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<15万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十一章:冥道樹林・ハーデス樹海
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冒険者+5:おっさん樹海へ突入

 ダンジョンに入ってすぐに分かった。

 危険な匂い――毒虫や植物の匂いだ。


 勿論、それ以外の正常な匂いもあるが、半数以上の匂いは毒で間違いない。


 私はすぐにマスクを二人分取り出し、その呼吸器の中に毒消し草を入れた。

 そしてマスクを付けながら、もう一つをエリアへ渡した。


「エリア、これを付けろ。やはり毒の匂いがキツイ……何かあったのかも知れん」


「何か……って事は、やはりディオ達が?」


 エリアはマスクを付けながらそう言うが、私にだって確信はない。

 

「まだ分からない。ただこれだけ毒の匂いが強いって事は、毒を持つ魔物達が派手に動いてる可能性がある。気を付けて行こう。ここは方向感覚も狂いやすい」


「分かりました。私も用心します……何かあれば、互いに教え合いましょう」


「あぁ……何もないと良いが」


 ダンジョンがいつもと違い顔を見せる時、そんな時は碌な事がない。


 異変が起こっていると知らせているからだ。

 気のせいで済むこともあるが、始高天も目的にしている高難易度ダンジョンだ。


 多少なりとも何かあると思った方が良い。


 私は内心で警戒を高めながら、エリアと共にダンジョンの中へと入って行った。


♦♦♦♦


 そして暫くしたら、その洗礼を受ける事になったよ。

 私は空から羽の音が近くなるを感じ、素早く顔を上げた。


「上だエリア! ポイズンイーグルだ!」


「ポイズンイーグル!?」


「嘴とツメに毒のあるイーグルだ! 気を付けろ!」


 大の大人ぐらいはある巨大なイーグルが四羽。

 その嘴と爪からは毒が流れていて、奴等は私とエリア目掛けて急降下してきた。


 だが舐めるな。空中戦の敵にはもう慣れたよ。


「グラビウス――アースプライド!!」


『グエェ!?』


 目の前に巨大な重力場を私は放ち、ポイズンイーグルの群れは一斉に地面へ落ちてくる。


 空を飛んでいる連中は地面に落とすに限るな。

 

「今だエリア!」


「はい! 魔法刃・光――」


 私の合図でエリアが駆ける。

 そして間合いに入った瞬間、私はグラビウスを解除。

 

 そこで黄昏の異名を持つ、エリアの光剣が光った。


「横薙ぎ・残光の太刀!」


 エリアが横振りで剣を振った瞬間、確かに私は見た。

 光に愛されているとすら思わせる、彼女の太刀筋を。 


 残光が残る綺麗な太刀筋の跡には、身体が綺麗に一閃されたポイズンイーグルの死骸だけが残った。


 前まではドクリスの森でも苦戦していたのに。

 今では迷いなく動くとは、やはり彼女は大したものだ。


 あれだけの動きでマスクを付けているのに、汗一つ流していない。

 その実力、成長。流石は騎士団副団長だ。


「流石だなエリア……綺麗な太刀筋だった」


「いえ、ルイス殿が全ての魔物を落としてくれたからです。空中の魔物は厄介ですから……」


 全く、笑顔で謙遜が言えるとは大したものだ。

 でも安心した。このダンジョンの気に呑まれていない様で。


 こんな息苦しい、毒の樹海だ。

 普通ならばストレスでおかしくなるだろうが、彼女は冷静を保っている。


 その精神は私も見習いたいものだ。


「どうしましたか、ルイス殿? 何やらぼぉ~としてる様ですが?」


「いや、ドクリスの森の時に比べて成長したなって……あの時は擬態する魔物相手に四苦八苦していたからね」


「うふふ、なんか懐かしいですね。まだ数か月も経っていないのに」


「あぁ、私もそう思うよ。あの時はアレン君もいたが、彼も今では熱心に訓練しているし、大したものだ」


 アレン君はドクリスの森以降、訓練は人一倍しているし、私のダンジョンの講義も真剣に聞いてくれて嬉しいものがある。


「アレンもドクリスの森は良い刺激になった様です。他の騎士達よりも訓練に励んでいますし、まだ仮決定ですが今度小隊を任せるって話も出てるんです」


「おぉ、昇給だね。きっと喜ぶよ」


 彼、褒められるとすっごく喜んで、その分動くタイプだからね。

 きっと言えば、もっと頑張るんだろうな。


「……さて、そろそろ行こうか」


「はい。――っ! 上です!」


 先へ行こうと思ったが、その瞬間エリアは声を出しながら私の隣へ戻った。

 そして私も見上げると、そこには大きな蝶が三匹もいた。


 羽ばたく度に毒鱗粉を撒く、この蝶――パープルバタフライ。

 毒性は微毒とはいえ油断はできないが、私は少し安心した。


「大丈夫だ。パープルバタフライなら、これで何とかなる!」


 エリアへそう言って、自身の道具袋を焦る。

 この連中は単純だ。戦わずして突破できる方法があるんだ。


「良し、これさえあれば……!」


「それは……《《リンゴ》》?」


 エリアが意外そうにしているが、私がリンゴを翳すとパープルバタフライ達は嬉しそうに羽をバタバタしている。


 そして道の脇にリンゴを転がすと、パープルバタフライ達はリンゴに群がっていった。


「連中は果物が好きなんだ。だから、リンゴとかあれば戦わずに済む」


 出会う魔物全てと戦ってたらきりがないからね。

 こうやって、色々と知恵を使うのも冒険者さ。


「な、成程……冒険者の知恵ですね!」

 

 エリアは感心した様で、嬉しそうな笑顔を浮かべている。

 なんか弟子達を思い出すなぁ。こうやって、知らない事を覚える時は嬉しそうにしてたっけ。


「……さぁ先を急ごう。リンゴもそんなに無いから、催促されたら大変だ」


「うふふ、そうですね」


 私とエリアはそう言って、笑いながら先を進んで行くのだった。

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