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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第八章:玲瓏呪域・死霊廻船
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冒険者+5:海へ

「さて……準備は、こんなもので良いか。久し振りの海のダンジョンだ」


 あの騒動から三日後、私は今、王都の拠点でダンジョン攻略の準備をしていた。

 十六夜からの依頼――危険度9:玲瓏呪域れいろうじゅいき死霊廻船しりょうかいせんへの同行だ。


 当然ながらベヒーは連れいけないから、クロノ達に世話を頼んだ。

 だから今回もエミックと共に出発だ。


 少し寂しそうな瞳で見てくるベヒーだが、流石に海上は駄目だ。

 今回はそこまで遠出じゃないが、場所が場所なんだ。

 

 あとゴースト系の魔物もいるだろうし、エルフ族のせいすい等、聖なる道具も忘れない様にしないと。

 

 危険度9のダンジョンだ。念には念を入れないとな。

 必要な物はスキルで合成したし、エミックにしまってもらった。


 これで準備は完了だ。


「よし、行くか……!」


 私はそう呟いて拠点の扉を開けると、そこには二人の女性が待っていてくれた。


「お待ちしておりました。ダンジョンマスター様」


 一人は当然、十六夜だ。

 

 彼女は相変わらず露出の多い和服姿だ。

 だが今回は旅だからと、道具入れを始め、所々に装備の収納する袋を装備していた。


 そんな彼女へ私は信頼構築の為、手を差し出した。


「宜しく頼むよ十六夜」


「こちらこそ、宜しくお願い致します」


 そう言って十六夜は優しい笑みで私と握手をするが、私自身、本音を言えば少し彼女が苦手だ。


 どうも本心を隠している感が強くて、今一信用できないから怖いな。

 まぁ裏ギルドとはいえ、そこまで悪い人間でもないと思うが。


「おや先生。あたしには挨拶はなしかい?」


「そんな訳ないだろ。今回はありがとう。頼むよ、エミリア」


 そして、もう一人――私の弟子。

 プラチナ級ギルド『蒼海の水龍』女海賊ギルド船長――エミリア・シードランだ。


 海のダンジョンと聞いて、真っ先に頼もうと決めていたぐらい、それだけ彼女は海に強い。


「しかし先生も相変わらずだね。無茶な依頼ばっかりだ」


 私もそう思うよ。

 レベル5上がるだけのスキルで、よくここまでやって来たものだ。


「すまない。だが海に関しては頼れるのがエミリアだけなんだ……頼めないか?」


「断るなら最初から来てないさ! 任せな! あたしだって、先生と危険度10ダンジョンに潜って生き残ってんだ。危険度9の幽霊船なんて余裕だよ!」


 エミリアはそういって満面の笑みを見せてくれる。

 本当に頼りになるよ。


「では、そろそろ……馬車はこちらで用意させて頂いておりますので」


「分かった。じゃあ行こうか」


 私はそう言って彼女らと共に、十六夜の用意した馬車に乗って海へと向かうのだった。


♦♦♦♦


 馬車に乗って海へ向かう道中、私は十六夜へ気になる事を聞いてみた。


「十六夜……同行者として聞きたい。今回のダンジョンへの目的は何なんだい? あそこは特に、これといった素材はない筈だ」


「……目的は素材ではございません。宝……《《宝石》》です。とある筋から、そのダンジョンに宝があると聞きましたので」


「おいおい宝って……確かに聞くけどね。でも確証もない話だし、幾らなんでもそんな理由で危険度9のダンジョンに行くのは自殺行為さ」


 エミリアの言葉に、私も頷いた。

 確かにこの手のダンジョンには宝があると聞くが、所詮は噂程度の話だ。

 

 何より、彼女の立場としてもおかしい。


「それに君は裏ギルドの長の一人じゃないか。私に依頼だけならともかく、君が同行する理由はないと思うが?」


「それでも……私じゃないと駄目なのです。私じゃないと……!」


 そう言う十六夜の表情には覚悟が宿っていた。

 こうなった人間は聞かないなと、私はエミリアの方を見ると彼女も同じ様な考えなのか頷いていた。


――しかし宝石か。どうも理由が弱いなぁ。


 冒険者として感覚がズレている自覚もある。

 だがそれにしても弱い。

 

 色々と集中するしかないか。

 私だって何回も行ったダンジョンじゃないし、だから念入りに準備もしてきた。


 あとの不安材料は、やはり十六夜――彼女だな。

 悪いことを考えているとも思えないが、取り敢えずは気を配るか。


 私は警戒――とまでは言わないが、彼女に意識を向けながら海へと向かうのだった。


♦♦♦♦


 王都から半日、海へ辿り着いた私達。

 そこは港町ではなく、海で活動する者達が船を一時的に置く場所だ。

 

 そして、そこからはエミリアが仕切ってくれた。


「さぁこっちだよ、お二人さん! あたしの所の海賊船なら幽霊船だろうが追いつくよ」


 事前にここに待機する様に動いてくれたと、エミリアからは事前に聞いている。

 船があるのは本当に助かるよ。


 人によっては、場所を聞いたら嫌だと言って出してくれない人もいるからね。


「さぁこれだよ! これがあたしのエミリア・リヴァイア号だ!」


「おぉ……凄いな! まさかガリオン船か!?」


 そこにあったのは巨大な船だった。

 帆には彼女のギルドのマークが刻まれていて、それ以外も箔が付くためか豪華な装飾が多い。


 「これは大したものですね」


 これには流石の十六夜も驚いた様子だ。

 実際、これだけの船を動かせる人員もいるって事だからね。


 エミリア――最低限の物だけ持って私の下を去ったのに、数年でこれとは本当に誇りだよ。


「ふふん! 凄いだろ! さぁ速く乗りな! 乗組員にも紹介しないと」


 既に話は通していたのだろう。

 船からこちらを見下ろしながら手を振っている人達がいる。


「元気な人達が多いな」


「あぁ、あたしの自慢の仲間さ。まぁ話は事前に通してるから、すぐに出発できるよ」


「本当に助かるよエミリア……それにこんな船まで。本当に自慢の弟子だよ」


「や、やめてくれよ先生!? 恥ずかしいって……この船だって先生からの仕送りのお陰で手に入ったんだ。こっちこそ本当に助かってるよ」


 そう言ってエミリアは、顔を赤くして照れた表情を見せた。

 昔からそうだったな。照れ屋だったエミリアが、今はこんな一大ギルドを作るなんて感傷深いよ。


 それに仕送りって多分、私が送っていたダンジョンや魔物の素材だな。

 それが助けになったなら私だって嬉しいさ。


「本当に立派になって……」


「も、もうそう言うのは良いからさ! 良いから乗ってくれよ! とっとと出航するよ!」


 照れたエミリアに押される様に私達は彼女の船へ入ると、彼女の仲間たちに歓迎された。


 そして、彼女の指揮の下、私達は目的のダンジョンの海域へと向かうのだった。




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