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その四人、まとまりにくい

 2076年6月6日、土曜日、午前「9時」。


 この日、メイガスメイズの中で予定通りに合流した同好会メンバーは、ナルカド商国首都マンダイは「マンプク亭」という大衆食堂兼宿屋の二階に部屋をとり、話し合っていた。


 ん、何の話をしてるかって?

 

 ま、聞いてりゃわかる——


「未踏破のダンジョンアタック!」


「未撃破のレイドボスを討伐したいですわ!」


「ヒナ、かわいい使い魔ほしいの……」


「がああああっ⁉︎ まとまんねええええっ‼︎」


 小僧たちは、メイガスメイズで「四人一緒に」やりたいことで、揉めに揉めていたのである。


 九曜学院レトロゲーム同好会、現在のメンバーは五名。内、一人は私用で長期休暇だそうだ。


 現在、「会長:九条院 花凛」、「副会長:猿渡 勇太」、「書紀:小鳥遊 雛子」、「庶務:永瀬 乃亜」の四名で同好会活動は行われている。


 だが見ての通り、非常にまとまりが悪い。


「クソダンジョンでレプリカマラソン満喫したらよくね?」と小僧が己の趣味嗜好を全開放出。


「せっかくのMMORPG、血湧き肉躍り骨軋む巨大ボスとやり合いたいですわ!」と金髪ドリルが己の趣味嗜好を全開放出。


「かわいい子、どこ……? ヒナ、会いたいな……」と黒髪幼女が己の趣味嗜好を全開放出。


 足並みがまったく揃わないことに頭を抱える茶髪坊主が毎回吼える。


 この四人は、全員が全員もれなく「変態クソゲーマー型バグ・チャイルド」。


 こやつらに共通するのは「異常なまでのこだわり」であり、それらが他者と被ることは稀。


 その事実から導き出せる結論は、悲しい哉、たったひとつだけ。


 変態クソゲーマー型バグ・チャイルドは、往々にして「ソロ気質」なのである。


「未踏破のダンジョンアタック、未撃破のレイドボス討伐、可愛い使い魔探し……いつものことながら、見事にバラバラだな……」


「あら、勇太さんのご希望は?」


「……シェド・ヤアル攻略」


「シェド・ヤアルってプラチナだっけ? そこのレイドボス倒してダンジョン開けばよくね?」


「蜘蛛やだ……かわいくない……」


「そこのレイドボスは大きいのかしら? 聞くところによると、全長が50m以上の未撃破レイドボスの方々がそれなりにいるらしいですし……そちらに行きませんこと?」


「かわいいレイドボス、いる……?」


「ボスmobに可愛いのとかいるのか?」


「これ! ラフィング・ベア! もふもふ!」


「あら、可愛らしいですわね」


「うん……でも、大きくないからダメ……?」


「そもそもこいつ、他の奴らが攻略済みだな」


「んー……別の攻略法、考える……?」


「見た感じ、力押しで終わりだろ、こいつ」


「どうせやるなら高難易度だよな」


「なら、シェド・ヤアルだろ」


「かわいい蜘蛛さん、いるかな……?」


「どのくらい大きいボスなのかしら?」


 この「まとまりそうに見えた途端に脱線しては二転三転しつつ結局は高難易度に行きたがる」流れが、この四人の平常運転であることが多いらしい。


 そもそも、この四人の趣味嗜好はかなり異なり、合致することの方が珍しいようだ。


 そういう点では、D.D.D専用同人ゲームの「Wild Fang (ワイルドファング)」は稀有といえる。


 四人全員がのめり込んでいるため、週末は大抵揃ってダイブしており、界隈の民と繰り広げる狂騒の宴を満喫しているそうだ。


 この四人にとって、メイガスメイズがそのような場所になるか否かは、間違いなく今日という日に決まるだろう。


 ただ、それはそれとして、小僧から直接その話を聞いてから、他の三人は、どうしても自分の身で確認しておきたいことがあったようじゃ。


「濃厚でありながら臭みは極めて少なく、とめどなく押し寄せる旨味の奔流が、実に素晴らしいですわね……98点」


「確かに、これはやべぇな」


「うん……すごく美味しい……」


「在庫はそれなりにあるけど、金策にもなるからほどほどになー」


 そう、噂の「蟹味噌」を、三人はどうしても食べてみたかったのである。


 宿屋の一室を蟹臭さで一杯にしながら「蟹味噌」を食した三人、その感想は上々。


 何より、そのうちの一人が日本有数の名家出身ともなれば、美食珍味の類に精通していても不思議ではない。


 つまり、金髪ドリルが、ほぼ満点の「98点」を挙げた事実こそが、「蟹味噌」の品質を証明する担保になるということ。

 

 クサレ毛蟹こと、『大鎌毒蟹 (ポイズン・ヒュージ・クラブ)』。そのレアドロップ枠たる『大鎌毒蟹の蟹味噌』が、オークションの目玉扱いされる逸品というのも納得である。


 実は、「メイガスメイズの魅力は?」と問われ「グルメ!」と即座に答える者が多いのもまた、神ゲーたる所以だそうだ。


 忘れてはならないのが、フルダイブVRとはいっても、全てが完璧なわけではない。


 メイガスメイズも、それは同様。


 だが、その当たり前を考慮してなお、メイガスメイズ民は強く断言するそうだ。


「異世界グルメならメイガスメイズ一択」、と。


 さて、「美味しい食べ物や飲み物を好きじゃない者が果たしているだろうか?」と問われれば「好きじゃない者もいるのは当たり前」と答えるべきだろう。


 だが、それは美味しい食べ物や飲み物の価値を落とし下げることには繋がらない。


 そして、同好会メンバーの四人は全員、美味しい食べ物や飲み物が好きだ。


 そんなわけで、同好会メンバーの方針としては「美味しい食べ物や飲み物を探しながらメイガスメイズを楽しむ」ということで決定した。


 決定したのだが——

 

「海の幸!」


「ジビエを所望いたしますわ!」


「ケーキあるかな……」


「やっぱ、まとまんねええええっ!!」


 この四人の趣味嗜好が素直に合致するわけもなく、茶髪坊主が頭を悩ませては叫んでいた。


 なお、茶髪坊主の希望は「キノコと山菜」。


 見事に、四人バラバラであった。

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