四品目・目玉焼き
チィとのプチデートで、次の日もピクニックの約束をするタクミ。
サンドイッチのタマゴは厚焼き玉子派だそうです。
目覚めるとまだ朝の5時半だった。昨日寝たのが早かったからかもしれない。お腹もまだ空いてなかったし、少しだけ歩くことにした。30分くらいにしようかな。
朝の散歩はとても気持ちいい、日が少し差してきたりだとか、鳥の鳴き声だとか、どこからか漂ってくる朝ごはんの匂いだとか、1日の始まりという感じの雰囲気が好きだ。
その朝の雰囲気の中、早歩きでなくゆったりと歩く。風が少し吹いた瞬間、朝ごはんの匂いに紛れて、微かに金木犀の香りがした。ほんのり甘い香り、そういえば母親が金木犀が好きだったっけ。
朝にも一応催促のつもりでチィにサンドイッチの具のメールをしたけど、返ってきていなかった。さすがに時間が早すぎるか。ほどよく歩いてから家に帰ってきた。
「ただいまー」
『タクちゃんおかえり〜』
母親が戻ってきていた。なんとなくほっとした。
「母ちゃんおはよう。用事は大丈夫やったかな?」
『あー、用事な。まぁまぁて感じかな。晩はハンバーグにするけど、お昼はなんか食べたいもんあるん?』
「あ、そうそう。今日はチィと公園に出かける予定やねん。サンドイッチ持ってきてくれるらしいからお昼は今日は大丈夫やで」
母親がにんまりとしている。
『おっ、タクちゃんも女の子とデートするお年頃になってきたんやなぁ〜。チィちゃん喜んでたんちゃう?』
「んー、どやろ?あ、昨日ファミレスに食べに行ったんやけどな、デザートのパフェは喜んでたな」
『あはは、そうなんやね。タクちゃんはいつもなんか微笑ましいわ』
「なんなんそれ」
朝ごはんだけは作ることにした。ご飯は冷凍してるやつがあるから、味噌汁と、あ、今度は目玉焼きにしよう。
「母ちゃん、目玉焼き作りたいんやけど。できたらハムエッグ」
『おっ、ええやんか目玉焼き。卵料理のレパートリーは増やせば増やすほど、色んな料理の幅が広がるで〜』
そんなものなのかな。とりあえず鍋に水をいれて、味噌汁の準備をする。具は…玉ねぎの半分と、もやしの残りと、キャベツにしようかな。キャベツを半分に切ろうとすると…
『あっ、キャベツはちょっとずつ使う時は、1枚1枚めくって使ったほうが長持ちするからええよ。切ってしまうと、その断面から傷んでくるからね。まぁどっちでもええんやけど』
どっちでもいいんかい。まぁ言われたらそうしとこうか。キャベツは2枚めくって、千切りにして、玉ねぎはパスタの時と同じ薄切りに。ほんだしと具を鍋にいれた。
「目玉焼きはどれで焼くん?」
『その中くらいのフライパンでいいかな。はじめに油ひいて火かけてな。ハム2枚と卵2つの豪華版両目玉焼きにしよか』
おっ、2個ずつとは豪華だ。指示通り、フライパンが熱くなってきたところで、先にハムをのせる。いい感じにハムがピチピチ音を立てる。
『あ、ほんで卵いれたら蒸し焼きにするから、その下のとこにあるフタを出しといてな。蒸し焼きにする水は計量カップを使ったらええよ』
ハムがいい感じで焼けてきたところで、卵を2つフライパンに落とす。そして、少し待ち、白身が白くなってきたところで、水をいれて、フタをする。
『はい、あとは待つだけやわ。簡単やろ?焼いたり炒めたりする料理は、油と火入れがポイントやで。そこをちゃんとしてないと、フライパンにめっちゃついたり焦げたり、逆に加熱できてなかったりするからね』
フライパンの中の水がなくなってきたころに、フタをあけて、焼き具合を確かめる。うん、いい感じ。
フライ返しを使って、ハムエッグを皿にうつした。そのあと、味噌汁の鍋もいつの間にか火が通っていたので、いつも通り火を止めて、おたまで味噌を溶き、全体に流し入れる。仕上げにみりん。もう味噌汁は完璧だな。
『タクちゃんもう味噌汁は手慣れたもんやな。味噌汁の味がもし飽きたらなんやけど、味噌の代わりに、しょう油と白だしを入れたら、すまし汁ができるで。あっさり味にしたい時とか、料理によってはこれでもいいと思うわ』
すまし汁は、ほんだしと、しょう油と、白だし…と。携帯のメモに入力しておいた。
「いただきまーす♪」
僕は目玉焼きには、しょう油派だ。卵の黄身のところに箸でプスプス穴をあけて、そこにしょう油を注ぐ。んで、白身を少しずつ切りながら黄身しょう油につけながら食べる。そして、半分くらいになったら、ご飯のほうにそれを乗せて目玉焼き丼にするのが好きだ。
「うまー!だし巻き卵もええけど、目玉焼きもやっぱええな〜」
そういえば、チィから返事がないな。休みの日はゆっくり寝てる派なのかな?何時に出かけるとも言ってなかったからまぁ僕はいいんだけど。朝ごはん食べて少しゆっくりしてから、また連絡するか。
「ごちそうさまー。ちょっと寝よ」
『あんた、ほんま寝るの好きやんな〜。まぁええんやけど』
「んー、だってお腹いっぱいなったら眠くなるんやもん…しゃーないやん、こればっかりは…ふわぁ〜。じゃあおやすみ〜」
母親は困ったような、笑ってるような顔をしていた。
◇◇◆◆◆
ん…めちゃくちゃ寝た気がするな…今何時だ?
携帯を見ると、12時前になっていた。
あれ?チィから返信ない、よな…?既読もついていないみたいだ。
さすがに心配になって、電話をかけてみる。
プルル…ガチャ
「あっ、チィ…」
『おかけになった電話は、電波の届かない場所におられるか、電源が入ってないため、かかりません。おかけになった電話は、電波の届かない場所におられるか…』
え。
僕は少し不安になってきた。




