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<15万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十一章:冥道樹林・ハーデス樹海
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冒険者+5:樹海のドラゴン

 どれぐらい歩いただろう。

 森の中とは時間感覚も狂わせるから怖いんだ。


 方向感覚も狂わせ、時間感覚も狂わせてくる。

 感覚――そう感覚だ。


 人の武器である感覚が狂わされると、その喪失感で一気に不安になる。

 戦場で武器を取り上げられた気分なのだろう。


 それを阻止する為、私は懐中時計で時間を計りながらエリアと進んでいた。


 一定の時間が過ぎれば、マスクの毒消し草を変える。

 魔物と戦闘すれば、終わった後に方向を間違えないように念入りに調べる。


 そうやりながら私達は、ダンジョンの中間辺りまで辿り着いていた。

 そこは川が流れており、空気も毒々しい感じはない。


 寧ろ透き通っている。

 ここならマスクを外せそうだ。


「少し休憩にしよう。――ハァ! マスクを外すと気持ちいいな」


「っ……はい! ふぅ……かなり神経を削るダンジョンですね、ここは」


 エリアは疲れた様に、近くの岩に腰を下ろしていた。

 ここまで来れば、流石の彼女でも疲れは出る。当たり前だ。


 エリアは額の汗を拭い、水筒の水を飲みながら一息付いていた。

 それを見て私も腰を下ろし、水筒の水を飲んだ。


――ハァァ。生き返る。


 マスクで顔の辺りが蒸れて大変だよ。

 けど毒を吸う訳にもいかないし、全く疲れるな。


 特にエリアの言う通り、神経を削りすぎた。 

 気疲れ、とでも良いのか。どちらにしろ、ペース配分も間違えないようにしないと。


 まだ分からないが、これでディオ達がいると話は変わる。

 疲れた状態での戦闘なんて、考えたくもない。 


 ただディオだけだったら、何とかなるかもしれない。

 話に聞けばレイの腕力で一撃ダウンしたと聞く。


 なら私の『+Level5』と魔剣、そしてエリアと協力すれば何とかなるだろう。


 問題はノアがいた場合がまずい。

 一度、私に負けたからか纏う雰囲気が変わっていた。


 きっともう油断してくれないだろう。

 アストライアの力も、いきなり全力で来るだろうな。


「エリア……再度確認だが、ここに始高天の者がいなければ引き上げる。その時、魔法陣があれば破壊するが」


「えぇ、分かってます。――またディオ達がいれば、人数によって捕縛すると」


「それも出来ればだな。ノアがいると面倒だが、始高天は全員が実力者だ。魔人化する者がいても話は変わる」


 魔物と融合した者――魔人。

 ラウン、ドーワと始高天の魔人と戦ってきたが、二人共強さが人のそれじゃなかった。


「魔人……厄介な存在ですね」


「本当にね……あの変態の話だと、このダンジョンの担当はディオと言っていた。奴は異常だ。魔人化できるのかも分からない……が、それでも奴なら私とエリアの二人なら勝てると思う」


「だと良いのですが……あの手の男は、一度負けると力に執着するタイプです。もし魔人化していれば、前回と同じにはならないと思います」


「それでもさ……魔人化していても、融合した魔物によっては弱点が分かる。そこま任せてくれ。――さて、そろそろ行こうか」


「えぇ、頼りにしてます。ルイス殿」


 それはこちらの台詞だよ、エリア。

 君が冷静に判断してくれたり、動いてくれるから私も安心できるんだ。


 クロノもそうだったな。

 一緒にダンジョンに潜った時、よく私の死角をカバーしてくれたっけ。


「なにか、嬉しそうですねルイス殿」


「ん? あぁ……昔を思い出していた。弟子達と一緒にダンジョンに潜っていた日々をね」


「皆さん、優秀ですから……私も負けない様に精進です!」


 おぉ、やる気があって良いね。

 若い子達が切磋琢磨しているのを見ると、おじさんは安心するよ。


 もう五年もしないで歳が40だよ。

 そうなったら身体のガタも騙せない。


 ダンジョンマスターの名も、誰か貰ってくれないかな。


 私はそんな事を思いながらマスクを付け、エリアと共に先に進むのだった。


♦♦♦♦


 休憩から間もなく一時間半は経つ筈だ。

 地図と記憶が正しければ、間もなく最奥だ。

 

「エリア。そろそろ最奥だ……いつもなら、この辺りで始高天の者がいる筈だ」


「分かりました。気を付けて進みましょう」


 私達は徐々に警戒心を強め、武器も身構えながら進んで行く。

 そして、ようやく最奥に到着した時だ。


 最奥の広い空間。その真ん中で立ち、何かをしている青髪の男がいた。


――あの姿、見覚えがある。


「あいつは……!」


「ディオ!!」


 私とエリアは飛び出す様に一斉に駆けだした。

 すると、その音で男が振り返る。


「なっ! お前等……! 何故、ここに!」


 その驚いた様子の男は顔に古代文字の刺青があった。

 間違いない。始高天の一人<狂神のディオ>だ。


「ディオ! 大人しく捕まりなさい!」


「それとノアはどこだ! 各ダンジョンに設置している魔法陣はなんだ!」


「……厄介だな。まだ未完成なんだが」


 そう言ってディオは自分の後ろを見た。

 私も覗き込む様にして見ると、そこには書きかけの魔法陣があった。


「どうやら間に合った様だ」


「舐めるなよダンジョンマスター……! お前等を黙らせれば良いだけだ!――ヒュイ!」


 ディオが指笛を鳴らした。

 その時だった。上空から私達を覆う影が現れた。


「上ですルイス殿!」 


「こいつは……!――下がれ!」


 私とエリアが後ろへ跳んだ瞬間、さっきまでの場所に巨大な鎌が振り落とされていた。


 そして姿を見せたのは、巨大な鎌が両腕となった大型魔物だ。


『ギャオォォォォォン!!』


「こ、これはドラゴン? いえ、カマキリ!?」


「違う! こいつは<ドラゴン・マンティス>だ! レベルは<67>はある危険度7のボス魔物だ!」


「その通りだ。我等、始高天が捕獲した個体でな。悪いが、魔法陣の完成まで相手してくれ」


 ディオはそう言って結界を自身の周囲に張る。

 そして、魔力を魔法陣へ込め始めた。


「させない!」


『ギャオォォォォォン!!』


 魔法陣完成を阻止しようとエリアは飛び出すが、ドラゴン・マンティスが行く手を阻む。


 どうやらコイツを倒さないと駄目らしい。


「やるぞエリア! まずはドラゴン・マンティスだ!」


「っ! 分かりました!」


 私達は互いに頷き、ガントレットブレードと剣を抜いた。

 そして同時にドラゴン・マンティスへ向かって行くのだった。

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