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<15万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第九章:エルフの国ユグドラシル
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冒険者+5:訪問者

 あの十六夜の依頼から二週間が経った。

 私は相変わらず、王都のギルドの依頼や騎士団への指導を行っている。


 今だって、水魔法を使いながらベヒーの背中を洗ってあげたり、エミックの箱を磨いてあげたところだ。


 つまり、私にとって普通の生活をしているという事さ。


 だがそれだけじゃない。

 たまにだが、ノアの所へ何度も顔を出している。


 彼からの態度は相変わらずだが、少し口数が増えた気がした。

 そして、彼はこんな事を言っていた。


『創世を止めたいならば、ダンジョンを巡る事をオススメ致しますよ? まぁ場所も理由も教えませんけどね』


 そう言って彼は笑った。

 どこか私が困っているのを楽しんでいる節がある。


 全く本当に困ったものだよ。

 ダンジョンだけで幾つあると思っているんだ。


 まぁノアの話は置いとくとして、後は十六夜との関係だ。

 ハッキリ言って返事はしていない。


 だがあれ以来、彼女から贈り物や手紙が来るようになった。

 内容はあれだ。所謂、恋文みたいなものだな。


 実を言えば、未だに彼女が本気なのかは半信半疑だ。

 あんなダンジョンで、濃い経験に遭っても、互いに関係が薄い気がするからね。


 でも手紙の内容には彼女からの気持ちも伝わるし、贈り物も冒険者にとって嬉しい物ばかりだ。


 だから想い自体は全てが嘘じゃないと思う。

 そんな彼女へ、私も手紙と贈り物を送っている。


 内容はおっさんだから、情けないが日常や依頼でダンジョンに行った時の話だ。

 ただ贈り物は比較的、良い物を送っている。


 ダンジョンにある綺麗な結晶や、魔物の珍しい素材とかね。

 まぁ返事で彼女も喜んでいるみたいだし、どうやら私のセンスもまだ大丈夫な様だ。


 そんな事を思いながら私は今、拠点でのんびりしていた。

 ベヒーの洗浄は疲れるし、エミックも意外と手間が掛かる。


 だからひと段落して、今は拠点の冷凍保管庫から果実水を取り出し、飲んでいる所だ。


「……ハァァァ。終わったぁ……!」


 おっさん臭く、思わず長い息が出るが許してくれ。

 最近は疲れが取れないんだ。


 ツンドラマウンテン・五大ギルド抗争・幽霊船。

 並みの冒険者なら、一回は死んでもおかしくないダンジョンを攻略しているんだ。


 しかも短い期間で。

 だから疲れが取れず、今日は好きな物を食べて、ゆっくり風呂に浸かって眠ろう。

 

 私はそう決めて立ち上がった。

 そうと決まれば、まずは買い出しだ。


『~~♪』


 エミックも買い出しに付いてくる気なのだろう。

 嬉しそうに飛び跳ねている。


「全く、お前は子供だな」


 私は思わず笑いながら扉の前へ立ち、エミックを手招きした。

 

『~~!』


 するとエミックは嬉しそうに私の腰に飛び込んでくる。

 おい、ちょっと勢いが――私はそう思ったが、時すでに遅し。


「うおっ!?」


 私は腰にエミックの体当たりを受ける形となり、そのまま拠点を開きながら倒れてしまった。


「えっ! きゃっ――!」


「えっ、まずい!?」


 だがそれだけじゃない。私の拠点の前に、誰か他の人がいたんだ。

 声からして女性だが、駄目だ防げない。


 私はそのまま、彼女を押し倒す形で倒れてしまった。


「いた……あっ! 大丈夫ですか!?」


 私は膝などが痛んだが、それよりも倒してしまった人だ。

 すぐに私は彼女の安否を心配した。

――のだが、私が押し倒した相手は見覚えのある女性だった。


「あ、あれ……あなたは?」

 

 目の前にいる女性は、普通の人ではなかった様だ。

 神秘的な金の長髪に、特徴的な長い耳――エルフ族だった。


 しかも、確か彼女は――


「……け、けだもの」


 顔を真っ赤にし、私から顔を逸らすエルフ族の彼女は、魔葬砦で出会ったエルフ族――ルナリアだった。


 しかも彼女だけじゃない。

 よく見ると、周りにも彼女の仲間らしきエルフ族が数人いた。

 

 私達の様子に彼女等も顔を真っ赤にしている。


「え、えっと……何かありましたか?」


「こ、この状態で話を始めるなんて……けだもの」


 あっ、すみません。

 あとエミック、今日の予定はなしだ。絶対に厄介事だぞこれは。

 

 私はそう思いながら立ち上がり、彼女達を拠点へ案内するのだった。

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