表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<15万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十章:王都・下着奪還戦
82/148

ノア復活

 何が起きたか、一瞬分からなかった。

 ただ騎士団本部から光の柱が生えたのは分かった。


 そして、すぐに正体も分かった。

 光が消えた時、そこに彼等がいたから。


「ノア!!」


「やはりいましたか、ダンジョンマスター」


 私が彼へ叫んだ瞬間、ノアは目の前に一瞬にして現れた。

 何てことだ。左右にはディオとグリムもいるじゃないか。


 私は身構えて、すぐに『+Level5』をノアを対象にして発動させる。

 これで私はレベルを彼よりも上回った。


 今は魔剣もある。あの時以上に戦える筈だ。

 だが私と違い、ノアは初めて出会った時と同じく小さく微笑んでいた。


「流石に貴方と今、再戦する気はありませんよ。――それよりもフドシ。よくやってくれましたね。何やら、騒々しいですが」


「フッ、手段は我の好きにすると言ったろ。これで約束は果たしたぞ、ノアよ」


「えぇ、私も約束は果たしましょう。貴方は自由だ。好きにしなさい」


 そう言ってノアと変態は互いに頷きあっているが、まさか本当に始高天の策だったとは。


 私も驚き過ぎて、今一冷静になれていない。

 だが身体は――本能は戦いに備えろと言っている。


 私は身構えた。まだ半端な気持ちだが、それでも必死に。

 それを見据えたのか、ノアはまた私へ視線を向けた。


「言ったでしょう。貴方と戦う気はありません。今はそれよりも――来い! アストライア!!」


「あっ――!」


 私は止めようとしたが遅かった。

 ノアが腕を掲げた瞬間、その腕が光った。


 そして、光が晴れた時には聖槍剣――アストライアが握られていた。


「うそ……封印していたはず!」


 レイも驚愕した表情を見せていた。

 まさか、一瞬で奪われるとは彼女も思ってなかったんだ。


 あのレイの魔法技術すらも上回るのか、ノアとその聖槍剣は。


「逃さん!! 光翔波(こうしょうは)!!」


「闇遁・抹消斬!!」


「最上位魔法――薇尾蘭手(びおらんて)!!」


 私より先に動いたのはエリア達だった。

 光・闇の斬撃。そして魔法を使った触手攻撃をノアへ放ったが、それじゃ駄目だ。


 なんせ、彼のスキルは――!


「相変わらず、貴方の弟子は礼儀がなっていない様ですね。しかし無意味。――私のスキル<守護領域>は、私のレベル以下の攻撃を全て防ぐ。無駄な足掻きです」


 そうだ。そのスキルがあるせいで、レベル80以下の攻撃は無効化される。

 やはり私が行くしかない!


「ノア!!」


 私は魔剣ニブルヘイムとガイアを解放し、彼へと迫った。

 その時、ディオとグリムが前に出ようとしていたが、それをノアが止めた。


 それだけ余裕という事か。そりゃそうだろうな。


「ノア!! 牢に戻れ!!」


「断りますよ、ダンジョンマスター!! アストライアよ!!」


 私のブレードとノアのアストライアがぶつかった。

 周囲に凄い魔力の衝撃波が発生したが、やはりアストライアは強力だ。


 態勢が悪いのもあって、私は押されてしまった。

 だが受け身をとって再び屋根の上に着地する。

 

「それは魔剣ガイアですね。つまりドーワは貴方に敗れたのですか。魔人を下すとは。――しかし、私はずっと考えていた。今、アストライアの力のみならば、貴方を押せた。だが!」


 そう言ってノアは、今度は接近してアストライアを振り上げ、そのまま下ろしてきた。


 させるかと、私は両ブレードでそれを弾いた。

 そのままノアは吹き飛んだが、その表情は笑っていた。


 何を考えているんだ。私は思わず息を呑んだ。


「やはり……純粋な力だと私ですら負ける。やはりレベルか。個人のレベルに反応しているのですか。ねぇダンジョンマスター?」


「好きに解釈していろ! お前を逃がす訳にはいかない!」


 ここで逃がせば、次は何をするか分からない。

 ただ絶対に碌な事じゃない筈だ。


「戦う気はこれ以上はありませんよ。――フドシ!」


「――プッ!」


――イタッ! あの変態野郎、口から針を吹きやがった。


 毒ならマズイ。すぐに針を抜かねば。


「大丈夫ですよ、毒はありません。しかし、それは貰う! 《《貴方の血液を》》!!」


「イッ!?」


 私の腕に刺さった針は、腕を翳すノアの腕に収まっていた。

 ノアめ、私が針を抜くよりも先に針を回収したか。


 しかし目的はなんだ。


「貴方は興味深いんですよダンジョンマスター! 創世の鍵として、貴方の血は貰う!!――さぁ! もうここに用はない!! 空間移動!!」


 ノア達が光に包まれた。マズイ、絶対に止めるぞ!


「ニブルヘイム――魔氷雪!!」


 私がブレードを振るい、吹雪の様に氷柱がノア達を襲う。

 しかし、アストライアが光ると氷柱は目の前で消滅してしまった。


 くそっ。厄介過ぎるぞ。あの聖槍剣!!

 相変わらず何て魔力だ。こっちも魔剣なんだぞ。


「さらばです。ルイス・ムーリミット……次に貴方と会う時があるならば、その時は決着です」


「待てノア! 目的なんだ!! お前は何をしたいんだ!!」


「創世……それだけです。それ以外の言葉はありません。ではさらばだ」


 そう言ってノア達は一瞬だけ光ると、その姿を消してしまった。

 何てことだ。ノア達が脱走した。


 けれど自覚がまだ出来ていない。

 くだらない下着ドロボーが、まさか始高天だったとは。


「まずい……ノアやディオ達を逃してしまった!」


 エリアも驚愕した表情で天を見上げている。

 ただ手に、下着が握られているから今一緊張感がない。


 そう下着。下着だ。

 すべては下着ドロボーに踊らされた。


「ありえない……下着ドロボーは囮だったのか!」


「フハハハハハ!! 人を外見だけで判断するなと言う事だ!」


 この変態め。捕まってる癖に良く喋る。

――って待てよ。


「……おい。なんでお前はいるんだ? 始高天のならノアと一緒に逃げるだろ」


「いや既に我は始高天ではない。因みに魔人でもないぞ。さっきノアも話していたろ。我はこれで自由だと。我はもう始高天ではない」


 そうかそうか。つまり――


「絶対逃がすな!! この変態が全てだ!!」


――おおぉぉぉ!!


 私が叫ぶと同時に、木々に拘束されている変態――フドシにエリアを始め、色んな人々が群がっていった。


「ギャアァァァァ!! 止めろぉ!! 下着は……返さん!!」


 違う! 下着は良い!

 ノアの目的と居場所を教えろ!!


 こうして私の騒がしい一日は、ノアの脱走。

――そして下着ドロボーの元始高天の捕縛という決着で終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ