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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第七章:五大ギルド・白帝の聖界天
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五大ギルド登場

 あの壮絶な休日から二日後、私はクロノに会う為、『黒の園』に来ていた。

 そして執務室で二人で、簡単に話をしていた。


「全く、あんな依頼を受けるなんて……勘弁してくれよ」


「も、申し訳ありません……フレイさんの迫力もそうですが、ミアを始め何人かもやる気だったのに抑えられず」


 クロノはそう言って困った表情を浮かべていた。

 まぁそこまで責める理由はないさ。

 エリアとフレイちゃん。美人二人とデートで来たんだから、男としても最高の時間だった。


「まぁ、困りはしたが嬉しかったのもあるし……この話は良いさ。――ところで、ほら、依頼品の『蒼月華』だ。渡そうと思っていたら、留守だったからな」


「ありがとうございます……おぉ! 流石は師匠ですね。本物の『蒼月華』だ」


 今回の目的はこれだ。

 唯一、まだ『蒼月華』を渡していなかったクロノに渡す為に来ていた。


「さぁて、これで依頼された『蒼月華』は全て渡したなと。後の余り分はチユさんに渡したり、必要な人に渡すかな」


「アハハ……贅沢な悩みですね。師匠らしい」


「おいおい、どういう意味だ!」


 私達はそんな事を言いながら笑い合い、お茶を楽しんだ。

――時であった。


「ギルド長! 大変です! 《《五大ギルド》》の『白帝の聖界天(ホワイトゲート)』が!」


 勢いよく扉を開けて、クロノのギルドの受付嬢が飛び込んできた。

 って、おいおい。五大ギルドの名が出るなんて何事だ。

 私とクロノも、思わず立ち上がってしまった。


「落ち着け! どうした! 彼等が来たのか!」


 クロノの問いに彼女は震えながら頷いたが、同時に目線を私へ向けていた。


「は、はい! そ、それで……ルイス様に会わせろと――」


「おっと! それ以上は俺達が言うよ。カワイ子ちゃん?」


「きゃっ!」


 背後からの声に彼女は飛び上がり、猛ダッシュでクロノの後ろに逃げて来た。

 そして私とクロノが身構えながら扉の方を見ると、そこから銀髪の若い男と、彼のガードらしき冒険者達がいた。


 また、入った来た彼等の服や身体には<天を駆ける一角獣>の、刺繡や刺青が入っていた。

 それこそが五大ギルドと呼ばれる、ギルド界の五つの王の一角――『白帝の聖界天(ホワイトゲート)』の証。


「なんで『白帝の聖界天(ホワイトゲート)』がここに……!」


「いや下がってろクロノ。どうやら目的は、私の様だ。――何の御用ですか?」


 私からの言葉に、先頭に立つ銀髪の男は嫌な笑みを浮かべながら、口を開いた。


「話が早くて助かるぜダンジョンマスターよ……俺の名前はゼン・ホワイトホース。五大ギルドの一つ『白帝の聖界天(ホワイトゲート)』のギルド長をしているぜ」


「五大ギルドの長だと! しかし、聞いていたよりも若すぎる!?」


「落ち着けクロノ。あそこのギルドは代変わりしたんだ。ただ不思議と、大々的に知らせてなかったから、知らない冒険者も多い」


 私も飲みの席でジャックに教えてもらって知ったぐらいだ。

 だが、あの偉大なギルドの新たな長が、こんな貫録もなく、明らかにチンピラみたいな青年とはね。


――五大ギルドも落ちたものだ。


「おいおい! オッサン! 人の言葉を奪うなよ!――全く、俺が言いたかったのによ。まぁ良いぜ。さっきも名乗ったが、俺様はゼン! 先代の息子にして初代の孫だ。まぁ覚えとけよ」


 随分と器の小さそうな長だな。

 まだ背後のガード達の方が貫録や、威厳があるよ。


 きっと歴戦の冒険者なんだろうな。クロノは疎か、私にすら警戒心を出しているよ。

 良い腕の冒険者達の様だが、頭が弱くなるとは哀れだな。


「それで、そちらは何故ここに。師匠に何の様ですか?」


 相手が相手なだけに、クロノも追い返す事はせずに目的を知ろうとしているな。

 確かに、裏ギルドならばともかく、五大ギルドに何かした記憶はない。

 一体、私に何の用だ?


 私とクロノは構えを解かないで聞いてみると、ゼンと言った青年が指で示したのはデスクの上の『蒼月華』だった。


「そいつだよ。いやな、俺らの所の冒険者達も採取に向かわせたんだが、一人も帰って来なくてよぉ」


「……師匠、雪原やツンドラマウンテンで彼等を見たんですか?」


「いや見てない。いたとしても便乗者やハイエナだ。それ以外は遺体しか見ていない」


「そう! それだよ! それが問題だ!」


 何を言っているんだコイツは?

 ゼンは、待っていたと言わんばかりに手を叩きだした。


「うちは五大ギルドの最高の冒険者しかいねぇ! なのに戻って来ないのはおかしいだろ! つまりはよぉ、誰かがアイツ等を襲って、蒼月華を《《奪った》》んじゃねぇのかって話だ」


「そう言う事か……」


 私はようやく彼等の目的が分かった。

 目的は『蒼月華』だ。実際、冒険者を送ったかも知れないが、戻って来ていない以上は『蒼月華』を確保できていない。


 ならば権力のある連中がする事は一つか。


「難癖を言って、私から『蒼月華』を奪う気か」


「貴様! なんてことを! 師匠がそんな事をするか!」


「うわぁ!」


 クロノが怒りでスキルを発動して臨戦態勢を取った瞬間、ゼンは情けない声を出して腰を付いた。

 そんな彼を守ろうと、後ろのガード達も武器を構えて前に出て来た。

 

 そうされると、こちらも対応せねばな。

 私も無言でガントレットのブレードを展開し、いつでも動ける様に更に身構えた。


「くっ! お前等! 俺が誰か分かってねぇのか! 《《五大ギルド》》だぞ! 五大ギルドに手を出せばどうなるか分かってんのか!!」


 腰が抜けたままで良く言えるものだ。

 

「知っているよ。今のギルドという形を作り、世に冒険者としての信用を作った偉大な存在。そんな絶対の五大ギルドに刃を向ければ、ギルドとしても、冒険者としても、その世界で村八分になるのもね」


「だったら……どうなるか分かってんだろうなぁ!」


 ゼンは何とか立ち上がると、ガードから剣を奪って私へ振り上げて来た。

 なんて呆れた男だ。反撃する気にもなれないぞ。


 私はただ片手を上げるだけで、ゼンの攻撃をブレードで受けた。

 

「なっ! このおやじぃ……どこに力が――」


「これは助言だよ。君には長の器がない」


 私はそう言ってブレードを魔剣ニブルヘイムへと変化させると、その刀身から相手の剣、そしてゼンの腕を氷漬けにした。


「うっうわぁぁぁぁぁ!! お、俺の腕が!」


「早く溶かせば大丈夫だよ。――それと先代達に伝えろ。私は《《今も変わってない》》よと」


「うっ! 親父達の知り合い……!――チッ! 早く行くぞ! 早く溶かせ!」


 そう言ってゼンは部屋から出て行った。

 ガード達も、私が先代達と顔見知りと悟ってか、ガードの職務を放棄してゼンを連れて黒の園から出て行った。


「師匠……大丈夫ですか?」


「何かあれば、すぐに私を売れクロノ。他の者達にも、そう伝えろ」


 私は嫌な予感がし、クロノへ万が一の時の事を伝えて、その場を後にした。

 きっとまた何かして来る筈だ。念の為、備えをしなければ。


 そう思いながら、私は今日はもう拠点へ戻る事にするのだった。

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