冒険者+5:おっさん。ドラゴン退治開始
全くドラゴン・マンティスとは驚いたな。
両腕が鎌で出来た、素早い動きと森の中での擬態力。
それが脅威の<昆竜虫類>のドラゴンだ。
「エリア! 奴は速い! 気を付けろよ」
「分かりました! 任せてください!――魔法刃・光!」
エリアは剣へ光を纏わせた。
そして私もガントレットブレードを魔剣・ニブルヘイムとガイアへと切り替える。
奴は竜であり虫でもある。
ならば氷のニブルヘイムと、自然を味方につけるガイアが適任だろう。
『ギャオォォォォォン!!』
「早速きたぞ!」
奴め、左右から同時に鎌を振るってきたか。
だが甘く見るなよ。私とエリアを。
「エリア!」
「ルイス殿!」
互いに声を掛け合って、私達は互いに背中をくっつけて武器を構える。
そして私とエリアが、それぞれ迫る鎌を左右から受け止めた。
「ぐぅっ!」
「うっ! 凄い力……!」
あぁ凄い力だ。危険度だけならツンドラオロチの方が上なのに。
流石はドラゴン。5レベル差があっても油断はできないぞ。
「だが、私とエリアなら勝てる相手だ!」
「っ! は、はい……!」
ん? な、なんだ。エリアの背中がすっごく熱くなっている気がする。
戦いの中で興奮しているのか?
成程、士気が高いのは良いことだ。
「エリア! ニブルヘイムを使う! 相手が怯んだら頼む!」
「任せてください!」
「良し!――魔剣ニブルヘイム!」
魔剣の力を解放。
絶対的な冷気がブレードから発し、そのまま接触するドラゴン・マンティスの鎌を氷漬けにし始めたぞ。
『ギャオォォン!!』
奴め、嫌がって後ろに下がったから。
だが鎌も離れて、確かな隙が出来たぞ。
「今だエリア!」
「――奥義・聖破十文字!!」
おぉ、これは凄い。巨大な光の十字斬りか。
この威力なら確かに奴に効くし、実際奴の身体に十字の傷が刻まれたぞ。
『ギャオォォォォォン!!』
「なっ! まだ動ける!?」
流石はドラゴンか。今の一撃を喰らっても平然と動いてる。
それにマズイ。口からゆらゆらと炎の様なものが――
「下がれエリア! ニブルヘイム――氷神馬壁!!」
私はエリアの腕を掴んで下がらせた。
そして、私達を守るように氷の壁を目の前に出現させた。
『ギャオォォォォォン!!』
同時にドラゴン・マンティスは炎を吐いた。
翡翠色の巨大な炎だ。それが私の作った氷壁とぶつかる。
だが、これだってただの氷の壁じゃない。
馬の氷像が飛び出す氷の壁だ。
それは意思を持った様に壁から生え、炎と衝突する。
凄い炎だ。ぶつかり合う攻撃の余波は、やがて大きな爆発を生んだ。
「うおっ!」
「きゃっ!」
私達は思わず小さな悲鳴をあげたが、氷の壁の方が多く残っている。
逆にドラゴン・マンティスは大きく仰け反った。
「これも喰らっとけ!」
そこへ一気に投げナイフを数本私は投げた。
ただのナイフじゃないぞ。爆発するタイプのナイフだ。
ナイフは回転しながら飛んでいき、次々とドラゴン・マンティスの全身へ刺さった。
『ギャオォォォ!!』
おいおいまだやる気か。
大きな爆発を生み、出血したと思った。だが奴は、今度は羽を広げて飛び始めたぞ。
「させるか! グラビウス――マーズ!」
奴を飛ばせてはならない。
私は重力魔法と炎魔法を合わせ、球体として掌の中に生み出した。
そんな私を見て奴も、再び空から炎を吐こうとしているが遅い。
「持ってけ!!――炎回流星!!」
これで最後だと、私は口に向かって炎の重力球を投げた。
それはそのまま真っすぐに飛んでいき、そして奴の口の中に入った!
『ギャオォォ――!』
その瞬間、口の中で炎が爆発。そして天へ向かって一気に放出された。
しかも苦しそうな声を上げているし、首が隙だらけだ。
「エリア! 行け!!」
「背中を借ります!!」
私の後ろからエリアが駆けてくるのが分かる。
でも私は動かず、前かがみになる。
そして一気にエリアが私の背中を蹴り、ドラゴン・マンティスの首へと跳んでいった。
一瞬、腰がやばかったぞ。
「魔法刃・光――逆光の太刀!!」
『ギャ――!』
あまりの光にドラゴン・マンティスが顔を逸らす。
だが、それが死への道だ。
「これが王国騎士団の力だぁ!!」
エリアが叫び。同時に光の刃が振り落とされる。
『ギャオォォォォォン!!』
その瞬間、暴れようとしたドラゴン・マンティス。
だがさせないよ。魔剣ガイアの力を――
「ガイアァァ!!」
魔力を込め魔剣ガイアを天へと翳す。
その瞬間、地面から木々が生えてドラゴン・マンティスを拘束する。
「行けぇぇエリア!!」
「これで最後ぉぉぉ!!」
エリアの剣が更に輝いて見えた。
そして光が晴れた瞬間、ドラゴン・マンティスの首は斬られ、そのまま地面に落ちる。
「良し! これで――!」
私は喜んだ。だがその刹那、強烈な殺気を側面から感じとった。
「――獄王剣・殺那!」
側面から私に向かってきたのはディオだ。
血の魔剣<ブラッドイーター>から、血液と魔力が合わさった禍々しい一閃が来る!
「グラビウス――ジュピター!!」
だが間に合った。重力魔法と風魔法を纏わせたガイアの刃。
それで受け止めた瞬間、血液が周囲に飛来。
――血の雨となって、私達へ降り注がれる。
「今のを止めるかぁ……ダンジョンマスター!」
「ディオ……雨が降ってきた。早く終わらせよう」
私の言葉にディオは口元を歪ませた。
そして血の雨に濡れながら、ブラッドイーターを寧ろ構えた。
「おいおい……そりゃないだろ。アンタとはやり合いたいと思ってたんだ。前回は小娘に油断したが、今回はそういかねぇぞ」
「戦闘狂め……加減はできないぞ」
いい加減、こんなおっさん放っておいて欲しいな。
けど今回は始高天だ。そんな弱音は駄目か。
「ハッ!」
私は隙をついて蹴りを放つと、ディオは笑いながら身体を反らして躱す。
そして逆にカウンターが来た。
ブラッドイーターを私へ向けると、血の刃が一気に噴き出した。
「くっ!」
私は横へ身体を逸らし、側面から攻めようとした。
だがそこにはディオはいなかった。
「ひゃっは!!」
「上か!」
ディオが上からブラッドイーターを振り上げながら迫る。
それをニブルヘイムで受け止めた。
こうして私とディオの戦いが幕をあけた。
 




