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 第七話 道筋

 星明かりに照らされた静かな夜の道。

 王子が見つからないように、ここを担当している警備の人たちには、少しだけ眠ってもらっている。代わりに、王子のメイドを何人か配備した。勿論、後でこってり怒られる所存である。

 私はついてきて欲しいとだけを王子に伝えて、王子をバラ園の近くに連れ出した。

 開けた芝生の真ん中に王子を待たせ、私はそそくさと茂みに隠れる。今頃はイザドラをリリーとララが案内しているだろう。

 しばらくするとイザドラが現れ、ゆっくりとした足取りで王子の前に立つ。きっと、とても緊張しているに違いない。

 …………うーん。

 開けた芝生のせいで、ここからじゃ何を言っているか解らない。読唇術は使えるけれど、この距離では無理だった。

 近くでがさっと音がしたかと思うと、リリーとララが私の隣に隠れた。そうか、君らも大事な主の恋が気になるのか……さぁ! 共に応援しようではないか!

 なんて一人気分を盛り上げていると、リリーはオペラグラスを、ララは双眼鏡をさっとスカートから取り出した。

 うん。私よりも野次馬精神丸出しだね!


「……ずっと、ずっと……ずーっと前から、ずっと貴方のことが好きです」

 双眼鏡を覗きながら、ララは言った。

 おそらく、イザドラの言葉だろう。

 彼女は前世から今に至るまで、フローレンス王子を愛し続けていたのだから。

 王子が少し動き、リリーは王子の言葉を言う。

「僕もイザドラのことが好きだった。君と結婚できたら幸せだろうと、ずっと思っていた。………………あらぁ? これで二人は結ばれてめでたしめでたし…………とは、いきませんよねぇ?」

 そうだよ。いかないよ。

 公の場での婚約破棄。今の王子は、婚約者のイザドラを疑い、悪女に騙された馬鹿な王子として見られている。イザドラの父親は厳格な性格で、娘をとても溺愛していているので、そんな王子と再び婚約を結ばせるはずがないのである。

 リリーが王子の言葉を続ける。

「でも、どうか。僕以外の人と……君には幸せになって欲しいんだ」

 もしも、彼らが望むのなら、逃避行を手助けするのに。きっと、彼らは望まないだろう。王子はイザドラを、イザドラは王子を思って、その選択肢は選ばない。

 嫌だなと、私はスカートを力いっぱい握る。

 なんで上手くいかないのだろうと、もやもやする気持ちが苛立ちを生む。

 そうだ。

 国王陛下に印象を良くするとか、媚を売るとか、そんなの私に向いてはいないのだ。

 もっとシンプルに、体当たり精神を忘れずに。

 私は、国王陛下に会いにいくことにした。


 翌日の昼過ぎ、国王陛下とお会いできる許可が下りた。

 私は緊張しながら、これまでのこと、勿論昨夜のことも、全てを洗いざらい国王陛下に報告した。一歩下がって膝と手をつき、私は頭を下げる。

「なんの真似だ?」

 国王陛下は疑問を口にする。

「これは異国の最大の謝罪と請願の姿勢です。……私には、このようなことに対する学と知恵がありません。ですが、あの二人には幸せになってもらいたいのです。どうか。何卒、ご容赦とお知恵をお貸しください」

 あの二人を幸せにする方法を、私は思い付くことが出来ない。なら、人を頼るしかないのだ。頭を下げるしかないのだ。もし、方法があるのだとしたら、私は喜んで何だってする。

 国王陛下は暫し悩んで、私に頭を上げろと言った。

「お前は、フローレンスとイザドラが大事か?」

「逃避行をするのであれば、喜んで付いて行きます」

「よし。気に入った。お前、五日後のパーティーには新品の服を着て出ろ」

 え?

「そんじゃ、次の客人を通せ」

 え?

 ………………え?

 ちょ、ちょっと待って下さいと言っても、貴族の方が入室して来られたので、私は慌てて姿勢を正し、しれっとした顔で、国王陛下の執務室を後にするのだった。

 理由を全然説明してもらえなかった。

 ど、どうなるんだ!?

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