謎しかない現状
僕と赤髪少女は数分見つめ合っていた。いや正直僕は助け出したはいいもののこれからどうしたらいいか分からなかったのだ。実際僕はここがどこかも分かってないし、食料も無いし、ほんとにこれからどうしよう。
この広場にあるのは奥に続くと思われる一本の道だけだ。
「えっと…。これからどうしようか?」
「???」
赤髪少女は首を傾げるだけだ。うん。全く頼りにならない。
僕の手には力を失った剣と禍々しい剣が手元にあるだけ。本当にこの訳の分からない場所から脱出ができるのだろうか。
「動ける?」
僕はそっと彼女に手を差し出す。赤髪少女は不思議そうに手を見つめ僕の手をとり、立ち上がる。
「大丈夫」
「それはよかった」
口数の少ない子だな。表情もほとんど読み取れないし人形のようだ。
「とりあえずこんなところ脱出しないとね。奥の道に進んでみよう」
赤髪少女が頷いたことを確認すると僕は奥の道に歩を進める。
「っとその前にこの短剣持っておきなよ。護身用になると思うよ?」
そういって禍々しい短剣を差し出そうとすると、無表情が崩れて恐怖に顔が歪んだ。
「あ!ごめん!ごめん!今のなしなし!こっちの剣でいいよ。短剣の方が持ちやすいかなって思って渡そうと思ったんだけどこんな変な短剣嫌だよね」
今度は力の失った剣を渡そうとするとそれもとても嫌な顔をされた。
徐に少女は手を正面に掲ると手のひらから赤色の魔法陣が浮かびあがる。そして次の瞬間火の玉を作り出し発射した。
「今のは…魔法?すごい。初めて見たよ」
「…いらない。私はこれで戦う」
今度は少女が前に行く感じで奥に続く道を歩き始めた。僕はそれについていく。
それにしてもこの少女は何者なんだ。魔法を使うことができるなんて。あの厳重なまでに拘束されていたってことは犯罪者か何かなのだろうか…。でもそれだと今頃僕は殺されているよな。
謎しかない場所。謎しかない少女。そして自分自身のことも謎。謎ばかりだけどこの赤髪の少女といるとこんな場所から脱出できそうだと思うことができた。