冒険者+5:おっさん帰還する
いやぁ参ったな。思ったより疲労が溜まっていたみたいだ。
「師匠! 大丈夫ですか!?」
「センセイ! 遺産はレイにぃ~!」
「あぁ、大丈夫だクロノ。ただ、王都に着くまで寝かせてくれ。あとレイ、後で説教だぞ」
今、私は帰路の馬車で、クロノ達に看病されながら横になっていた。
あのドーワとの闘いから実に二日は経ち、つまりエルフの国で二日も世話になったんだ。
いや私は、ずっと眠ってたらしい。
少し起きた気もするが、またすぐに眠ったとルナリアやクロノ達から聞いている。
ルナリアや女王様達には世話になったよ。
ドーワもエルフの国で拘束される事になったが、ハーフエルフだって知って女王様も何か思う事があるんだろう。
少し暗くも、考える様な表情をしていた。
きっと大丈夫。あの方なら報復ではなく、前に進む為の決断をしてくれる筈だ。
取り敢えず、まぁこれで良かったさ。
始高天の戦力を削れたし、何やら魔法陣も破壊した。
少しでも始高天の思惑を乱す事が出来ればそれで良い。
ベヒーを始め、大した怪我人もいなかったし、無事に帰れて安心だ。
「しかし<魔人>か……厄介な存在だな」
「えぇ、まさか魔物と融合するだけで、あれだけの力になるとは……ハッキリ言って驚きです」
「でもリスクもある……絶対、寿命はへる」
「まっ、どうなろうが別に良いさ! 次に魔人に会ったら、オレがぶっ倒してやるぜセンセイ!」
「アハハ……期待してるよ」
頼もしい弟子達を持ったものだ。
私は内心で本当に引退が近い事を感じながら、再び眠りについた。
王都まであと最低でも1日はある。
ゆっくりしよう。帰ってもちょっと休もう。
たまには休まないと、人は本当に駄目になる。
頑張り過ぎは毒とは、よく言ったものだ。
まぁどうせ、帰っても急ぎの仕事はない筈だ。
依頼も少し断る事にしよう。
そうだ、それが良い。どうせ王都で問題なんて起こってる訳じゃないんだから。
♦♦♦♦
「下着ドロボー!! 出てこい!!」
「見つけ出して磔にしてやる!!!」
あれぇ、なんか王都に帰ったらおかしな事になってるぞ。
女性冒険者や一般人まで巻き込んで、街中が大騒ぎじゃないか。
「な、なんだこれは……ちょっと、新聞一枚!」
「はいはい」
私達は唖然とする中、私は近くの新聞屋から新聞を買って開いてみる。
クロノ達も新聞を横から覗き込んできたが、それよりも問題は一面だ。
『王都最大の事件!? 下着ドロボー現る!!』
「下着ドロボー!?」
「ど、どういう事ですか? この騒ぎは全部、下着ドロボーでこうなってるんですか!?」
「そう……みたいだな」
私とクロノは互いに顔を見合わせるが、互いに困惑の表情を浮かべていた。
まさか、たかが下着ドロボーで大騒ぎしているのか?
よく見たら冒険者以外に騎士達の姿も見えるぞ。
おいおい、どうなってるんだ。
「物好きだな。パンツ盗んで何が良いんだよ?」
「マニアには売れる」
ミアとレイは少し警戒しなさい。
あとレイ、本当に売ったりしてないよな?
してたら私は泣くぞ。
「と、取り敢えず師匠、すみません。私は一旦ギルドに戻ります!」
「オレも一旦戻るぜ、センセイ」
「レイは師匠と一緒」
そう言ってレイ以外はそそくさとギルドへと戻っていった。
確かに、事態を把握するのが先か。
もしかしたら下着ドロボーはついでで、何かとんでもない物を盗んだドロボーの可能性もある。
私は再度新聞を開き、情報収集を始めた時だった。
「師匠……ここ」
レイが新聞のある場所を指差した。
「ん?――何々……『ついに被害が! 王国騎士団副団長・エリア氏も下着奪われる』……えっ?」
エリア、何があったんだ。
 




