冒険者+5:おっさん、下着ドロボー探しする
一体、何がどうなっているんだ。
王都に帰ったら『下着ドロボー』騒ぎで偉い事になってるぞ。
取り敢えずエリアの下へ行こう。
新聞を見る限り、彼女が最近の被害者っぽい。
私はレイと共に騎士団本部へ向かった。
そして、そこでは待っていたのは殺気めいた騎士達(女性騎士限定)だった。
「エ、エリア……いるか?」
恐る恐るだが、騎士団本部へ入ってみた。
本当なら入りたくない。こんな殺気めいた騎士団本部へ。
「ッ! ルイス殿!? あぁ……やっと帰って来てくれたんですね!」
エリアは私を見て安心した様で殺気を消してくれた。
だが彼女の姿は相変わらず露出が多い。その姿で下着ドロボーって言われてもなぁ。
取り敢えず、聞いてみよう。
「あぁ、少しエルフの国にね。ところで何事なんだい? 聞いた話だと下着ドロボーが出たって――」
「そうなんです!! 今王都中の女性が被害を受けているんです!! しかも、とうとう私達騎士団まで……!」
そう言ってエリアは悔しそうな、恥ずかしそうな顔を浮かべている。
しかし、凄い奴だな。まさか天下の騎士団本部に乗り込んで下着を奪うとは。
「話は本当だったのか……しかし、凄い奴だな。まさか騎士団本部に乗り込んで下着を奪うなんて」
「あっ……いえ、違うんです。その……《《穿いている状態》》で盗まれるんです。日常生活の中でと言えば良いのか」
「えっ……!」
それってかなり無理があるんじゃないか!?
日常生活の中で盗むって、どうやって奪ってるんだよ。
「ちょっ……あまり聞きずらいが、詳しく聞かせてくれ」
「は、はいぃ……!」
エリアは顔を真っ赤にしながら話してくれた。
彼女達は下着ドロボーの騒ぎが起こると、悪即斬と言わんばかりに王都の警備に出たらしい。
そして下着ドロボーを発見し、いざ対峙した。
――瞬間、穿いていた下着を既に盗まれていたとの事だ。
成程、余計分からない。
話を聞く限り、エリアはともかく他の騎士は鎧を着ている。
なのに盗まれたと。成程、やはり分からない。
「……そんな馬鹿な」
「本当なんです!! 信じてください!! 本当に盗まれたんです!!」
別にそこは疑ってはいない。
あんな大々的に一面を飾ったんだ。そりゃ盗まれたんだろうね。
「そうです! 鎧を着ていたのに……破れもせず、あの変態の手に下着が……!」
「絶対にスキルですよ! 下着ドロボーに特化したふざけたスキルなんです!!」
他の女性騎士も怒りを露わにしているが、まさかそんな。
そんな馬鹿な事の為にスキルを使う人間がいるのか?
「そうだグランは? ここまで被害があるんだ、こうなったら騎士の全勢力を使って――」
「残念ながら団長は城で姫様の護衛です。姫の下着を盗まれる可能性があるからと……国王の勅命で」
まさかそんな。そんな馬鹿な事に騎士団の最高戦力を投入する王がいるのか。
だが実際、グランがいない以上、そう言う事だろうな。
「えっと……念の為、聞くけど。犯人は捕まっては――」
「いません!! 私達の下着も帰って来てません!!」
でしょうね。そりゃそうだ。
捕まってたら、こんな修羅の国に王都はなっていない。
しかし王都の騎士団や冒険者相手に、よく逃げられるな。
まさか隠密系か? それなら話は早いぞ。
「師匠、小太郎に聞いてみよう?」
どうやらレイも同じ考えに至った様だ。
既に小太郎は退院している筈だし、こっちから連絡を取れば来てくれるだろう。
「そうだ! あと十六夜にも連絡だ。彼女は裏の人間だ。きっと何か知っているかも知れない!」
「裏……ですか。いえ、こうなったら背に腹は代えられません!」
エリアの許可も取れた。
よし早速、手紙を書こう。
これを小太郎に頼んで届けて貰うんだ。
♦♦♦♦
それから数時間後、来てくれた小太郎に事情を話すと、小太郎はすぐに承諾してくれた。
どうやら小太郎も犯人に興味があるらしい。
隠密ギルドも動いているのに、捕まらない能力。
「恐らく始高天の可能性も……」
「それはないだろ」
下着ドロボーで世界の創世はできないだろ。
実力はあるらしいが、絶対にそれはない。
私は苦笑しながらも小太郎へ、十六夜宛の手紙を渡すと彼はすぐに言ってくれた。
――そして僅か一時間ぐらいで小太郎は帰ってきた。
「師匠、裏ギルド――十六夜からの手紙です」
「もう来たのか! 内容は――」
私はすぐに手紙を開けると、周りも左右から覗き込んでくる。
いや必死過ぎるだろ。――いやいやそんな事は後回しだ。
きっと十六夜の事だから、何か取引をしてくるに違いない。
あんな事があったとはいえ、彼女は裏ギルドの長だ。
私は息を呑みながら、手紙を読んだ。
――うん。一枚目は私への想いだな。寂しいとか、一緒の時間があればとか。
少し恥ずかしかったが、隣にいるエリアからの鋭い視線が怖い。
私はすぐに二枚目を取り出し、それを読んだ。
『単刀直入に申しますと、情報はありません。犯人の身柄も追っている状況です』
「なんだって……まさか裏ギルドからも逃げているのか!?」
「なんて隠密力……!」
「ヘンタイ、侮り難し」
「見事な隠密よ」
エリア達騎士も流石に驚いてるか。
レイや小太郎も流石に表情が鋭くなっている。
それ程の能力を持つという相手なのか。
しかし妙だな。まさか裏ギルドも追っているとは。
知らないなら知らないで良い筈だが、追っていると書かれている。
なら行方を捜しているのだろう。まさか、下着ドロボーは囮で、もっと凄いのを盗んでいるのか?
「続きに何か書いてないか……!」
私は嫌な予感を抱き、続きをすぐに呼んだ。
すると――
『――何故ならな、私も盗まれたからです。最初に見せるのは貴方様と決めてましたが、こんな不浄な女お許しください。ルイス様』
――あぁ、十六夜。君もなのか。
どうやら下着ドロボーは無差別犯の様だ。




