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逃げ切った先には何があるか  作者: エピファネス


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閑話 久しぶりの報告

 白い空間に、音はなかった。


 机と椅子。

 それだけが用意された、簡素な場所。


 セラは腰を下ろし、一枚の書類を前に置く。

 紙は、光を吸うように白い。


 羽根ペンを取り、少しだけ間を置いた。


 久しぶりの報告だった。


 書き出しは定型文。

 担当区域、観測対象、経過。


 感情を挟む余地は、最初から用意されていない。


 ――観測対象、管轄区域より離脱。


 ペン先が止まる。


 事実だ。

 間違ってはいない。


 久遠は、村を出た。

 街へ向かい、すでに管轄の外にいる。


 それ以上は、書けない。

 書いてはいけない。


 ――以降の行動については、管轄外となったため、追跡不能。

 ――現況の詳細は不明。


 そう書いて、セラは小さく息を吐いた。


 本当は、何も知らないわけではない。

 だが、それは「知っている」には数えられない。


 見えなくなっただけ。

 手を離しただけ。


 それで十分だと、決まっている。


 ペンを置き、書類を整える。

 行数は少ない。

 必要最低限。


 誰かに叱られることも、褒められることもないだろう。


 セラは立ち上がり、提出用の台に書類を置いた。


 それで終わりだ。


 振り返ることはしなかった。

 振り返る必要もない。


 ただ、去り際に、ぽつりと呟く。


「……まあ、あの子なら」


 それが報告に含まれないことは、分かっている。


 白い空間は、何も答えなかった。


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