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桜は求むる
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桜が綺麗だった。
幾つもの年輪を重ねたであろう、大樹だった。
宵闇に、ぼんやりと、しかし圧倒な存在感を持って花弁の群れが浮かび上がっている。
桜は常々思っていた。
――私はもっと美しくなれるはずだ。
――私はもっと皆から畏怖の念で見つめられるはずだ。
下でどんちゃん騒ぎをされて、誰からも愛でられないなんて、そんなことがあってはならない。
花より団子の愚か者の凡夫たちは、この際どうでもよかった。
――『わかっている』人間を、私の友とする。
邪魔者はいなくなったし、リハーサルも済んだ。あとは実行のみ。
私は、美しくなる。
もっと、もっと……
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