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邪龍の守りびと  作者: kuro kuro
記憶喪失編~成長~
2/7

記憶喪失

 暗い暗い水の中。とても寒い水の中。全身を強打した僕の体は指一本も動かせなかった。無抵抗のまま僕の体はどこかに流される。やがて流れが緩やかになると僕の体は深い深い水の中に落ちていった。


 そんな絶望的な状況でも思い出す、好きな女の子。まるで太陽のような女の子だった。腰まで伸びる金色の髪。すべてを優しく包み込む藍色の瞳。一番印象的なのは笑顔だ。彼女の笑顔は太陽そのものだった。


 僕は動かないはずの右手を水面に向ける。もう届かない。ずっと一緒だと約束した。一生大切にするっていった女の子。

 自分が無力だったから失ってしまったあの暖かな温もり。


(ここはとても寒いな。一緒にいられなくて、約束守れなくてごめん。いつか強くなって『アリス』君を…)


 そして僕の意識はゆっくりと暗闇の中に沈んでいった。


 ゆっくり落ちていく、黒髪の少年を眺める少女がいた。腰まで伸びた茜色の髪、感情の読めない髪の色より濃い血のような瞳。薄ピンク小さな唇。

 一つ一つが芸術品のようで、また機械のように完成されていた。


 しかし彼女は全身を黄金の鎖で拘束され、胸には禍々しい剣が突き刺さっていた。

 まるで化け物を封印しているような徹底ぶりだった。


 少女は黒髪の少年に手をかざす。瞬間彼女の手から優しい光がこぼれる。彼女の顔は激痛に歪んでいる。

そして力尽きたように少女も意識を失った。



~~~~~~~~~~~

 目を覚ますと見たことも無い空間だった。円形の空間の中心には深々と黄金の剣が突き刺ささっていて蒸すの鎖が地面から生えていた。そしてその先には。


「え?…」


 思わず声が漏れてしまった。その先に居たのはとても美しい赤い髪をもった少女だった。しかしその胸には禍々しい短剣が突き刺さっていてとてもじゃないけど生きているようには感じられなかった。


 それにしてもここは…。どこなんだ?僕はどうしてこんな場所に?全く思い出せない。

 場所だけじゃないぞ!これまでのこと。自分の名前すら分からない…。


 そして気づいた。僕の服がボロボロなことに。ズボンは食いちぎられたようにボロボロで血がたくさんついている。シャツも脇腹に歯形がたくさんあった。


「一体僕の身に何があったんだ?」


 覚えていないし体も痛くないので冷静でいることができた。


「んっ?」


 そんなことを考えていると少女の方から声が聞こえた。まだ生きているのか!!


「あの大丈夫ですか!」


 しかし、少女からは反応がない。でも生きているんだ。助けないと。でもどうやってあそこまでいこう。

 赤い髪の少女は10メートルくらいの高さのところに鎖に繋がれている。つまり鎖をどうにかしないことには彼女を助けられない。


(あの剣でこの鎖を断ち切れないかな?)


 僕はこの空間の中心にある剣に目を向ける。地面に深々と突き刺さった剣は見ただけで業物の剣だと分かる。早速僕は剣の元に向かうと剣を引き抜こうとする。でもかなり深く突き刺さっているようでなかなか抜けない。


「このおおおお。抜けろおおお」


 僕は思いっきり黄金の剣を引き抜いた。その美しさについ見惚れてしまう。そして引き抜いた瞬間、黄金の鎖も一緒に崩れ落ちた。つまり赤い髪の女の子も一緒に落ちてきているということだ。


(やばいっ!)


 僕は思いっきり前に走った。すると僕の周りに風が巻き起こり僕の体が軽くなり、一気に加速する。その勢いのまま落ちてきた赤い髪の少女をキャッチする。


(ふー。危なかった…。

 それにしてもさっきの力は?この剣のおかげ?)


 剣を見るとさっきまでの輝きは失われていた。もう力は使い切ったのだろう。


 赤髪の少女は今も気持ちよさそうに眠っていた。ゆっくり地面におろしてやる。そして胸に突き刺さった短剣に触れ。引き抜こうとするがここで考えてしまう。


 この短剣を引き抜いても大丈夫なのか?でもこの短剣は普通の短剣じゃないんだよな。でも突き刺さっているし…


 もし、引き抜いた瞬間に血が出てきても治療ができない…。う~ん。でもやるしかないよな。

 僕は勇気を振り絞って引き抜くことを決意する。


「おりゃ!!」


 短剣を引き抜き刺さっていた場所を確認せず手を使って圧迫して血が出ることを防ぐ。でもいつまで経っても短剣が突き刺さっていた場所から血が溢れることはなかった。見ると穴も開いておらずほっと一息ついた。


 しばらくすると赤髪の少女は目を覚ました。

 腰まで伸びた茜色の髪、感情の読めない髪の色より濃い血のような瞳。薄ピンク小さな唇。赤いワンピースはとても似合っていた。

 不思議そうに僕を見ている少女に僕は問いかけた。


「君は誰?」

「…分からない

 あなたは?」


 僕と同じだ…。僕は赤い少女に対して親近感を覚えてしまう。


「僕も分からないや」

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