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 村に着くとぼくらは慌てた。

「どうする。真理の世界の本物の完全なる悪がこの世界にやってきてしまったぞ。このままでは世界が滅んでしまう」

「あたしたちもイデアそのものになるしかない。あたしたちも、真理の世界にある本物の完全なるヒトになるしかないよ」

「くそう。時間がない。早く、真理の世界にもう一度、手を伸ばさないと」

 ぼくは目をつぶって考え始めた。昨日は、目をつぶって考えていたら、真理の世界に到達した。今日もその奇跡が再び起こることを願うしかない。世界は、最後には善のイデアに至り終わるんだ。

 それから真っ暗闇の中をさまよった。混乱し、迷妄し、錯乱していた。だが、プテラはどうだ。ちゃんと、真理の世界に手をのばしていた。

 声が聞こえた。

「ナルエー。あたし、完全なる少女になったよ。真理の世界の本物の完全なるヒトになれたよ」

 ぼくは、どんな美少女が目の前に姿を現すんだろうと思って、目を開けた。

 すると、そこには、手が六本、足が四本、目が七つの羽の生えた怪物人間が立っていた。

「ちゃお」

 プテラがいう。

「それが本物の完全なるヒトなのかい。イデアの体を手に入れたのかい?」

「うん、これが、そう」

 そして、ぼくも瞑想し、真理の世界の本物の完全なるヒトの体を手に入れた。

 六本の手、四本の足、七つの目の羽が生えている怪人だ。

「これが完全なるヒト……」

「あたしたち、完全なるヒトになったんだよ」

「これで怪物に勝てるかな」

「わからないよ。でも、これが真理の世界で起こってる本当のことなんだよ」

 翌朝、ぼくらは村を出て恐怖の森へ向かった。完全なる悪である怪物がいた。悪のイデアだ。

 ぼくはイデアの剣を手に立ち向かう。

 ぼくらは戦った。プテラもすでに真理の剣を手にしていた。一振り、二振り。ぼくらは息が合う。完全なるヒトなのだから。

 悪のイデアはぼくらに斬りつけられて傷つき、やがて死んでしまった。悪のイデアが崩壊した。

 悪のイデアがなくなり、この世界から悪がなくなり、善のイデアに至って終わった。


読者の賢い人に教えてもらいましたが、イデア論については中世西洋においては普遍論争という論争で意見が分かれていたようです。つまり、この作品でぼくが扱ったように別次元の本物のイデアがあるという「普遍実在論」と、そんなものは存在しないとする否定派が論争していたようです。

ぼくの知る限りでは、プラトンが「国家」で「普遍実在論」を述べ、同じくプラトンが「メノン」「テアイテトス」などで否定論を述べています。

ぼくは否定派が正しいと思いますが、なぜ、この作品で「普遍実在論」をとったかというと、アリストテレスが「形而上学」で「普遍実在論」の立場をとっていたからです。

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