連携して倒そう
を覚ますと後頭部から柔らかい感触がした。そして僕の目をまっすぐ見つめてくる赤い瞳。血のように赤い瞳。とても神秘的だと感じる。
「…大丈夫?」
首を傾げながら赤髪少女は僕に問うてきた。そういえば僕は彼女が自分を犠牲にするその考え方が嫌で怒ってしまったんだ。
「大丈夫だよ」
僕は目を逸らしながら起き上がる。どうやら太腿を枕にしてくれていたようだ。あの感触は至福だった。
「…そう。
今度の魔物はどうやって倒すの?」
「え?」
「連携?
1人で倒すのやめる。
協力大事?…」
使い慣れない言葉なのか疑問形が多いが赤髪少女はそう提案してきた。
「どうして急に…。
いや連携だけど、オーソドックスに僕が前でひきつけて、後ろから君が強力な魔法を使って纏めて倒すって方法」
「むー。1人で突撃だめ!」
どうして?と聞くのは野暮だろ。せっかく僕の意見を聞いてくれたんだ。気持ちが変わらないうちに作戦を考えないと。
少女は頬を膨らましながら怒っている。なんだか意識を失う前より感情が豊かになっている気がする。
「んーじゃあどうするか…」
「私考えた。
先見つける。私攻撃。残った魔物から私を守る。私攻撃。」
お?これはいいんじゃないか?
つまり、先に敵を見つけて、赤髪少女の炎魔法で先制攻撃。残った魔物は当然こちらに向かってくる。その間に少女は次弾を装填。僕はそれの邪魔をさせないように少女を魔物から守る。
「うん!いいと思う!」
表情は無表情だが心なしかホッとしているようだ。僕もなんだかホッとする。これ以上彼女が傷つかないで済む。そういって2人は気持ちを切り替えて歩き出した。
しばらく歩いていくと、コボルトを見つけた。犬の顔を持った魔物だ。ウルフとは違いこいつらは武器を所持していた。数は6。さっきよりも多い。
「あー。火魔法の用意」
名前が無いから呼びにくいな。この戦闘が終われば考えるか。
「わかった」
赤髪少女は手を前に突き出し、赤い魔法陣を展開させる。
僕も魔法の発射をしたらコボルトから少女をすぐ守れるように剣を抜く。
「ファイアーブラスト」
その言葉に反応したように魔法陣から巨大な玉が2つ、コボルトに向かって飛んでいく。そして凄まじい音を立てながら2体のコボルトに直撃して消し飛び、爆風でさらに2体が負傷をした。
攻撃されて激昂したコボルトがこちらに走ってくる。僕は少女を守るように前に立ちふさがる。近づいてくるコボルトは負傷していない2体のコボルト、さらにその後ろからは負傷した2体。僕一人で捌けるだろうか。いややらないといけないんだ。僕が彼女を守らないと提案した意味がない。
僕は強く長剣の柄を握りしめる。よく動きを見れば避けられるはずだ。相手は怒って理性が無いに等しい。
「ギャギャ」
予想通りコボルトは大振りに剣を振るってきた。僕はそれをよく見て回避する。そしてカウンターに一撃を入れ1体のコボルトを葬る。2体目のコボルトはさっきのようにはいかずこちらの様子をうかがっている。
後ろから魔法陣が完成された音が耳に入る。間髪いれずに僕に向かって放たれる魔法。
「ファイアーブラスト」
僕は横に転がりながら回避する。
あ、危ない…。
コボルトは何とか剣で魔法をガードしたようだが剣は魔法によって使い物にならなくなってしまったようだ。
「魔法の用意!」
僕は無防備になったコボルトに向けて剣を振りおろした。しかしコボルトは二足歩行を止め、両手両足を地に着けて横跳びで僕の攻撃を避けて、突撃してきた。
素早く短剣を取り出し振り上げると、こちらもすごい切れ味でコボルトの体は簡単に真っ二つになった。
「剣の性能に助けられてばっかだな…」
「あとは任せて」
少女の両手にはファイアーブラストの魔法陣が完成していた。そしてコボルトに向けて解き放つ。しかし一匹には避けられてしまう。しかし僕はファイアーブラストが放たれた瞬間に走り出していてバランスを崩したコボルトに長剣をたたきつけた。
「ふう…。どうだった?
連携しながらの戦闘は?」
「ん。難しい。1人の方が簡単」
「そうだね。でも君は無傷だ。僕もさっきの戦闘よりはダメージをもらってない」
「確かに…。さっきの魔物より今の魔物の方が数も質も上」
少女は難しそうに首を傾げながら考えている。僕は彼女の異常性について考えていた。あんなに魔法を連発させたのにも関わらず全く疲れている様子がない。ファイアーブラスト。結構高位な魔法だと思うんだけどそれを連続で放って大丈夫なんだろうか?でも僕はそんなこと聞かない。彼女が記憶喪失をしているということは僕と同じで思い出そうとすると頭が痛くなってしまうかもしれない。
「もうしばらくこのフォーメンションで練習。
強くなれる」
「それがいいと思う。それでね。不憫に思ったことがあるんだ」
「何?」
「お互い名前が無いだろ?呼び方があるともっと指示もしやすくなると思うんだ。
君も魔法を放つ前に僕の名前を呼んでくれればお互いに準備ができたと意思確認ができる」
「うん。でも私たち記憶ない。
名前わからない」
「だから僕たちはお互いに呼びやすい名前を相手につけるのはどうだい?」
自分で僕の名前を決めるってなんだか決めずらいんだよな。しかもそれを女の子に呼んでもらうって軽い拷問だよ。
「私があなたの名前を?」
「僕は君の名前を」
少女は少し考えた後、僕の髪をみて
「シロ…でいい?」
「…う、うんいいよ
犬の名前っぽいな…。
てか髪色で決めたでしょ。
ま、まあなんだかうれしそうだからいいけど。
「じゃあ俺は…」
ふと、花畑が脳内に浮かぶ。そこは陽だまりのように暖かかくて隣にはまた金髪少女がいた。1つの真っ赤な花を指さすと金髪少女は
『これは「メリア」の花。花言葉は陽だまり。太陽。私この花が大好きなんだ』
『確かにこれは君に似ている気がする・・・』
「シロ?」
ハッとしたら赤髪少女は僕の目をじっと見つめていた。とても心配そうに。
あれは僕の記憶だろうか…。あの女の子は一体だれなんだ…。
「シロ。私の名前決まった?」
ああ!名前を決めているところだった。あの花の名前でいいだろうか…。こっちも髪の色で決められたし…
「メリアっていうのはどうだい?」
「…メリア。いい。かわいい」
「それはよかった。
じゃあ改めてよろしく。メリア」
「うん。よろしく。シロ」
メリアと呼ばれた瞬間彼女の目は見開き、赤い瞳がきれいに輝いているように見えた。
メリアの存在は謎が深まるばかりだが、とりあえずは今はここを脱出できたらいいと思うシロだった。
ていうかやっぱり僕の名前犬っぽいよな~
やっと主人公とヒロインの名前が出てきました。
メリアは天然なとこがあります…