1話 厄介事は突然に
まるで進化の過程をすっ飛ばしたようにね
--ペイラー・サカキ--
野田と別れた二人はマンションの前にいた。
辰也が部屋の前のポストの中を確認すると、一通の手紙が入っていた。
「誰からー?」
「ええと・・・っげ!」
「どうしたの辰也君?」
「まあ、うん。まだ部屋には帰れないな。」
「これから用事?」
「お前もな。アレんとこ行くぞ。」
「・・・まさかドクター?」
「そういうことだ。今度は何を押しつけられるんだか。」
「まあ仕方ないじゃん。ササッと済ませちゃおうよ。」
渋々二人は出かけることにした。
目的地はここから20分ほど離れた場所。同じく都内。
「買ったものだけ置いてきたけど、なんか必要なものあった?」
「必要なら書いてあるだろ。問題ない。」
電車に揺られること10分、徒歩で歩くこと10分。
「ったく、来るだけで時間がかかっちまう。」
「ほんと、今度は何するんだろうね。」
「ほんとおもうけどな」
というわけで玄関前。チャイムを鳴らす。ピンポーン。
「ついたぞ、おっさん。」
少し間をあけて返答が返ってくる。
「中入れー」
「うっわ、命令口調だよ」
「なんかいったかー?」
「・・・この地獄耳が」
「・・・辰也君。もうなにいってもむだだよ」
二人は奥へ行く。中には40代前半といった男性が一人、試験管片手に二人を出迎える。
「おー。すまないな、よびつけて。」
「まったくだ。」
「うんうん」
「まあそういわんでくれ。さっそく本題に入ろう、隣の部屋で待っていてくれ」
「ほいほい・・・」
この男性は焔竜寺双馬。基本的に、裏事情を抱えた患者を扱っている医者である。いわゆる闇医者だ。
二人とはいろいろと縁があり、現在の関係に至る。
「まあ、最初から話そう。長くなるんだが・・・」
「長くなんなら聞かないよ?おっさん。」
「おっさんつうな、出来ればドクター・フレアと呼べ」
(雄也と辰也の脳内)「ただ焔のところカッコ良さそうに変えただけじゃん・・・・」
「ん?どうした?」
「・・・いや何も」
「では早速話そう」
事件は3日前に起こった。ドクターの知り合いにウイルス関係の研究者がいるらしいが、その研究者が開発した新ウイルスが盗まれたそうだ。そのウイルスはなんと殺傷能力が高く、辺りに散らばれば、数秒で空気感染して死に至らしめるというほどらしい。何のためにそんなものを開発したか知らんが。
頼み事とはそれを回収すること、らしい。
「・・・話は分かった。盗んだ奴らの見当は付いているのか?」
「今のところは・・・あまり。だがこっち側の人間てことは確かだ。」
「まさか<本>持ちか?」
「いいや、知り合いのそいつが聞いたらしいが、科学原書がどうたらとかいっていたらしい。」
「へぇ。その人がどこにいるかわかる?ドクター。」
「それが分からないからお前たちを頼ってるんだ。」
「へーへーそんなこったろうと思ったよ。」
「たのんだぞ。もしウイルスがばらまかれれば1歳が壊滅するかもしれん。」
「俺たちがしくじったことがあるか?」
「・・・頼もしいな。」
「帰るぞ雄也、作戦会議だ。」
「うん、わかった。」
二人はさっさと家を出て行ってしまった。
ドクターはさっきの部屋へと戻る。
「信じているさ。」
ドクターはひとり呟いた。
やっと話が展開していきます。