プロローグ 『目覚めた少年』
ザザザ……ザザザザ……
「緊急……報です…」
「……県……市の交差点で……暴走車両と……が衝突……の損傷……激しく……警察は……特定を急いでおり.…..……」
◆
「……て」
……どこからか声がする。
……何だろう。
「…...ン!! ……目を……て……!」
……誰かを……呼んでいるような…。
誰だろう……。
「目を覚まして! シオン!!」
シオン? 誰だっけ、それ……。
どこかで聞いたことのあるその名前を、ゆっくりと目覚め始めた意識の中で、ぼんやりとしている記憶を頼りに思い出してゆく。
……シオン。
……シオンは、俺だ。
そうだ、それは俺の名前だ。
…この声は、俺を呼んでいるのか。
そうはっきりと認識すると同時に、ぼんやりとしていた意識が、だんだんとはっきりしてゆく。
そうして、やがてゆっくりと瞼を開けると、まだ少し眩しい視界にぼんやりと映り込んだのは、今にも泣きそうな顔の、雪のように白い色の髪をした可憐な少女が、必死に叫んでいる姿だった。
どうして、この子はこんなに叫んでいるのだろう。
シオンは、やがてその原因を思い出す。
そうだ。
俺はさっき間違いなく、死んだ。
この身体に、魔法が…直撃して。
それを思い出したと同時に、大きな穴が空いている筈の自分の体へとすぐさま視線を移す。
しばらくして、シオンは眉をひそめた。
傷が…無い。
どういうことだ?
あれから…何が起こった?
次々と増えていく謎に、シオンは頭を悩ませていると、目の前の少女は、ぐったりと倒れていた少年が意識を取り戻した事に気がつき、やかて目に溜まっていた涙を流すと、横たわっているその身体に倒れ込むように顔をうずめてから、泣いているからか、少ししゃがれているその声で呟いた。
「生きてる…ちゃんと、生きてる……」
「シオン……私…あなたがこのまま二度と目を覚まさないんじゃないかって……」
「恐かったよぉぉぉ」
「……教えてくれ…なんで、俺は……生きてるんだ?」
深まるばかりの疑問を晴らすため、シオンは見知らぬ少女の言葉を遮りながらそう問いかけると、彼女は顔を上げて、相変わらず泣き顔のまま答えた。
「あのね、ミーティアが――」
ミーティア……。
また知らない名前だ。
そう思ったと同時に、シオンは激しい頭痛に襲われる。
やがてうっすらとしていた意識が完全に目覚めると、それにつれて今までの記憶が一斉に脳へと流れ込み、シオンはその不思議な感覚に眩暈と吐き気を覚える。
(そうだ、俺は……。)
今、物語の歯車が動きだす。




