二章 プロローグ
長い間更新が遅れてすみませんでした……
「あぁ~、東京駅は人が多すぎだ……」
「何言ってんの……平日だよ? 」
外もすっかり暗くなっている午後九時。東京駅のホームを歩いているのは、日本に潜入し極秘調査を行っているアイジロウ・N・イサカ・ロナウドと、大財閥の息子ながら家出を実行した十歳の少年、青山 軋斗。
「つーか、今さらなんだけどさ。お前、子ども一人で新幹線なんかのって、東京に何しにきたんだ?」
「自由と出会いを求めにきたんだ」
「………………はあ?」
そんな会話を交わしていた二人は、ふと、前方に一人の少女を見つけた。
歳はおそらく、軋斗と同じ程度だろう。短いツインテールの少女だった。
「ねぇ、あの子…………」
「ああ、なんか迷ってるみたいだな。話しかけてみるか? お前ってあーいうのが好みだったんだ」
「好みとかは関係ないよ。僕はただ、女の子とお近づきになれるチャンスを逃したくないだけだ」
「…………お前もなかなかだな」
女好きの自覚があるアイジロウだが、まさか5才以上年下の小学生に自分以上のアホがいるとは思っていなかったようだ。
そんな二人は、いまだにオロオロしている少女へと声をかけた。
「ねぇ、君」
「へ?」
「こんばんは。どうかしたの?」
「あ、えっと…………新幹線って、どこに行ったら乗れるかわからなくて……」
「ああ、それなら僕が知ってるよ。どの新幹線に乗りたいの?」
「え? …………えっと、じゃあ、あさまで」
あさまというのは、東京と長野を繋ぐ新幹線だ。白と紺のボディに、赤いラインが入ったデザインとなっている。
(『じゃあ』ってなんだよ…………。つーか、こいつも子ども一人で新幹線なんかに乗るつもりなのか? ……最近の子どもは狂ってる奴が多いのかな…………)
アイジロウがそんなことを思っていると、少女が自己紹介を始めた。
「私は木乃川零呼。よろしくね」
「僕は青山軋斗。こちらこそよろしく」
(このガキ…………さっきまでの憎たらしい雰囲気がきれいさっぱりなくなってやがるし。チャンスを逃したくないとか言うだけあって、ナンパのテクニック持ってやがんな…………)
と、唐突にアイジロウのスマートフォンが鳴った。
(電話か…………)
画面には、『和井菜奈』の表示。日本が世界に誇る国家最大戦力級奇術師の女性だ。
『こんばんは、アイジロウさん。今どこに?』
「こんばんは。今は東京駅だ。どうした?」
『あら、それは都合が良いです。粉雪莉央の調査ですか?』
「ああ、そいつの所属する組織ってのも調べるつもりだ」
『情報が早いですね。…………おそらく、近日中に、その組織を中心として、いくつかの組織による勢力戦が起こります』
「その確率は?」
『ほぼ100%、ですね。今回はそれを知らせただけです。 詳しいことはまた後ほど』
「わかった。それじゃあな」
通話が終わると、いつのまにか軋斗が新幹線乗り場まで連れて行く方向で話がまとまっているらしい子ども二人に声をかけた。
「なあお前ら。どうやって新幹線に乗るつもりかは知らないけど、俺は仕事があるからもう一緒にいられねー。あとは自分達で頑張れ」
アイジロウの言葉は冷たいものだったが、軋斗は怖じ気づくことはなかった。
「わかった。じゃあねアイジロウ」
「おう」
…………軋斗達と別れたアイジロウは、歩きながら首をかしげていた。
(う~ん、軋斗も今の女の子も、どこかで見たことある気がするんだけどなー。…………ダメだ、思い出せねぇ)
アイジロウ、青山軋斗、木乃川零呼。
彼らが出会ったこの東京で、数日後、多数の戦力がぶつかる戦闘が巻き起こる。