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11話 鋭い視線、そして、狂った幽霊

「さあ、こちらへ」

建物の奥まで連れてこられた雄也、辰也は二つのドアの前で立ち止まった。

「精神鍛錬の間と肉体鍛錬の間?」

突き当たりでは左右二つの道に分かれており、どちらも扉があった。

右の道の方の扉には、<精神鍛錬の間>と書かれており、左の道の扉の方には<肉体鍛錬の間>と書かれている。

そこで案内役の紳士は笑をうかべ、愛想よく聞いてくる。

「本日はどちらの部屋で修練なさいますでしょうか。」

二人は一瞬目を合わせ、辰也が「少し時間をいただけますか?決まり次第二人で中に入りますので」と言った。

紳士は二つ返事でそれをOKし、そそくさと来た道を引き返す。

残された二人。

「ふぅ。で、どうするの?どっちがいいと思う?」

はっきり言ってどっちに入るのが効果的か、まだわからなかった。

「まーとりあえず肉体鍛錬なんて何やらされるかわからなねーし、精神鍛錬の方が最初は安全だと思うが・・・」

「鍛言?」

「思い出させるなよおい・・・」

二人は渋々精神鍛錬の部屋を選ぶことにした。

そうと決まれば中に入るしかない。

辰也はドアの取っ手へ手を伸ばし、扉を開いた。

中には、言葉をひたすら熱心にブツブツブツブツつぶやいているものもいれば、ただひたすらに手を顔の前で合わせ静止しているものもおり、二人に、こいつら本当に大丈夫かと思わせるような雰囲気が流れていた。

そして全員奥のある一点へ体を向けていた。そこには一人の男がいた。おそらく教祖であろうものだろう。

その男はこちらが入ってきたことに気づくと、手を上げ人々の行動を停止させた。

「おや、あなた方が今日から入るかたですかな?」

穏やかな口調でそういった。

「はい。六条辰也です。」

「同じく海羽雄也です。」

「ほうほう。そうですかそうですか。」

そう言いながら教祖らしき人物はこちらへ歩み寄ってくる。

「私は精神鍛錬を務めている比曽ひそと申します。このように人が増えてくださることを教祖様はとてもお喜びになっております」

{この人が教祖ではないんだ・・・}

{ていうか比曽ってどんな名前だよ}

余談だがふたりは心の中で爆笑している。

比曽はふたりの前まで来て言った。

「では、鍛錬を始める前に着替えを行いましょうか。修練服の着用がここでは必要となります。更衣の間はあちらです。」

そう言って比曽はおもむろに左側を指さした。

確かに更衣の間と書いてある。

{更衣の間だってw馬鹿じゃねえの?フツーに更衣室って言えよ}

全く失礼なものである。

そして人々は皆白い修練服に身を包んで鍛錬を受けていた。

「そうなんですか。ではお借りします。」

「はい。お願いします。」

そう言って教祖は元の位置に戻り、辰也と雄也は更衣の間へ向かう。

更衣室まで行き、辰也が中へ入り、雄也もそれに続いた。

その時だった。雄也は後ろに鋭い視線を感じた。咄嗟に振り向く。

しかし、そこには誰もこちらを向いているものなどいなかった。

比曽がその雄也の行動に気づいて言った。

「どうかなさいましたか?」

「いえ、何も。」

雄也は不審に思いつつも、更衣の間へ入った。


        ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


茜と合流を果たした怜は今も廃工場へいた。

「アンタ、あれだろ。前回の作戦の時の協力者だろ。」

「ええ、そうです。」

「なんでよりによってアンタと組むのが俺なんだ」

「ご安心を。それに一番不満があるのは私ですから。」

癇に障る男だ。

「じゃあなんで今回協力しようとした?」

「お金ですよ~。安心してください。金の縁は死んでも守るので。」

茜はヘラヘラとした感じで話している。

「まあ情報収集ではこのあたりじゃアンタの右に出るものはいないと思うが、今どれくらい掴んでる?」

怜は単刀直入で聞く。

「僕もあれからすぐこのことを頼まれたのでまだ満足に伝えられるほど入手できていません。」

ふぅと茜はため息をつく。

行動の一つ一つがイライラする男だ。

だが自分も文句を言える立場ではなかった。

「ああ、そういえば一つ面白いことを掴んでいました。」

茜の目つきが変わる。

「何?」

「前回の作戦の鍵となったマッドレイス193、おぼえていますよね。」

「ああ。だがあれはもうこの世には存在しないはずだろ?」

はぁ、とここでまた茜がため息をつく。

「あなたも頭が回らない方だ。そう聞いている時点で新たな可能性を探るべきだと思いますが」

怜はまた少しイラッときたがおさえる。今はそれどころではない

「なに?ということは」

「実はまだ存在していたんですよ。それが」

「っな!?」

そうであれば状況が変わってくる。これはかなりまずい。

「どうして!?あれは既にNO.3に使われてなくなっているはずだ。」

鬼気迫る感じで熱くなる怜に対して茜は淡々と口にする。

「ここに来て偽物、という可能性もあります。・・・ですが、その可能性は低いと私は考えています。かれは確かに本物を入手したという情報が多いんですよ。」

あたりは、静まり返っている。

かえってそれが今の状況の深刻さを物語っていた。

「ってことはさぁ。・・・まさか練心会のやつらがそれを・・・」

「100%掴んでいます。とりあえず場所を変えましょう。ここに長居するのはあまり気持ちが良くないので。」


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