第1話 急な話
まだ冬真っ盛りな2月の中旬。暖房のよく効いた教室でこの英語の授業が終わるまで心地よい眠りについていた私は授業後、英語科担任の荒尾先生に呼ばれた。
「なあ八代、お前新聞委員会の委員長やってみる気はないか?」
てっきり最近の授業態度について何か苦言でも言われるのかと心配になったが、それは杞憂だった。(しかし成績からはしっかりと引かれていた)
「またこれは随分と急な話ですね…」
「いやさぁ、今委員会で次委員長やってくれそうなのがいなくてさ。まあ気があれば後で職員室でも来てくれよ」
さて、どうしたものか…。
私の名前は八代敦也。今は討論部の部長をやっている。
討論部の部長とは言え、その実態は何ら部長らしいことはせずに(部員数名、つい昨年出来た部活なので同級生しかいない)主に戸締りとかの雑用がメインとなっている。
こんな私が何故委員長に推薦されたのか。考えてみればこの部が原因であると言える。
討論部は社会時事を論題にする為、日頃から部員にはこれらに興味を持ってもらおうと、大手新聞の記事要約や論評、あとは論題に対する感想文を書いてそれを新聞にして発行していた。
新聞自体は(主に社会科の先生から)評判が良く、私自身この新聞は継続していたいと思っていたところだ。おおよそ荒尾先生はこの新聞を見て後任委員長に最適だと判断したのだろう。
昼休み、荒尾先生がいる職員室に向かった。先生は普段食堂で食事をするが職員室には大体いた。
「おお、八代。やってみるかどうか決めた?」
「そうですね、主な活動内容を知らないのでそれを教えて貰いに来ました」
「主な活動ったって、そりゃあ新聞を作るに決まってるじゃないか」
「まあそうですけどね、しかし…」
実はこの新聞委員会、そんなに新聞を発行していない。
というのもこの委員会の実態は、年度初めにクラス内で決まる委員会・係決め時に何も活動したくない人の避難所状態と化しているので殆ど活動していない。
(これは私の勝手な推測だが)荒尾先生自身もあまり仕事が増えて欲しくないタイプの人なのでこの委員会の顧問をやっている節はありそうだ。
活動が少ないことを聞くとやはり
「まあ新聞委員会だからな、そんなもんだ」
と何ともアバウトな返事が返って来た。
「まあその点は問題ないです…。しかし外部から委員長を入れるのは規則的に大丈夫なんですか?」
そう、私は新聞委員会に入ったことがない。
私のいる久門学園は中高一貫で、大体委員長になる人は高校2年程度まで一貫して委員会に入っている人が多い。その中で一回も委員を経験していない人が急に委員長になるなんてことは前代未聞で、この移入委員長は生徒会的にどうなのか、という懸念があった。
「まあ大丈夫だろ。しょうがない判断だ」
「先生が問題ないと仰るなら、委員長に立候補してみようと思います」
「おー助かる。これで俺も楽になったってことだ。委員長選立候補の紙は確か明後日提出だから、それまでに現任委員長に会っといてくれ」
「いや、現任委員長誰だったか知りませんよ」
「あ、そっかお前委員じゃないもんな。なら仕方ないわ。うーん…俺から委員長にアポ取っとくよ」
若干面倒臭そうなトーンだったが、何とか現任委員長とアポを取っといてくれるらしい。
「まあ、そんなこんなで今後よろしくな」
「ええ、こちらこそ」
かくして、私が委員長選に出馬し(といっても新聞委員会の委員長選は基本当選のようなものであるが)委員長として活動することが決まった。
初めて小説というものを書いてみました。
まだ至らない点はあるかと思いますが、今後とも宜しくお願いします。
投稿ペースは多分不定期です。意欲のあるときはガンガン書くと思いますが…。
因みに、一部脚色とあらすじにありますが主人公の八代と荒尾先生の性格はまんまコレです。荒尾先生には今もお世話になっております…。