魔物との戦い
しばらく赤髪少女が前を歩いていた。何を話したらいいか分からず僕たちは黙ったまま何もない廊下を歩いていく。しかし突然に赤髪少女が立ち止まる。
赤髪少女の視線には5体のウルフがいた。しかし自分が知っているウルフとは違った。一回りほど大きいのだ。しかもそれが5体…。
「ウルフが5体。どう…」
言い終わる前に赤髪少女は走り出していた。両手からさっきと同じ魔法陣を出現させて。
あっという間にウルフの群れに接近した赤髪少女は魔法を発動させ、火の玉でウルフ2体を焼き尽くす。残り3体は仲間を殺されたことに憤り、一斉に赤髪少女に襲いかかる。
僕は駆け出した。脳裏に映るのは赤髪少女が食い殺されるシーンだけだ。僕は勢いに任せてウルフの1体を長剣で真っ二つにした。思っているよりすごい切れ味に驚いてしまう。
赤髪少女の方を見てみると1体からの攻撃は避けられたようだがもう1体からの攻撃を受け、ウルフは少女の細腕を嚙みちぎろうと無茶苦茶に動いていた。
僕は戦慄した。それは赤髪少女の腕が噛み千切られそうからでもウルフの恐ろしさからではない。赤髪少女は全くの無表情だったからだ。普通の女の子、いや人間だったら痛みに顔を歪めているはずだ。しかし赤髪少女は顔色一つ変えずに
「フレア」
一言そう呟いて噛みついていたウルフを消し飛ばした。腕はウルフの噛みついている跡が残っていて血が流れ出ている。
仲間が消し飛ばされたことも関係なく、間髪入れずに残り1体のウルフも赤髪少女にとびかかる。僕は赤髪少女の前にでて思いっきり剣を振り下ろす。完全に赤髪少女に夢中だったウルフは何の抵抗も出来ないまま僕に叩き切られた。
「大丈夫なの!?」
「???」
僕は少女の方へ振り返って尋ねた。
しかし赤髪少女は言ってる意味が分からないように首を傾げている。
「腕!噛みつかれていたよね?」
「…大丈夫」
そんなことないと思っていたが、少女は噛まれていた方の腕を僕の方に見せてきた。きめの細かい細い腕、とってもきれいだ…。ってそうじゃなくて傷が…
「無くなっている」
「私、あれくらいなら一人でも倒せる」
なんで傷が無くなっているんだ?回復魔法を使えるから?でもそんな素振りは見せなかった。魔法陣を発動させるとブォンという独特な音が出るはずだ。さっきまでの火魔法はそういう音を出していた。
「一人で倒せるって攻撃を受けてたじゃないか」
「あんなのは攻撃じゃないよ? あれは私の脅威じゃない気がした」
脅威じゃない?この娘は何を言っているんだ。あのウルフは大人でも危険な相手だ。僕は君が囮をしていたのと無駄に攻撃力の高い武器を持っていたから倒せたに過ぎない。それが脅威じゃないって。
「君は後ろで見ていていいよ。私一人で魔物とは戦えるから。
さっきみたいに危ない真似はしなくていい」
危ない真似というのは最後の一匹のことだろうか。でもあのままいたら彼女は自分の腕に噛みつかせて同じ方法でウルフを殺していただろう。僕はそのやり方はあまり好きじゃない。
「そういうわけにはいかないよ。
魔物を倒すときに一番大切なのは連携だ。魔力にも限界があるだろ?
より効率よく倒すには僕たちは協力しないといけない」
「…あなたにとってあれは脅威。
でも私は違う。だから私1人で戦う」
「2人でやれば脅威じゃない!」
僕は叫んでいた。なんの意味もない。今は2人助け合って生きなくてはならない。その状況で僕たちは喧嘩をしている。ほんとうに愚かだ。でも僕は気に食わなかった。彼女の考えた方が。
(頭があつい)
彼女は戦闘の時と変わらない、いや出会った時から変わらず無表情のまま僕の顔を見ている。僕は彼女が何を考えてるか分からない。ただ
「…あんまり自分を犠牲にするなよ」
金色の髪の少女が脳内にフラッシュバックする。目の前がチカチカした。誰だこいつは…
赤色の髪の少女の表情は変わらない。僕が何を言っているのか分からないみたいだ。
「君は強い。それは先の戦闘で分かる。だからこそ僕は君に守られたくない…」
(なんだか眩暈が…)
少女が僕を受け止めてくれるのが分かる。その体は柔らかくて、暖かくて、太陽に包まれたかのような心地よさを感じた。
拙い!
文章が…
もっとうまく書きたい