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<15万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第七章:五大ギルド・白帝の聖界天
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冒険者+5:ノアの目的

「それでは……私は下がりますが、何かあればすぐに」


「あぁ、ありがとうエリア」


 エリアは約束通り、私をノアと二人にしてくれた。

 彼女が通路の奥に去ったのを見送った後、私はノアの方へ向き直す。


「……ノア」


「話……ではなく、聞きたい事がある。違いますか?」


 やはり無駄は嫌いなようだ。

 彼はガリアン平原で出会ったときと変わらず、冷たい瞳で私を見ている。


 いや臆するな。しっかり聞く事を聞くんだ。


「都市パンドラでグリムと……そして今日、ラウンと戦ったよ」


「ほぉ……牢に覚えのある魔力を感じていましたが、やはりグリムでしたか。因みにラウンも来るのですか?」


「いや、彼は死んだよ」


「そうですか、それは残念です。彼は魔物との適合率が高かった良い素体だったのですが」


 残念と言いながらも、彼から悲しみの様な感情は聞こえてこない。

 仲間の死にもこの対応とは――始高天。やはりまともじゃない。


「聞かせてくれ、ノア。君達、始高天の目的はなんだ? 皆揃って創世と口にする。本気なのかそれは? 創世――つまり世界を作る気なのか」


「正確には上書きですよ。その為のダンジョン化です」


 ダンジョン化だって。なんだ、嫌な予感がするぞ。


「どういう事だ? まさか世界をダンジョン化するのを創世って言うつもりか?」


「半分正解ですね。ダンジョン化はあくまでも手段でしかない。ダンジョン化の応用によって、我々は世界を新たに創世するのです」


「無理だ! そんな不可能な事の為に、こんなバカげた事を今までやってきたのか!」


 私は本気で叫んでいた。

 有り得ないと。どれだけのマナや魔力が必要になるのか、途方もない話だ。

 それだけの為にと思うと、始高天の行いは本当に許せなく感じてしまった。


 だが私の姿に、ノアは静かに笑うだけだった。


「フフフ……不可能は絶対ではない。可能という言葉がある以上、可能性なんですよ。表裏一体とも呼べる。不可能があるからこそ、それは可能となると」


「哲学を語る気はないよ」


「哲学ではなく、事実ですよ……そして現実でもある。実際、ダンジョン化は成功し、魔物との融合――<魔人>も、合成魔剤によって完成している。あとは時が満ちるのが待つだけですよ、ダンジョンマスター」


 まさか本気なのか。本気で出来ると思って――いや可能性とはいえ手段に検討をつけているのか。


「何故、私がアナタに負けたのか未だに分からない。けれど、忘れないで下さい。――次は油断はしない。必ず勝って、殺す」


「次はないよ。君はここで終わりだ……残りの始高天も私が止める」


「出来ると良いですね。それも可能であり、不可能でもある……クククッ」


 ノアはそう言って後は笑うだけだった。

 だから私はも手を上げて帰る事を告げてから、その場を後にした。


――始高天を止める。必ず。


 その想いを覚悟に宿しながら。


♦♦♦♦


 エリアに礼を言って、騎士団本部を出た私は少し街をぶらついていた。

 王都を歩いていると、時折だが五大ギルドの襲撃の話が聞こえてくる。


 だが私がやったとは聞かず、きっとゲン達が箝口令を指示したのかも知れない。

 それなら、それで良い。それよりも問題は始高天だ。


――一体、あと何人構成員がいるんだか。


 きっとノアがいなくても独自に動いている筈だ。

 モンスタースタジアム、そして今回だってそうだ。

 全員、高レベルの実力者ばかりだし、厄介極まりないないな。


「参ったな……」


 厄介な連中と対立してしまったものだ。

 私は思わず愚痴りそうになるのを呑み込んだ。


 そんな風にやや暗い感じで歩いていた時だ。

 私は不意に、背後から何者かの気配を感じた。


――誰だ? 報復か、それとも別か?


 五大ギルドの報復も考える中、私は声を掛けてみた。


「誰だい、そこいるのは?」


「私です」


 建物の影から出てきたのは、露出の多い和服を身に纏った女性――十六夜だった。

 

「君とは普通に出会った試しがないな。それにしても、裏ギルドのボスが一人でどうしたんだ? 私に様かい?」


「えぇ、五大ギルドの件も聞かせて頂きました。随分と大暴れしたとも」


「先に仕掛けてきたのは向こうだ。一方的とか、そういうのは嫌いでね」


 今回はクロノ達のギルドに被害が出たのもあって、許せなかった。

 私一人だけなら、ダンジョンにでも逃げ込んで終わらせていたからね。


「それで……もしかして雇われて報復かい?」


「いえ、既に手打ちと案件に裏が介入するのは無粋というもの……今回は《《依頼》》があって参りました」


「依頼? ダンジョンかい」


「はい。あるダンジョンへ同行して欲しいのです。勿論、同行者は私です」


 嫌な予感がするな。

 いや、最近はずっと嫌な予感ばかりだ。ここまで来たら皿まで食らおうと。


「そのダンジョンは?」


「呪われし、海の幽霊船――玲瓏呪域(れいろうじゅいき)死霊廻船しりょうかいせん


――うわぁ……やっぱり。危険度9の神出鬼没の廃船ダンジョンだ。


「日程はお任せ致します。ダンジョンマスター様」 


 そう言って十六夜は、並みの男ならば一瞬で悩殺できそうな笑顔を浮かべて私を見た。

 だが私は高難易度ダンジョンだからか、既に疲れた顔を浮かべるのだった。

 

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