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一章 プロローグ
「……何だ…………人の命ってのは、こんなもんか」
少年は静かに失望した。
自分に能力があるのは解っていた。
使いこなせるように、密かに練習もしてきた。
そして今、初めてそれを、人に向けて発射した。
その結果、自分は殺人者となってしまった。
事故を止めようとした。それだけだというのに。
何だこれは、と、少年、磯澄勇也は思い、絶望した。
(こんなのが、世界中にいるってのか……)
こんなの、とは、殺人を犯した自分自身のことである。こんなような能力者が、普段町中をうろついているかと思うと、世界に対して、信頼していいのかと、不安になってくる。
能力を使ってしまった以上、もうそんなに長くは隠し通せないだろう、と勇也は感じた。
これからいつか始まるであろう、最悪の生活を思うと憂鬱になるどころでは済まなかったが、覚悟はできていた。
そして、更に『もうひとつ』。
『これ』は恐らく、自分だけの、腐った理不尽だと思うから。