第2話 公約と討論
委員長選に立候補した私は荒尾先生から貰った立候補用紙を書いている途中、1つの項目を見て筆が止まった。選挙公約だ。
たしかに今後新聞委員会をどうしていくかのビジョンがなければ委員長になる意味がない。とりあえず委員会をどの様にしていこうか。それを決めて公約を書かなければならない。
幸いにも立候補用紙は明後日、金曜日の提出だ。
家に帰って私は他の学校にある新聞委員会はどの様な活動をしているのか調べた。
いろんな活動があったが、某学校は新聞委員会を生徒会の独立機関として設置し第三の権力にしているという。
なるほど、これは面白い。是非この方式を採用しようと思った私は公約の下記の通りに決めた。
①新聞の発行回数増加
→前話で述べた通り非常に発行数が少ない。
②新聞記事編集体制の改定
→発行数が少ない原因は大体ここに尽きる。編集班の再編を行えば変わってくるのではないか。
③生徒会新聞の吸収
→新聞委員会が確かな権力を有する為には他の競合新聞を吸収する必要がある。生徒会新聞を吸収すれば報道の権力は集中するはずだ。
これらを私は「三改路線」と定めて公約にした。
公約を決めた私は、意気揚々とその公約を書いた紙を久門学園の選挙管理委員会に提出した。
後日、私は弁論部部長として現生徒会執行部との公開討論会に招待された。
公開討論会というのについて説明すると、現生徒会執行部・生徒会執行部立候補者・その他一般代表者で行われる公約等に関する討論会である。
例年この討論会は一般代表者が質問し、これについて現生徒会執行部や生徒会執行部立候補者が解答する形式なのだが、私はこれが注目されているということを踏まえて、少々型破りな方法で討論会に臨むことにした。
司会「では公開討論会を始めます。一般代表者の方から現生徒会執行部および立候補者に対し質問は御座いますか?」
私「生徒会新聞についてお聞かせ下さい。現生徒会執行部は生徒会新聞を年に5回程度しか発行しておりません。これに対し立候補者の皆様方はどの様な対策等を考えておりますか?」
書記立候補者(以下書記と記す)「はい。私としましては、書記の仕事であるこの生徒会新聞の発行は重要と考えております。しかし現実問題として発行回数の向上は難しいと考えられます」
私「なるほど。ではですね、ここから先は『新聞委員長立候補者』として話させていただきますが、私が当選した暁には生徒会新聞と新聞委員会の新聞を合併するのはどうでしょうか?」
観覧者からざわめきが起こった。それもそのはず、今までこの様に公開討論会の場で公約について提案をして呑ませようとする等前代未聞であったからだ。
多くの生徒はこの事実上の生徒会新聞消滅という提案が受け入れられるわけないだろうと思っていたが、
書記「それはいい考えですね。是非そうしてもらいたいところです」
私「これはこれは、是非ともよろしくお願いします」
実はこれにはカラクリがあり、この書記は弁論部の部員で私と仲が良くて、今回書記の仕事を減らしたいという話を受けこの流れを打ち合わせたのだ。
かくして、多くの生徒が見守る中、見事新聞委員会は生徒会新聞を吸収する約束を仮契約させることに成功させたのである。
本来の討論会はこれ以外にもかなり盛り上がる内容があったんですが、これはまた今後…。