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 第十三話 貴方を望む弱い声

 ダニエル・ラシュトンは魔術自体が嫌いではないらしい。色々と言われるのが嫌なのだとか。ならば、魔術開発にやりがいを見出だすことが出来れば、なんとかなるだろうか? ダニエル・ラシュトン本人がやりたいと思えば。意味と意志があれば。

 魔術開発の依頼の種類は様々だ。創作の手助けのために、一般公募までされている。その中で、私はとある魔術の開発依頼を手に取った。水の減らない湖をつくってほしいという依頼。内容を調べると、その土地はどうやらここ数ヶ月間雨が降らず、生活をするための湖の水も底をついてしまったらしい。これをダニエル・ラシュトンに救わせるのだ。村人に感謝されたダニエルは、仕事のやりがいを見出だす。うん。我ながら、なかなかにいい案なのではないだろうか!

「ダニエル様、ここから七日ほどの距離に、ニムバス村というところがあります。どうか、ダニエル様のお力で、危機に瀕したこの村をお救い下さい」

「えー。やだ。ボク動くの嫌いだし」

 くっ。まぁ、いいだろう。それくらい読んでいたさ。

「ケーキやクッキーなど、食後に必ず出しますよ!」

「…………ボクがいつまでも甘いもので釣れると思ってるの?」

 !?

「ま、釣られるんだけどね」

 !!?


 そんなこんなで行ってくれることにはなったのだけど、馬車や護衛を用意しようとしたら、ダニエルは馬車だけでいいと言った。城壁の外にはモンスターがいるので、護衛は用意したかったのだけれど、嫌というなら仕方ない。馬車を動かしながら、モンスターから主を守ることなど、王子のメイド長であるこの私には造作ないことなのだ。

 と、思っていたのだけど。

「はやく入りなよ」

「…………えっと、その」

 馬車の扉を開けられ、中に入れと言ってきた。それじゃあ馬車は動かないし、護衛だって出来ないのだが。

 ダニエルは杖を一振りし、角の生えた狼のような獣と、仮面をつけた紳士を召喚した。

「目的地に着くまでワンコは護衛。ダンディは馬車を操作してね……キミはいつまでそこにいるのかな? 置いてくよ?」

「………………」

 やっぱり魔術はいいなぁと実感した。

 この世界では、魔術は限られた者しか使うことが出来ないのだ。しかも、ダニエル級に魔術が扱えるものなど、数百年に一度と言われている。私は魔術がさっぱりなので、本当に羨ましい。

「置いてくよ?」

 おっと。ぼけっとし過ぎていた。先に乗り込んだダニエルの向かいに座る。すると、ぽんぽんっと、座席を叩く音が聞こえた。

「キミはボクの隣」

 ダニエルが人の話をあまり聞かないで、自分の意見を押し通すのはもう解ったので、私は何も言わずに素直に隣へと移動する。少し間隔を空けるという抵抗をしてみたけれど、それはダニエルによってあっさりと意味がなくなった。こてんと、私の肩にダニエルは頭を乗せたのである。

 うわーうわー。

 心臓がばっくばくだぁ。

 私は意識を他に向けるため、外の景色に集中することにした。緑……緑が綺麗だ。

「ふーん。何も言わないんだ。つまんないな。……ねぇ、こっち向いてよ」

 ぐりんと、顎を掴まれ無理矢理向かされる。

 じぃいっと見詰められ、堪えれるわけもない私は顔が真っ赤になっていく。

「……ははっ。うん。やっぱりキミは面白い」

 どうやら満足したようで、ダニエルはまたも私の肩に頭を乗せ、しばらくすると眠ったようだった。

 あの……ちゃっかり手を恋人繋ぎでいるのやめてくれないっすかね。

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