冒険者+5:抗争の終わり
抗争は終わった。
元凶であったゼンとラウンが死んだ事で。
そして殺したのが、白帝の聖界天の先代と初代という事で手打ちとなった。
だが私は五大ギルドに手を出した。
それも事実だと、その事を初代やゲンヘ伝えたが鼻で笑われた。
「手打ちとなったのだ。ならば、それで終わりだ。両者にそれ以上の代償も責任も生まれん」
「五大ギルドが絶対の時代は終わったのじゃ……ダンジョンマスターよ。もう儂等もお主達も古い時代になろうとしているのだ」
そう言って二人はそれ以上、取り合ってはくれなかった。
まぁ取り敢えず、『蒼月華』を念の為、一つだけ置いてきたし、建物の修理代には足りるだろ。
それとギルド長にも同じ事を言ったが、同じ様に私は笑われた。
「ガハハハッ! あんなもんとっくに捨てたわ! 全く勝手に突っ走りおって! またすぐに依頼を出すから覚悟しろよ!」
そう言われて私の覚悟は無駄に終わってしまった。
冒険者人生に終止符を打つ覚悟だったが、どうやらまだまだ、おっさん冒険者として、師匠として頑張らないとダメらしい。
終わった後は怪我人を運びながら、弟子達も来て大変だった。
クロノはずっと謝るし、ミアは泣きながら殴ってくるし、レイはずっと服の裾を掴んでるしさ。
ガンドやエミリア達、他の弟子達もただ笑ってるし、全く私は思っていた以上に引退できない身らしい。
「センセイ! 腹減った! なんか食わせて!」
「それより怪我の治療だろ?」
「全く、油断するとは情けないぞミア」
「うっせ! お前達だって油断してたじゃねぇかクロノ!」
喧嘩する弟子達。やれやれだけど、昔を思い出したよ少し。
こうやって弟子達と、ダンジョンや揉め事を解決して帰ったものだ。
『~~♪』
『グオォォン!!』
エミックとベヒーも無事そうだし、元気に鳴いている。
取り敢えず、不完全燃焼気味ではあるけど、ゲンの言った通りだ。
まずは終わった。
――けど、私には帰る前に行く所があるな。
「先生……帰ろう?」
「すまないな、レイ。少し寄る場所があるんだ」
「おいおい、師匠! どこに行くんだよ? とっとと戻って飲もうぜ!」
「悪いなガンド。先にやっていてくれ……どうしても会わないといけないんだ」
モンスタースタジアム、そしてツンドラマウンテンと今回の一件。
それについて私は彼と話さねならない。
「どこに行くんですか、師匠?」
クロノが気にする様に声を掛けてきた。
心配させない為にも、言っておいた方が良さそうだ。
「騎士団牢獄――《《ノア》》のところさ」
♦♦♦♦
あの後、私は止める仲間達や弟子を説得し、騎士団本部を訪れた。
グランは私達の騒動の後片付けをしているのかいないらしく、案内はエリアだ。
彼女は私の怪我の様子に心配そうに見てくる。
「ルイス殿……大丈夫ですか? またの機会にするべきなのでは」
「ありがとうエリア。でも、会わなきゃダメなんだ……最近の事を含めれば、彼に会って話をしないと。それで最初に言った通り、二人にしてほしい」
「……構いませんが、本当に大丈夫なのですか? 相手はあの男なんですよ?」
エリアの、もう何度もする心配に私は苦笑してしまう。
だが無理もない。それだけの相手だと彼女も知っているからだ。
それと、どうやらノア・ディオ・グリム達は離れて収監されているらしい。
だからか、やけに遠回りしてノアの下へ向かっている気がする。
けれど終わりは来る。
やがて特別感のあるエリアに入ると、その一番奥に彼はいた。
「――ノア」
「……おや、その声はダンジョンマスターですか?」
私の目の前の牢の中に、彼はいた。
椅子に固定され、呪術が掛けられた拘束具を全身に巻かれ、両手・両足に魔封石の錠を幾つも付けられていた。
開いているのは片目と口だけだが、彼は私の姿を見て笑っていた。
 




