食料確保と不穏な魔物
学校が始まったので創作意欲が湧いてきました。
これから少しづつ上げていきます
道は2つ。前の道に戻るのか先に進むか。メリアの状態を考えると早く食料を調達したいところだ。前の道は一本道で近くに魔物が居る可能性は低い。なら行く道は一つだ。先に進むしかない。
リスクは高い。けどリターンも高いはずだ。この先の道がどうなっているかもわからないし、さらに強力な魔物が出てくる可能性もある。けど今はメリアからもらった力がある。具体的な力は分からないけどさっきから体が軽い。正直ウルフ相手に後れを取る気がしない。
僕は奥へ続く道に歩を進めた。少し冒険しているようで場違いだが高揚した。
奥へと進む道はこれまでの道とは全く違った。まず道が一本道ではなくなった。左右に分かれる道や階段、行き止まりなど簡単な道ではなくなった。そう。それはまるで迷路のようだった。
分かれている道はすべて右に曲がった。メリアのところに帰らないといけないので道順を覚えるために。これなら帰りもすべて右に曲がれば無事にメリアが休んでいる広場に戻ることができる。
しかし、記憶を失う前に僕はこんな危険な場所になんのために来ていたのだろう。まさかメリアに会うためってことは無いよな。
自分がなぜこんな場所に来ているのか考えていると4匹のウルフと遭遇した。狼のより一回り大きいウルフと呼ばれる魔物。その鋭利な牙は人間の腕を簡単に噛み千切る力を持っているだろう。そしてウルフの毛皮は固い。普通の剣ではその固い毛皮に遮られてしまうだろう。しかし今の俺の使っている剣は異常に切れ味がある。
「メリアの飯を確保させてもらう!」
黄金の光を失った謎の剣を正面に構える。ウルフは僕のことを発見すると4匹のうち一匹が馬鹿みたいに正面へ突っ込んで切る。他の3匹はこちらを威嚇してこちらの動きを伺っているようだ。今はメリアの身体強化があるのでその動きはスローモーションのようにゆっくり感じる。今までウルフ一匹の相手があれほどしんどかったのにあのお嬢さんはその隙間を簡単に埋める身体強化魔法を僕にかけたと思うと恐ろしいと思う。
足を一歩前に踏み出し、横薙ぎにウルフを迎え撃つ。飛びついてきたウルフは何の抵抗も無く俺の剣に切り裂かれた。この剣の切れ味は素晴らしいのだ。素人の俺でも簡単に切れる。しかし初期の光を放ってないことから本当の力は取り戻していないように思える。
さあ、一匹狩ったからもう他の3匹には用は無いのだけれど、以前威嚇しているだけ。早くこの場を離れてメリアに食事を提供したい。今度はこっちから仕掛けてみるか。
禍々しい短剣も取り出して、右に長剣、左に短剣を持ち、構える。そしてウルフの群れに突撃。メリアの身体強化と相まってウルフが知覚する前に一匹を切り伏せる。飛びついてきたところに短剣を口に押し込み引き裂く。そして最後の一匹は逃げ出してしまった。
メリアの力に頼った攻撃だが、今の俺ではこれが精一杯だ。暇な時間に素振りでもしよう。ここから出るには僕はもっと強くならなきゃいけない。
収穫は3体のウルフ。食べられるかは謎だがしっかり毛皮をしっかり剥ぎ、血抜きをして焼けば大丈夫だろう。俺は3匹のウルフを回収する。すでに体はウルフの返り血で真っ赤。ウルフの死体を持つのにも抵抗はない。
そうして踵を返したところで…
「キャンっ」
そういう鳴き声と共に肉が潰される音、そしてこの迷路全体が揺れ動くかのような衝撃が体に伝わる。この時直感した。その音は逃げていった一匹のウルフが何かに叩き潰された音だと。
(今すぐ逃げないと殺される…!)
後ろを振り向かず、メリアの力を全力行使。何かがこちらに向かって走ってくる音が聞こえる。先ほどの戦闘の時以上のスピードで元来た道を右へ右へと戻っていく。あまりの恐ろしさに2匹のウルフを途中で捨ててきた。ウルフを食すかは不明だが少しでも時間稼ぎが出来たらと思う。しかしここで1匹も持ち帰らなければ、今度はメリアの身体強化なしで挑まなければいけなくなる。それはリスクが多すぎる。
メリアが居る広間まで止まることなく全力で走った。逃げた直後に聞こえた足音はもう聞こえない。何とか振り切ったようだ。それにしてもあんな化け物がここを闊歩しているなんてどうすればいいんだ。
とりあえず今は食事だ。俺も空腹で頭が回ってない。回ったところでどうにかなるとは思えないけれどメリアにも相談すればいい案が出てくるかもしれない。彼女も馬鹿じゃない。僕が協力しようといえばすぐに適応できたし頼りにしていいはずだ。
広間につくと、メリアは規則正しい寝息をたてて眠っていた。こんな固い石の上に女の子を寝かせていることに情けなさを感じる。それに気遣いも出来ていなかった。メリアから貰った力に溺れていた。僕が気づいて食料を確保していればこんなことにはならなかったはずだ。後悔ばかりが募る。
今はこのウルフの処理を早くしよう。勿体ないが短剣を使って毛皮をはがし、壁に立てかけるようにして逆さまにして血抜きをした。ここまでかかった時間は10分もかかってない。
メリアのためにと思ったのかそれとも記憶を失う前によくこの作業をしていたのかもしれない。自分でもなんで出来たか謎だった。やり方がどんどん頭に流れこむ感じで悪くない感覚だった。それはまるで無くしたものを見つけたようなそんな感覚。
最後に汚れたからだを水で洗い流した。さすがに血まみれはくさいしそれなら少し寒いが清潔にしておきたかった。
あ…。さすがにこんなびしょ濡れではまずいな。こんな固いところで寝かしたくはないのだけれど。できればいつぞやにしてくれた膝枕を僕もやってあげられればと思った。でもこんなびしょ濡れじゃだめだな。きっと起きてしまう。
仕方がない。今は僕も寝るとしよう。そしてメリアが起きたらウルフ肉を堪能しよう。