ゆきみち~星花プロジェクト用ショートデモ~
前の日から降り積もった雪を踏みしめて、学園へと歩く。ぬかるみ始めた道は、下ろして間もないスニーカーを濡らして汚してく。
「…………雪って不思議だよな。」
不意に、隣にいる亜純が顔を曇らせながら言う。
「なんで?」
聞き返すと、亜純は私のスニーカーを目線で指して、
「…………だってさ、降る時はこんなに綺麗なのに。」
目線を空に向ける。そしてすぐに目を落とすと、
「落ちたらこんなに汚い。…………全く、どうしてこうなるのかな。」
それは、さっきまで慣れない靴の感触にうへぇ、とか言ってた亜純じゃなくて。時々私だけに見せる、もう1個の「亜純」。
「…………そのスニーカー、元は白だったよね。それが今は濡れ鼠色。」
「わた………………いや。『ボクたち』みたいだね。」
『本音』で話すと、亜純は首を傾げる。
「どゆこと?」
「うん………………ボクもさ、元はこうして真っ白だったのに。………………お互いのことを知っちゃってからは、こうやって染まってって…………今じゃ真っ黒。」
つま先をひょいと上げてみせると、亜純はそっぽを向く。
「………………後悔、してる?」
「全然。…………むしろ、ボクは…………墨森望乃夏は、君のことを知れてよかったと思ってるよ。」
雪は降り止むことを知らないのか、目の前はチラチラと白く霞む。だけど亜純のことはいつだって霞まないで。私の中にいる。
「…………そっか。」
短い「そっか」だけど、中身はいっぱい。
「…………行こ、亜純。」
そっと差し出した手は、すぐに亜純と繋がる。
「うん、行こ。」
溶け始めた雪は相変わらずまとわりつくけど、それでも足取りは軽いまま。だってそれは…………ね?
相手役は他作品に使うための娘のストックから拝借しました。
経堂 亜純ちゃんという14歳の娘です。