冒険者+5:おっさんと弟子帰還する
その後、私とクロノは土竜の口から出てきた。
そしてクロノの部下と無事に合流を果たし、今はその馬車の中にいる。
だが、私とクロノの内心は複雑だった。
まずは『虹鉱石』入手に関しては嬉しい。間違いなくだ。
けれど、土竜の口の入口で見たものが頭から離れなかった。
――ハイエナ冒険者の死体の山が。
「師匠……あれはなんだったんでしょうか? 魔物でも出たのでしょうか?」
「いや、魔物にしては違和感がある。周りに被害がなく、ハイエナだけを狙っていた。魔物がやったなら、もっと周囲に被害が出る筈だ」
「それじゃ、まさか私達よりも先に『虹鉱石』を採取した者でしょうか?」
「……それもありえない」
私はクロノからの言葉に首を振るしかなかった。
私達よりも先に入手した者。それはありえない。
もしそうだったら、すれ違わない筈がない。
予想だが、きっと外から来てハイエナだけを殺害した奴がいるんだ。
一体何のために? その理由は全く分からない。
わざわざ土竜の口まで来て、ハイエナ狩りをする物好きなんている筈がないぞ。
きっと目的があったんだ。
それが『虹鉱石』だったのかは分からないが、理由もなしに土竜の口まで来る筈がない。
「……まさか私か?」
私は思わず呟いてしまうが、すぐに首を振った。
自意識過剰だ。それこそありえないだろう。
一瞬だが始高天が脳裏に過ったが、奴等は私への直接の干渉を何故かやってこない。
だから可能性はあっても、事実だとは断言できない。
「まずは忘れよう……ハイエナと戦わなくて済んだんだ。それで良いじゃないか」
「……そうですね」
クロノも私と同じ答えに辿り着いたのだろう。
間があったが、そう言って頷いてくれた。
そんな時だ。運転手の部下が話しかけてきた。
「それにしても無事でよかったですよ! それに『虹鉱石』も確保できたし、本当に最高ですね!」
「おいおい、依頼品でもあるんだ。手に入れた物全てが私達の物じゃないぞ?」
クロノは笑いながら部下へそう言った。
そうだよなぁ。まずは依頼分を渡さないと。
確か辺境ギルド分と、後はミア・レイ・エミリア達からも依頼があったな。
そう言えばエリア達、騎士団からもあったか。
まぁ足りるだろ。過剰と思える分、採取したんだからね。
クロノのギルドが受けた依頼を入れても、きっとかなり余る。
間違いなく、良い稼ぎになったはずだ。
さて、仕事は依頼品を渡すまでが仕事だ。
まずは辺境ギルドに寄ってもらって、後は王都だな。
私は伸びをしながら欠伸をし、到着するまで眠る事にした。
30を超えると、一気に身体にガタが来るから疲れるんだよな。
「……すまんクロノ。少し寝かせてくれ」
「えぇ大丈夫ですよ。師匠は少し休んでください」
クロノから労われる様に言われ、年相応の扱いに虚しさを感じた。
だがいくら言っても疲れているのに変わりはない。
私はクロノ達へ移動を任せ、暫く眠る事にするのだった。
 




