表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<15万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第七章:五大ギルド・白帝の聖界天
53/148

冒険者+5:ダンジョンマスター立つ

 それは突然の事だった。

 まだ夜が明けるよりも前に、私の拠点にミアがやって来たんだ。


「センセイ! 大変だ! 小太郎が!」


 彼女の言葉に私は嫌な予感が過った。

 小太郎は基本的に裏で動いてくれている。

 だから、何か起こったのではないかと。


 私はすぐに準備して、彼女の後を追いかけた先は騎士団の医療棟だった。

 一瞬、何故か分からなかったが、小太郎がいるならどこでも良かった。


 そして、とある一室に案内され、その中に入ると私は目を疑った。


「なんだこれは……!」


「うぅ……!」


「あぁ……!」


 その病室には大勢の怪我人がいたのだ。

 包帯を巻かれ、中には血が滲んでいる者もいる。


 だが、私が驚いたのは彼等が騎士じゃなく、雰囲気で《《冒険者》》だという事だからだ。

 身なりでも分かるし、冒険者特有の雰囲気がある。


 しかし何故だ。何故、騎士団の医療棟に冒険者達が。

 しかも女性も子供もいるじゃないか。

 まるで戦地の様な光景に、私は言葉を失いながらも、何とかミアに聞く事にした。


「ミア……これは何なんだ?」


「……冒険者と、その家族さ。襲撃されているんだ、ここ《《三日間》》で。騎士団は、そんな連中を匿ってくれているんだ」


「匿う……?」


 そう言った後、私は気付いてしまった。

 目の前で苦しんでいる冒険者達。彼等はクロノやミア達のギルドのメンバーだと言う事に。


 それだけじゃない、王都で飲み仲間になった冒険者達も大勢いた。

 なんだこれは。殆ど、私が知っている者達じゃないか。


「……ここの人達の容体はどうなんだ?」


「幸い、命の危機はねぇってよ。でも骨折はいるし、女子供の場合は心の傷がな」


――ふざけるな。誰がこんな酷い事を。この三日で何が……待て、《《三日》》?


「ミア……もしかして、犯人達は――」


「ここだぜ、センセイ……」


 私が何か言う前に、ミアはそう言って部屋の角の空間で立ち止まった、

 そこにはベッドがあり、何故かエリアやグランもそこにいた。


「エリア……グランも?」 


「ルイス殿……小太郎殿が」


「まず、話を聞いてやれ」


 二人は私に何か言いたそうにしながら、ベッドへ視線を向けた。

 そこには、ボロボロとなり、全身に包帯を巻かれた小太郎の姿あった。


「小太郎!! 無事なのか! 生きているのか!?」


「大丈夫です! 命だけは助かりました!……それでも火傷などで重傷ですが」


 エリアの言葉に私は安心したが、見た目が言葉で聞くよりも酷く見える。

 

―― 一体、あの小太郎を誰が。 


 小太郎は私やミア達も認める実力者だ。

 弟子の中でも上位の存在なのに、こんな姿で。

 私は疑問を抱くが、それよりも悲しみや怒りの方が勝り、拳に力が入っていた時だった。


「……師匠」


「小太郎!」


 小太郎が口を開いた。

 弱弱しい口調と、目も薄っすらとだけ開き、確かに私の方を見ている。


「すみません……しくじり……ました」


「大丈夫だ! まずは休め!」


「いえ……聞いて下さい……私は、クロノから……師匠が白帝の聖界天(ホワイトゲート)に目を付けられた……と、聞いて調べて……ました」


 そう言う小太郎の視線が動き、私はそれを追うと、私達の背後にはクロノがいる事に気付いた。

 クロノは暗い表情で椅子に座っていて、私達の視線にも一切反応しなかった。


――クロノ。一度なら二度までも仲間を守れなかった事を気にしているのか。無理もない。


「それから……すぐです。連中が……師匠と少しでも……関係のある者達を襲撃した出したのは……そして……気を付けて……下さい。この絵を描いているのは……道化師の男……そいつも()()()です……!」


「始高天……! それに白帝の聖界天……!――何故だ。何故、私に直接仕掛けてこなかった! 何故、無関係の人達を襲った!!」


 私は思わず声を荒げてしまったが、感情を抑える事は出来なかった。

 そんな私を見て、エリアとグランも何か言いたそうにしていた。


「ルイス殿……今回の、この件なのですが」


「ハッキリ言う。元老院から今回は中立に立てと勅命が入った。ギルド同士の抗争だから騎士団介入は出来ない。そう言われた。――だが実際は、白帝の聖界天と繋がりのある議員が圧力を掛けただけだ」


「一部、チンピラは捕まえたんですが、その度に元老院からの指示で白帝の聖界天の者が来て……解放を。――すみません」


「……いや、謝らないでくれ。それで良い。例えそうだとしても、騎士団は中立であるべきだ。今回は、裏ギルドとは違う。」


――そう思わないと、私は今にも暴れそうだ。それに連中は、騎士団が何かすれば、次に彼等を標的にするだろう。それが分かる。


「……クロノ、ミア、小太郎。そして皆、すまない。私のせいだ。私が様子見といって、三日も動かなかったからだ」


「……違います。師匠のせいではない。五大ギルドだからと怯み、仲間を守れなかった私達の責任です」


「うちの連中は弱くねぇ。きっと人質を取られてやられたんだ……! 絶対に報いを受けさせてやる!」


 クロノは暗くも、その瞳には強い怒りが宿っていた。

 ミアも同じだが、それを実行すればギルドも、冒険者としての立場も消える。

 五大ギルドに逆らう。それはそう言う事だ。


「……エリア、そしてグラン。頼む、三日だけ彼等や関係者を守ってくれないか?」


「無論です! 三日と言わずとも守って見ます! 戦いが起こった時の介入は禁止されましたが、護衛は止められていません!」


「流石に騎士団としても、この状況で元老院の言いなりになる気はないからな。――何か考えがあるのか?」


「少し……準備してくる」


 私はそう言って病室を出ようと歩き出した時だ。

 クロノが立ち上がった様だ。


「っ!――待ってください! 師匠、まさか一人で!」


 クロノが何かを察して私を後ろから止めて来たが、すまない。

 本当の事を言う気はないんだ。


「いや、まずは話し合いだ。その先は、その結果次第だ」


「センセイ……もし、連中が何もしなかったら?」


「……その時は、一旦集まろう」


 私はそう言い残し、一旦拠点へと帰って行った。


♦♦♦♦


 だが私だって冒険者で――そして一人の師だ。

 弟子達に辛い道だけを進ませる気はない。


 今回の件で、彼等の道を閉ざす訳にはいかない。

 私はすぐに辺境ギルドのギルド長宛に手紙を書き、それを早馬で出した。


「……これで私と()()()()関係なくなる。ここからは、私個人の問題になるな」


『~!』


『グオォン!』


「お前達も来てくれるのか? 全く、何かあったら逃げろよお前達」


 私は気合の入ったエミックとベヒーに、そう言って少し笑うと準備に入った。

 ナイフを色んなアイテムと合成し、道具を作っていく。

 決行は明日だ。今日は準備して眠って、万全な態勢を取る。


――始高天。そして白帝の聖界天。責任は取ってもらうぞ。


 私は今、これまでになく怒っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ