幕開け
自らを拘束する閉塞空間から出ようと必死に
もがき、その先にあったものは目も開けられない程の
光量と私の誕生を歓喜する声だった。
…謀られた。
『元気な男の子ですよ。』という嬉しそうな老婆の
声を聞き、手足を自由に動かすことさえできずに、ただ泣くことしかできない現状を把握すると同時に全てを思い出す。
産まれは小さな田舎町だった。幼い頃から
何をしても人並み以上にこなせ、そのくせその何にも
興味を持つことはできなかった。
両親や先生の期待に応えるために、それなりの成績を
取り続け、優等生を演じ続け、良い子を演じ続けた。
私の空虚な内面を感じとってか、高校に入ったあとは
友人の一人もできなかった。
18年間良い子を演じ続けた私が手にした物は有名大学の
合格通知と取り返しがつかないほど空っぽな心だった。
真っ暗な空間に私の意識だけがある。
自殺を決定づけた理由はなんだっただろう…
『随分と不毛なことを考えているな。』
どこからか声がする。
『既に死んだお前に生者の気持ちなど理解できないよ。』
『あなたは神様ですか?ここは地獄なんでしょうか?』
姿の見えない声に対して、私は別段知りたくも無い問いをかえす。
『天国や地獄など存在しないよ。罪は置かれた状況が作り出すのだから。』曖昧な答えとともに声は続く。
『太平洋戦戦を知っているかな?日本がアメリカと戦い、そして負けたあの戦争のことだ。君には今からあの時代に転生して日本の勝利を収めてきてほしい。今後の参考にするために。君の魂はまだ50年分の寿命を残しているし、何より私はあの結果に納得がいかないんだよ。理論上勝てたはずだし、だからこそ私は日本に賭けたのに…。』
『ちょ、ちょっと待って下さいよ。素人一人送り込んでも
結果は変わらないでしょ!だいたい何で俺が』
『これは決定事項だよ。それに君は歴史にある程度精通
していただろう?潜在能力も平均をはるかに凌ぐ。大丈夫だよ、理論上は勝てるんだから。』
その声を聞きながら私の意識は溶けていく。
このような拙い小説を寛大にも読み終えて下さいました読者の皆様に対し、まず初めに感謝の言葉を申し上げます。
ありがとうございました。
初投稿で至らない点ばかりだと思います。
小説に対して皆様の意見やコメントを頂けると嬉しいです。
それでは第2話でまた会いましょう。