっとそこに座れ』と言われ、髪をセットされた。

結果的に僕がセットした時よりもいい感じに仕上がったので文句はない。

今度は自分の着ている服に目を向ける。

恥ずかしい話、僕はオシャレセンスが皆無なので服のコーデに詳しい〝親友のN〟と一緒に服を買いに行った。

当初着る予定だった服を親友Nに見せると『彼女とのクリスマスデートにパーカーとヘッドホンで行く阿呆がどこにおるんじゃボケェ!!!俺と一緒に服買いに行くぞ!』と言われました。

気に入ってるんだけどな、パーカーとヘッドホン。

「ふう・・・」

もう一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

今日僕は彼女を楽しませることが出来るだろうか。

普段は彼女にリードされっぱなしなので今日こそは自分がリードしたいという男の意地があるのだが、空回りしないか不安でしかない。

いいや、何を弱気になっているんだ僕は。

いつもは草食系男子を露呈してしまっているが、今日ぐらいは積極的に彼女をエスコートしなければ!

男らしい所もあるよってことを見て欲しいし。うん。

「お待たせ、待った?」

不意に後ろから声をかけられ、振り向くと目の前に彼女がいた。

「うひょおおっ!」

不意打ちすぎて思わず間抜けな声が出てしまう。

「ふふふ、〝諒人(あきと)くん〟びっくりしすぎだよ。おはよう」

「う、うん。おはよう。〝志乃(しの)〟」

そう言って僕は待ち人である志乃を見た。

「それにしても結構早いね。まだ待ち合わせの30分も前なのに」

「ま、まあね。楽しみだったからつい早く着いちゃったんだ」

「そっか、私と一緒だね」

そう言って志乃は僕の手を握り、体を密着させてきた。

ポニーテールが尻尾のように揺れる。

それと同時に志乃から程よく鼻腔をくすぐられる香りがした。

「じゃあ、行こっか」

志乃が笑顔で言った。

その笑顔だけでご飯が3杯は食べられそうです。

「う、うん」

僕も志乃の気持ちに応えるように手を握った。








11時30分。

世間はクリスマスイブで盛り上がっているが、そんな俺はゲームで盛り上がっていた。

暖かい自分の部屋に籠り、スナック菓子をつまみながらするゲームはまさに至高のひとときである。

我ながら中学3年生とは思えない生活をしている。

ここまで来たらもはやニートだな。なはは。

え?受験?大丈夫大丈夫。

スポーツ推薦だからな(きりっ)。

俺がやっているゲームは最近新作が出た格闘ゲームだ。

ネット対戦も出来るので飽きることはない。

部屋にはゲームの音とコントローラーのカチャカチャという音が響いている。

「えい、ほい、たぁ!せいっ!!」

変な声を出しながらも今対戦中の敵キャラを画面外へとぶっ飛ばした。

YOU WIN という文字が表示させる。

「よっしゃー!30連勝!」

俺は1人で喜びの舞いを踊る。

「へっ、何がクリスマスだ!品のないリア充共がイチャイチャする日とかに名前変えろボケェ!!!」

はっ、いかんいかん。つい感情的になってしまった。

俺の親友2人も今日は彼女とデートをしているのだ。

親友としてエールを送っておこう。うん。

非リア万歳!

親友たちの恋に栄光あれ!

その他のリア充は滅びやがれ!











12時30分。

特になにかする予定もなく、家を出た私は広場にいた。

朝降っていた雪はすでに止んでいた。

ここで私は人間観察をすることにした。

これは小説家志望である私の最近の日課、というよりは癖になりつつある。

周囲の何気ないことにフォーカスを向けることで普段は見えていないものが見えたりする。

それが小説を書く時のいいネタになる。

私は近くにあったベンチに座った。

目を瞑り、耳を傾ける。

寒いとかそんな感情は一旦シャットダウンします。

人を観察する前にまずは周囲の音に集中する。

広場にはたくさんの人がいるので色々な声が聞こえた。

そのほとんどが楽しさに満ちていた。

「お母さん、早くサンタさんに会いたい!」


「プレゼントは何にしよう・・・迷うなあ〜」


「頭に雪積もってるぞ」


「楽しいね!クリスマス!」


「何がクリスマスじゃあ!死ね!!」


とまあこんな感じで。最後のは聞かなかったことにしよう。うん、それがいい。

「おい!ちょっと待てって!!」

一際大きい声が聞こえ、私は目を開けた。

声が聞こえた方を見ると眼鏡をかけた高校生。いや、中学生くらいの少年が小走りで走っていた。

その先にはずかずかと早歩きで歩く同年代くらいの少女。

推測ですが2人はカップルでしょう。

私はその2人の様子を静かに観察した。

「待てって!」

少年が彼女の手を握った。

「なんでそんなに怒ってるんだよ〝ひなた〟。俺なにか悪いことしたか?」

少年が訊ねました。

どうやら彼は彼女を怒らせるようなことをしてしまったようです。

本人は身に覚えがないようですが。

彼女が振り向き、彼の手を強く振りほどきました。

顔は真っ赤で涙目になっています。

そして彼女は言いました。

「あんたは・・・・・・デリカシーってもんがないのよぉぉぉぉ!!!!」

彼女がものすごく大きな声で叫びました。

あまりに大きな声だったので広場にいた人全員が何事かと2人の方を見ました。

彼女は再びずかずかと歩き出した。スピードはさっきよりも早めで。

少年はポカーンと口を開けて呆然としていました。

数秒後、我に返ったのか眼鏡のブリッジを上げて言いました。

「いやどうゆうこと?」

その声はあまりに小さかったので、多分聞き取れたのは近くにいた私だけでしょう。

男の子は彼女を追いかけるために走り出しました。

「・・・・・・頑張れ彼氏くん」

見ず知らずのカップルの背中を見送り、私は再び目を閉じた。











13時00分。

「うっ、また失敗か・・・」

私はオーブンの中に入っている丸焦げになったチキンを見て絶望した。

私は今日のディナーの準備をしていた。

今日は家でクリスマスパーティーをする予定なのだ。

こんな早くに準備を始めているのには理由があった。

私は自分でもびっくりするくらい料理が出来ない。

訳あって一緒に住んでいる〝従弟(いとこ)〟には

奈緒(なお)は洗濯とか金銭管理とかしてくれればいいから!料理はしなくていいから、ホントに!お願い!!』

といつも言われる。

しかし一応私も女の子なのだから料理くらいは出来るようになりたい。

もう筋肉空手バカなんて言わせない!

その強い思いから今こうして料理をしている。

早く準備しているのは失敗する前提だからだ。

時間も材料もたくさんあるのでまだ大丈夫だろう。

私は新しく取り出した鶏肉と再び格闘した。











14時20分。

彼女(志乃)とのデートを満喫中の僕は映画館にいた。

ドリンクとポップコーンを両手に持ち、壁にもたれかかる。

肝心の志乃はお花を摘みに行っている。

今から見る映画は最近ニュースとかにも取り上げれるほどの人気映画『俺の名は。』である。

恋愛?映画で結構泣けるらしい。

周りの友達もかなり絶賛してる人が多かったので期待できそうだ。

普段映画なんてあまり見ないし。

手に持っているポップコーンの匂いが鼻腔をくすぐる。

数分経って志乃が戻ってきた。

「お待たせ。行こ!」

戻ってきた志乃に僕はドリンクを手渡した。

「楽しみだね!」

「うん!」

僕と志乃は3番スクリーンへと向かった。













15時00分。

先程と姿勢を全く変えることなく俺はゲームに勤しんでいた。

「よっしゃー!これで100連勝!」

11時頃からひたすらやっていたのでついに連勝記録が100を突破した。

「へへへ、やっぱ俺って天才かも」

ドカァンッッ──

「!!?」

自分の才能に酔いしれていた俺はいきなりの爆発音に驚き飛んだ。

「な、なんだ!?」

部屋の窓を開けて音がした方を見ると隣の家から煙が出ていた。

「これはまずい」

俺はテレビの電源を消し、置いていた携帯をポケットに入れ、玄関へと向かった。

大急ぎで靴を履き、隣の家の前に向かう。

この家は俺の親友の家であり、今はそいつの従姉しかいないはずなのだが。

そう思っていると突然扉が開き、人が出てきた。

口に手を当てて咳をしている。

それと同時に煙も少しばかり出てくる。

「な、何があったんだよ・・・・・・〝奈緒(なお)〟」

俺は隣人である奈緒に言った。

「な、〝成哉(なるや)〟ちょっと、、料理してたら・・・チキンが爆発して・・・・・・」

奈緒が咳をしつつ、苦い顔をして言った。

いや何してんだよ。

俺は心の中で突っ込んだ。

幸いにも怪我はしていないようだ。

「どうしよう・・・・・・」

奈緒が涙目になりながらこちらを見てきた。

普段は男子も怖がるくらい男勝りな彼女がこんな表情になるのは珍しい。

「しょうがないな。一緒に作るか」

俺は奈緒にそう提案した。

「いいの?」

「ああ、家に居てもゲームしかしないしな」

あ・・・・・・そういえば俺、料理なんて1度もしたことないけど・・・・・・ま、なんとかなるよな!

俺は笑って奈緒と一緒に家へと入った。












17時00分。

広場でしばらく人間観察をしていた私はその後本屋だったり雑貨屋だったりと適当にぶらぶらしていた。

その帰り道。

先程の広場を通りかかった私は不意に足を止めた。

私は1人の人物に目を釘付けにされた。

広場のベンチに座っているカップル。

年齢はさっきのカップルたちと同い年ぐらいだろうか。

その彼氏の方に目がいった。

優しい笑顔で彼女であろうポニーテールの女の子に微笑んでいる。

「・・・・・・似てる」

私は思わずそう呟いた。

携帯を取り出し、アルバムの中の1枚の写真を見る。

写っているのは私と1人の少年。

2人とも病衣を身につけていて、笑顔で写真に写っている。

もう1年も前の写真だ。

写っている少年は私の初恋の相手だった。

1年前、目の病気で入院した時に知り合った。

写真の彼と今目の前にいる男の子を見比べる。

似ている。ものすごく似ている。

顔の輪郭や形なんてそのまんまだ。

唯一違うのは〝髪の色〟くらいだろう。

あの時のことが自発的に思い浮かぶ。

つまらない入院生活も彼のおかげで充実したものとなった。

〝灰色の世界に色をくれた〟のも彼のおかげだ。

だから、彼が〝遠くへ行ってしまった〟時はとても悲しかった。

そんなことを思っていると不意にその子が立ち上がる。

見るとさっきの喧嘩していたカップルが2人に話しかけていた。

どうやらお友達だったようだ。

一応手を繋いでいるが少女の方はまだ不貞腐れているご様子。

彼らの話し声が微かにだがここまで聞こえた。

「お待たせ、待ったか?」

眼鏡の少年が言った。

「ううん、今来たところだよ。ね、諒人くん」

「うん、それじゃあ行こっか。成哉と奈緒が待ってるよ」

「そうだな」

彼らは歩き出し、私のいる方へと向かってきた。

我に返り、私も再び歩き出す。

すれ違う直前、チラッと少年を見た。

近くで見るとより一層似ていると思った。

世界には顔が同じ人間が3人いると聞いたことがあるが、よりによってこんな日に見ることになるとは。

喋ったこともない赤の他人だが、諒人と呼ばれていた少年には彼の分まで幸せに生きて欲しいと私は自分勝手に願った。

「・・・・・・帰ろう」

冬ということもあり、空は暗くなり始めている。

私は家族が待つ我が家へと向かうために、薄く積もっている雪を踏みながら歩いた。











17時15分。

志乃とのデートも終わり、広場で親友である〝勇輝(ゆうき)〟とその彼女、ひなたと合流した。

夜はみんなで僕の家でクリスマスパーティーをする予定だった。

左から僕、志乃、ひなた、勇輝の順で横一列に並び、家を目指す。

しかし、僕たちの空気はとても重かった。

その理由はひなたから不機嫌オーラがメラメラと湧き出ているからだ。正直怖い。

何があったのかは何となく想像がつく。

「あのさ、ひなた・・・何かあったの?」

志乃が恐る恐るひなたに聞いた。

ひなたは勇輝を横目で睨みながら言った。

「聞いてよ志乃!勇輝ったら酷いのよ!私が食べようとした唐揚げに許可なくレモンをかけたのよ!デリカシーなさすぎ!」

「レ、レモン・・・?」

志乃が戸惑いながら言った。

「唐揚げにレモンは必須だろ」

勇輝が反論した。

「私はかけない方が好きなの!」

「いいじゃないか、レモンくらい」

「全部にかけることないじゃない!半分くらいとかにしときなさいよ!」

「「・・・・・・」」

喧嘩している2人を見て僕と志乃はただただ苦笑いするしかなった。

なんとも低レベルな喧嘩をしているなと素直に思った。

この前は納豆に生卵をかけるかは正しいか否かで喧嘩してたっけ。

まあほっといたらそのうち仲直りするのでスルーしよう。

「あ、雪だ」

志乃が空を見上げて言った。

空を見上げるといつの間にか雪が降り始めていた。

「・・・・・・」

喧嘩をしていた2人も降り注ぐ雪に魅入っていた。











17時30分。

他愛もない雑談をしながら歩いていると、とうとう目的地のわが家に着いた。

僕は鍵を取り出して扉を開ける。

「ただいま──ん?」

玄関に入ると僕はある違和感に気づく。

「お邪魔しま──なんだこの臭い」

勇輝たちも気づいたようだ。

なにやら焦げ臭い匂いがする。

靴を脱ぎそのままリビングへと向かう。

「・・・・・・え」

そこで僕たちが見たのはまさに地獄絵図だった。

床は水で濡れており、何やら黒い塊のがあちこちに落ちていた。

何これダークマター?

キッチンには使ったと予測される包丁やフライパンが山積みになっており、さらに電子レンジが見るも無惨な姿になっていた。

「よう・・・・・・」 「おかえり・・・・・・」

キッチンから成哉と奈緒が顔を出した。

かなりお疲れのご様子。

「な、何があったんだよ」

勇輝がリビングの惨状を見て言った。

「いやはや、奈緒と2人でチキン焼こうとしたらこの有様だ。トホホ・・・・・・」

成哉が苦笑いしながら言った。

世界一料理させてはいけない人物トップ2の2人が料理とは・・・・・・悲劇だ。

この床に落ちてるダークマターが丸焦げになったチキンということか。

しかしなぜこんなに床が濡れてるんだ?

「なんでこんなに床が濡れてるの?」

僕は奈緒に聞いた。

「チキンが爆発した時に出た煙に火災報知器が反応したのよ。おかげで床中水浸し」

いやそれ以前にどうやったらチキンが爆発するのか是非とも聞いてみたいところだ。

まあ、一生懸命頑張ったことは評価したい。

「仕方ないね。スーパーかコンビニで何か買ってこよう」

僕はそう提案した。

「そうだな、今から買ってくるか」

勇輝が言った。

「そうね、買い物は私たちが行くから部屋の片付けお願いできる?」

ひなたがそう言い、勇輝が頷く。

「「申し訳ない」」

成哉と奈緒が僕たちに謝った。

「そうだな、買い物は女性陣に任せて、俺たちは片付けだな」

「分かったわ」

女性陣はいそいそと買い物へと出かけ、僕と勇輝と成哉は急いで片付けを始めた。

その後、チキンやお菓子なんかを買って家へ戻り、みんなで片付けをして、なんとか綺麗になった。

それが終わると予定通りクリスマスパーティーを開いた。

充実したクリスマスパーティーだったことは言うまでもない。

持参していたのか、特にサンタのコスプレをしていた志乃は可愛かったです。昇天ものです。











9時30分。

「今日は楽しかったね。諒人くん」

「うん、そうだね」

クリスマスパーティーも終わり、僕は志乃を家まで送ることになった。

外はまだ雪が降っている。

「志乃がくれた手袋、とても暖かいよ」

僕は両手につけている青い手袋を見せる。

「喜んでくれた良かった。私も諒人くんから貰ったマフラー、とても気に入ってるわ」

志乃は首に巻いた赤いマフラーを触って微笑んで言った。

デート中、僕たちは互いにクリスマスプレゼントを渡していた。

僕はマフラーを、志乃は手袋をあげた。

「今日は楽しかった。ありがとう諒人くん」

「いや、それは僕の方こそ」

志乃が楽しんでくれたのなら素直に嬉しいが、結局リードするという当初の目標は果たせなかった。それだけが心残りだ。

はあ、少しは男らしい所見せたかったんだけどな・・・・・まだ早いということだろうか。

「諒人くん、どうしたの?」

そんなことを考えてると志乃がきょとんとした様子でこちらを見ていた。

「ううん、ちょっと考え事をしてただけだよ」

「ふーん、何考えてたの?教えてよ」

志乃がぐいっと体を寄せてきた。

うっ、めちゃくちゃ可愛い。天使か。

「いや、あの。今回のデートくらい僕が男らしくリードしたかったなって思ってさ・・・」

僕は思っていたことを言った。

「リード?」

「うん。いつもは志乃にばっかり引っ張って貰って男として情けないというか・・・」

「・・・・・・もしかして、迷惑だった?」

志乃が悲しそうな目で言った。

これはまずい。

「いやいや、そうじゃないんだ!なんて言うか、その・・・・・・」

こういう時に限ってテンパってしまうなんて僕はなんて情けないんだろう。

「ふふふ、冗談よ。少しからかっただけよ」

志乃が舌を出して言った。

「むむ・・・」

「それに──」

志乃が顔を近づけてきた。そして僕の耳元で囁く。

「そういう所も、好き」

「──!!」

僕は思わず顔が赤くなった。

「諒人くん。耳が赤いよ?照れた?」

「ち、違うよ。こ、これはあれだよ。寒いから、そう寒いからだよ!」

僕は照れ隠しでそう言った。

そんな僕を見て志乃は笑った。

そんなこんなでとうとう志乃の家の前まで着いた。

もうクリスマスイブも終わりかと少し悲しく思う自分がいる。

「それじゃあ、またね諒人くん」

志乃が僕から離れ、手を振る。

「うん、またね」

僕は手を振り返した。

志乃が玄関の扉の方へと歩いていった。

しかし、直前で止まりこちらを振り返った。

なぜか笑顔で。

「?」

僕が疑問に思っていると志乃が再び僕の方へと早足で戻ってきた。

「どうしたの?」

「うん、ちょっと忘れ物」

志乃が僕の真横に来た。

「忘れ物って──」

志乃は自分の顔を僕の方へと近づけ、

その瞬間、僕の頬に柔らかい感触が走る。

何をされたかは言うまでもない。

「メリークリスマス、諒人くん」

志乃は頬を赤らめて言った。

「メ、メリークリスマス・・・・・・志乃」

さっきよりも体が熱い。鏡を見たらきっと僕の顔は茹でダコのように赤くなっているに違いない。

志乃は満足したのか早足で今度こそ玄関の扉を開けて家へと入っていった。

僕は数秒間我を忘れてその場に突っ立っていた。

「全く・・・志乃にはリードされっぱなしだなあ」

頬を軽く撫でる。

いつの間にか雪は止んでいた。













































最後まで読んでいただきありがとうございます。

コメントや評価をして貰えると作者が泣いて喜びます。

良ければ自分の別作品も読んでみてください。

それでは、よいクリスマスを┏○ペコ

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