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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十一章:冥道樹林・ハーデス樹海
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冒険者+5:おっさん樹海へ行く

 あの下着ドロボー騒動兼、ノア脱獄から三日が経った。

 私はノア達の手掛かりを追う為、馬車に乗ってとある樹海を目指していた。


――危険度8ダンジョン:冥道樹林めいどうじゅりん・ハーデス樹海。


 毒系魔物や植物系魔物の宝庫。

 それ以外にも怪鳥などの魔物も多くいる危険地帯だ。


 その驚異的な森の生命力のせいで、日が殆ど差さない暗き森。

 まるで冥界の森の様だと、そんな事を誰かが言って名付けられたダンジョン。


 本音を言えば行きたくない。おっさんには荷が重いが、ノアが相手だとなぁ。

 彼も強いがアストライアも厄介だし、もう諦めた。


 それに今回も私一人じゃない。

 一人だけが同行者がいる。そう彼女だ――


「エリア、良かったのかい? 今回は私と二人っきりだし、何より今回も危険なダンジョンだぞ?」


「分かっています。寧ろ、ルイス殿の迷惑にならないかが心配です」


 そう私の隣には武装したエリアがいた。

 別に私が誘った訳じゃなく、その向かう場所にディオがいる可能性がある。

 それを聞いた彼女が、同行を進言してきたんだ。


「いや迷惑じゃない。ツンドラマウンテンを乗り越えた君なら大丈夫なだし、頼りにしているよ。ただ、危険なのには変わらなければ、始高天絡みだと私が巻き込んだ気がしてね……」


「そ、そんな! そんな事はありません! ルイス殿に責任など……! 寧ろ私達騎士団の不甲斐なさに嘆くばかりです」


 そう言ってエリアは、思いつめた表情を浮かべながら下を向いてしまう。

 責任感が強い彼女だ。きっとノアが相手だろうが、自身の責任に感じてしまうんだろうな。


 だが今回は仕方ない。本当に綺麗にやられた感があるよ。


「エリア、今回は仕方ない。まさか下着ドロボーの騒動が彼等の策なんて思う訳がない。私だって不甲斐ないよ」


「……下着ドロボーですか」


 なんだろう。エリアの顔が赤くなったぞ。

 あぁそうか。人前で下着を奪われてるからね。そりゃ色々と思う筈だ。


「あぁ……気にするなとは流石に言えないが、あまり深く考えない方が良い。あの変態の事で意識を持っていかれるのは私でも悔しく感じるからね」


 フドシと言ったか、あの変態。

 本当に始高天の一員だったのかも怪しいが、実力は確かにあった。


 けれど、やはりあんな変態にしてやられたのが悔しすぎる。

 思い出すだけでも腹立たしい。


 私はそれを思い出す度、奴の笑い声が脳裏に過ってくるし。

 本当に焼き付いて離れないんだよな。


 きっとエリアも、そんな悔しさがあるのだろう。

 私はそう思ったが、何やらエリアはもじもじしていた。


「そ、その……そうではなく。あの……ルイス殿は見たのですか? わ、私の下着……」


「下着?――あっ」


 彼女の言葉に反応して、私の記憶が呼び覚まされた。

 そして脳裏に浮かぶ、変態が持っていた下着の色や形が思い出されてしまった。


「あぁ……その……すまない」

 

「い、いえ! 良いんです!! し、仕方ないです……から」


 仕方ないって言っても、そのね。

 そんな顔を赤くされると、こっちも意識してしまうな。

 

 多分、盗んだ順番的に見てエリアの下着は――赤のレースの筈だ。

 それを、こんな露出の多い鎧に着てると思うと、なんだろう。なんか凄い。


「る、ルイス殿……見過ぎですぅ」


「っ!! す、すまない……!!」


 馬鹿か私は。何を凝視している。本当に変態じゃないか。

 変態は伝染しない。落ち着け私。


 こうして場所の中で私とエリアは、互いに顔を真っ赤にしながら下を向き続けるのだった。


 ダンジョンに辿り着くまで。ずっと。

 あぁ、早く着いてくれ。


♦♦♦♦


 馬車に揺られて数時間後、私達はあの気まずい空間から脱し、ダンジョンの前に降り立った。

 

 長かった。本当に長かった。

 途中、何故かエリアが身体を寄せてきた時は勘違いしそうになったが、理性が勝ったぞ。


――ってそんな事をはどうでも良いんだ。問題はこのダンジョン。


「着いた……ここだ」


「ここが危険度8、冥道樹林めいどうじゅりん・ハーデス樹海……!」


 私とエリアは思わず入口で足を止めてしまう。

 それだけ入口からして威圧感や負の空気が凄い。


 既に毒系の匂いも僅かにするし、毒消しが重宝するぞこれは。


 全く、これに比べたらドクリスの森なんて対処できる分、まだ可愛いものだ。

 威圧感も全く違う。ここは入口から既に毒々しい。


 随分と久し振りに来たからか、私も気圧されそうになるな。


『~~♪』


 こんな時でも元気なのはエミック、お前ぐらいだよ。

 なんでご機嫌なんだ。エリアがいるからか、それとも肌に合うのか?


 そういえばコイツ、何故かエリアの下着とか瞬時に判断して咥えていたな。

 やだなぁ相棒が、変態っぽいって。


――いやいやそうじゃない。下着から離れろ。あほか私は。


「エリア……ここは毒系が多い。毒消し草で全て対処できるが、いつでも接種できる様にしておくんだ」


「はい。言われた通り準備は大丈夫です」


 そう言って彼女は剣を抜き、盾も持ち直していた。

 

「それと、ここにディオ達がいるかは分からない。だから今回は、偵察の様なものだと思ってくれ。危険だと思ったら、すぐに帰還するよ。良いね?」


「分かりました。今回も判断はルイス殿にお任せ致します!」


 うん、肩に力も入ってないし大丈夫そうだ。

 気に病んで空回りとかは大丈夫そうだし、まずは安心だ。


「それじゃ、行くよ?」


「えぇ、参りましょう!」


 そう言って互いに頷いた私達は、周囲を警戒しながら樹海へと入って行くのだった。





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