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魔眼狩りの行方

 あの後、騎士団に色々と聞かれたが、私はまともに答えられなかった。

 その理由は一つしかない。

 

「フレイちゃん……私のせいだ」


 『黒の園』の医療室。そのベッドで寝かされているフレイちゃんの石像。

 

 それを見ながら、私は拳を握り締めていた。

 後悔、そう後悔ばかりが頭の中で渦巻いていた。


「お前のせいじゃねぇ……悪いのは、その魔眼使いだろ」


 グリーンスノーのレンドギルド長はそう言って、私の肩に優しく手を置いてくれる。


 だが、それでも戦闘をしたのは私自身でもある。

 どんな状況下でもフレイちゃんの安全を優先するべきだったんだ。


「それでも……私はフレイちゃんの安全を最優先すべきだった! 私のせいだ……私は一人の男として失格だ――」


「うるさい弟子だねぇ! いつまでもめそめそと! そう思うならやる事があるじゃろ!」


 私の言葉を遮って怒りの声を掛けてきたのは、マリアン師匠だった。


 マリアン師匠はチユさんと一緒にフレイちゃんの容態を見てくれており、やがて魔法で彼女の身体を包み込んだ。


「ほら、これでまずは割れることはなくなったよ。でも石化解除の解決になった訳じゃないよ?」


「石化を治したことはあるけどねぇ……原因が魔眼となれば話は変わるからねぇ」


 チユさんはそう言ってフレイちゃんの石像を撫でた。


 チユさんも悲しいのだろう。声からフレイちゃんを心配する感情を感じた。


 だけどチユさんだけじゃない。レンドギルド長も、クロノを始めとしたメンバーも悲しそうな表情をしていた。


「クロノ、ミア、レイ、小太郎……あの魔眼使いについて、何か情報はあったかい?」


「すみません師匠……ギルド員に行方を追わせていますが、これと言った情報は……」


「オレの所も同じだセンセイ。そいつ、逃げるのが上手すぎるぜ」


「魔力の痕跡も完璧に消してる……ムカつく」


「少なくとも、王都からは一度出たそうです。そこからの足取りが掴めません」


 弟子達の言葉に私は少しだけ肩を落とした。

 

 場所が分かればすぐにでも向かうのに。

 奴は私にまた会いに来ると言っていたが、待っていられない。

 

 私はエリアにも顔を向けたが、帰ってきたのは申し訳なさそうに首を振る彼女の姿だった。


「申し訳ありません……騎士団でも行方は追えませんでした」


「そうか……いや無理もない。そもそも、私は奴の正体すら分かってないんだ。――アイズ・マンガン。何者なんだ……!」


 魔眼を大量に持ち、戦闘レベルも高い謎の男。


 名前以外、本当に正体が掴めない存在に、私や皆が黙り込み、空気が重くなった。

――その時だった。不意にギルドの扉が開いた。


「アイズ・マンガン――それは裏で生きる者ならば一度は聞いたことがある伝説の男。――通称『魔眼狩り』のことです」


「十六夜!?」


 入って来たのは 裏ギルド『魔天の桜月(まてんのさくらづき)』ギルド長。

――夜天の女王(アンダークイーン)十六夜(いざよい)だった。


「どうしてここに!? そもそも『魔眼狩り』って……!」


「ウフフ、あなた様の危機に気付かない私ではありませんよ、ルイス殿。女性関係なのは少々気になりますが、それでもあなた様の力になれるなら、この十六夜。喜んでお力をお貸ししましょう」


 予想外の味方の登場だった。

 しかし盲点でもあった。裏ギルドならば私達が知らないアイズの情報が分かるかも知れない。


「それで? 魔眼狩りってなんだよ?」


 ミアが十六夜に問いかけると、十六夜は一度頷いてから話し出した。


「文字通りの存在です。魔眼狩り――他者から魔眼を狩り、奪うことを目的とした存在。その所持している魔眼の数や種類により、とても危険な存在だと裏でもマークされていた男です」


「なるほど……だから私の『力量の瞳』に固執していたのか」


「えぇ、その話が本当ならばルイス殿もターゲットとして狙われたのでしょう。一度狙ったら奪うまで逃さない。それが魔眼狩りです」


 また厄介な奴に目をつけられたものだ。

 十六夜の言葉が本当なら、かなり執着する奴の様だな。


 きっと今も、私のことを狙っているのだろう。

 だが待つ気はない。分かるなら、こっちの方から行ってやりたい。


「十六夜……奴の居場所を知らないか? どうしても、フレイちゃんを助けたいんだ」


「少し妬けますね。――ですがご安心ください。この十六夜、何の情報もなく来る裏ギルドの長ではございません」


「なっ! 知っているのか!? 奴の居場所を!」


 エリアが驚いた表情で十六夜を見ると、十六夜は静かに頷いた。


「無論、この裏ギルドを甘く見られたら困ります。――奴の居場所……それは『魔葬砦』跡地でございます」


「魔葬砦!? あそこに奴がいるのかい!」


「はい。我がギルド、屈指の手練れに追わせた結果でございます。そこに『魔眼狩り』はおります」


 その言葉を聞いて私の中で何か燃え上がる何かを感じた。

 魔葬砦跡地――そこに奴がいる。


 私は気付けば十六夜の両手を持っていた。


「ありがとう! 十六夜! 本当に助かったよ!」


「い、いえ……そんな、あなた様の役に立てたなら私は――」


 恥ずかしそうに顔を逸らす十六夜だが、私はそれでも嬉しい感情を抑えきれなかった。


「このお礼は何かできっと返すよ! 本当にありがとう!!」


「あぁ……! そ、それならば……私と、その……あ、あ、逢引きを――」


「良し! そうと分かれば早速ですが行ってきます! 師匠達はフレイちゃんをお願いします!」


「師匠! お一人で行くつもりなんですか!?」


 私がすぐにでも飛び出そうとすると、クロノが待ったを掛けた。

 しかし、一人の方が都合も良いのは確かだった。


「あぁ、あの石化の魔眼……思ったより厄介だった。だから誰かが傍にいれば、きっと私はアイズに集中できなくなる」


「だったら、そいつの血を採って来なよ? 石化の魔眼……その解除には術者の血が必要だからねぇ」


「分かりました! 良し、行くぞエミック!――ありがとう十六夜! 本当に助かった!」


『~~♪』


 私はエミックを腰に装着すると、マリアン師匠の言葉に頷いた。

 そして十六夜に再度お礼を言い、その部屋から飛び出す様に出て行った。


「あぁ……! 酷いお人……!」


 その時、背後から十六夜の言葉を聞いた気がしたが、私は気付かずに魔葬砦跡地へと向かうのだった。

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