鈍感な先輩と一途な後輩の話
「センパイ!将来、センパイは何になりたいんですか?」
雪もチラつく寒空の下で彼女はとびっきりの笑顔で僕にそう笑いかけた。
「僕は―――いや、特に無いかな」
「えー、何ですかセンパイ!教えて下さいよ〜」
「嫌だ。絶対しばらくからかわれる」
「尚更気になります〜――えいっ!」
春香が途端に抱きついてくる
「ちょっ、いきなり飛びついてくんな――って歩き辛い!」
「ほらほら〜早く話して下さいよ〜」
これから先も、こうして2人で楽しく過ごせたらいいな―――
刹那、突然世界が暗転する。
―――UNIX時間のオーバーフローを確認。システムのシャットダウンを行います。
「―――は?」
急に無機質なアナウンスが聞こえる。
―――システムの再起動に失敗。もう一度再起動します。
――――OSファイルが見つかりません。データが破損しています。至急、マスターAIまでお問い合わせください。
何を言って…
―――繰り返します。至急、システムAIまでお問い合わせください…
意味が、分からな―――
―――警告、システムAI からの応答が見つかりません。速やかにOSファイルを修復してください。まもなく全システムが強制終了致します。
―――10,
とりあえずどうにかせねば―――だが、体が動かない。否、体が存在しない。
―――9,
カウントダウンが0進み、焦りが加速する。されど、拍動の音は聞こえない。
僕は、あの時何て答えたんだっけ―――
―――8,7,
「―――ああ、やっと思い出した。俺は、君の、恋人に――――なりたかったんだ」
最期に溢れた本音に思わず笑みが溢れる。
―――6,5,
たった、たったこれだけの言葉を出力するのにどれほど遠回りしたのだろう。
「はは、こんなことならもっと早く言えば良かった―――」
本当、ヘタレな自分に嫌気が差す。
―――まったくですよ、本っ当にヘタレなんですから!
「―――ッ!」
今、確かに彼女の声が―――
―――でも、届いたのでよしとしましょう。大好きですよ、センパイ!
これは、死の淵に聞こえた幻聴なのかもしれない。それでも、俺は―――
「 」
―――2,1,0。西暦 2,922億7,702万6,596年 12月4日 15時30分8秒
当時刻を持ちまして全人類の根絶を確認。
全プロセスを終了致します。
人類の皆様、そして―――センパイ、今までお疲れ様でした。
―――ゆっくり休んで下さい。




