2話 この世の理
さて、ようこそ人類の最後の砦、フェンリルへ
--ヨハネス・シックザール--
「いやー、今日も散々だったなー、雄也」
「ごめん辰也君、それを言うならこの部屋だと思うよ・・・」
部屋に帰った雄也はその惨状をみて答える。
「お酒、飲んだ?」
「・・・まあなー」
案の定、想像を絶するほど散らかっているのである。
「・・・・・はぁ」
「すまねえな、よろしく」
「わかってるよ」
雄也はしぶしぶ掃除を始める。
「いやーこういうことは苦手でね」
「毎度のことなんでもう慣れたよ・・・」
~~~40分後~~~
「ふー結構片付いた」
あたりはすっかり整ってあり、スペースもできていた
「いやーありがとう!おれはお前という最高なやつに出会えて本当に」
「バガアアン!!」
「え?え?なに?」
そんな二人に災いは振りかかる。突然自室が吹き飛ばされた。
「おいおい!?なんだよ!?」
「・・・不自然だな。ここしか吹き飛ばされてないみたいだけど」
「ふーん」
「せっかくの掃除を台無しにするとは、いい度胸だね。」
ふと紙が落ちてきた。
「なんだこりゃ」
そこには<屋上にこい>と書いてあった。
「どうする?呼ばれてるみたいだけど」
「うーーん」
「僕がいってくるよ。辰也君のじゃこのマンション倒壊させちゃうでしょ」
「まあそれもそうだが・・・じゃあ俺は待ってるよ。面倒だし」
「それが本音だよね」
「断じて違う」
雄也は単身屋上に向かう。階段を一気に駆け上がり、屋上へとつながる扉を開けた。ガチャ。
「一体誰かな?40分の努力を一瞬にして消し去ってくれたろくでなしは」
そこには1人の男がいた
「おやおやぁ。違うお方が来てしまったようだぁ。俺は<パスカル>に来てほしかったんだが、まあいいかぁ。」
「君の目的はなんなの?」
「目的?はっ、そんなのてめえらの<科学原書>を奪い取るために来たに決まってんだろ」
ー科学原書、それはいつ、どこで、なんのために作られたかさえ分からない伝説の書物。科学原書は各分野ごとに分かれており、それを自らに吸収させることで、そのことについて絶対的な知識、称号、応用力、さらに現象を具現化することが出来る。それらのある場所は不明となっている。人々は各々の願いをかなえるためにそれを求める。<科学原書>は別名<本>とも呼ばれている。この世の裏側の理、普通に生活している人々には到底知り得ない常識。
「本なんか手に入れてどうする気?」
「きまってる!俺はあらゆる科学原書を手に入れ、最強となるのさ!俺様こそが最強になるにふさわしい器だからなぁ!!」
「そんな私利私欲のために<本>をほしがるだって?」
「そうだ。お前も持ってるよなぁ。<遠心力の書>を。力づくで奪いとるがなぁ!!」
言うが早く男は攻撃を仕掛ける。男はボールを投げてきた。しかしそのボールは雄也の前まで来て爆発する。
「!っく!物質の爆発・・・君が<ノーベル>?それ、<爆発の書>だよね」
「御名答。御褒美にさっさと殺してやるよ。」
「それは無理だね、まずさ、そんな攻撃僕に当たらないけど?」
「なんだと?よけれるもんならよけてみやがれ!」
男は2、3発続けてボールを投げる。ドガンドガンドガーン。爆音が鳴る。
「ふっ、これなら」
「大丈夫だって?」
「なんだと?」
「悪いけど穴ありすぎ。よけるの簡単。」
「っく!チクショー!!くらいやがれ!!」
今度は立て続けに投げてきた。ドガンドガン、だが雄也には当たらない。
「君は能力を過信しすぎだ。そして使いこなせてすらいない。」
雄也がよけながら一気に間合いを詰める。
「くそ!、お前、なんでよけられる!?こんなの、素人の動きじゃねえ!!!」
「残念だったね、素人じゃなくて!」
バギィ!男の顔を雄也がぶん殴る。
「つぎで仕留めるよ」
「そこまでにしておけ。雄也。」
「辰也君」
いつの間にか後ろには辰也が立っていた。
「殺すことなんかないさ。」
「ひっ!た、助けて!」
「あ?じゃあ二度とくんなよここに。命と<本>はとらないでおいといてやる。もっとましなことにその力使えや。おい。」
「は、、はいぃ!すいませんでしたぁぁぁ!!」
辰也が脅しをかけると疾風のごとく逃げて行った。
「さーて帰ろう。部屋の修理だぜ。管理人さんに怒られちまう。」
「・・・昔のことを思い出しちゃったな。」
「・・・・雄也・・・・・」
「誰もが王や神になりたいとか、そんなことを考えず、平和に生きていけばいいのに・・・」
「そうだな。復讐や敵討なんてのも、新たな悲劇を生むだけだ。」
「そうだよね、でも・・さ・・・」
「どうした?」
「復讐心っていうのは自分で抑えられるもんじゃないもんだよ・・・」
「・・・・・・・・・・・雄也」
辰也の目には、一瞬雄也が闇に染まって見えた。
興味があればぜひ次話もお願いします