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おっさん冒険者+5:破壊飛竜デストロイア

『ギャオォォォォォォン!!!』


 私が身構えた瞬間だった。

 デストロイアは口から炎を吐いてきた。


「いきなりか!」


 尋常じゃないレベルの火炎だ!

 この頂上――その全てを燃やせる程の炎を前に、私もブレードを魔剣グラビウスに変更した。


 そして目の前に翳し、重力魔法と水魔法を解き放った。


「グラビウス・マーキュリー――マリナ!!」


 私は重力魔法で球体を作り、その中に超密度の水魔法を閉じ込めた。

 その球体をデストロイアへと放つと、互いの攻撃がぶつかり合う。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!」


『ギャオォォォォォォン!!!』


 ぶつかり合う私達の攻撃だったが、デストロイアは臆することなく炎を吐き続けていた。


 譲る気はないって事か! それにしても、なんて炎だ。

 少しでも攻撃を許せば、喉や肺が一気に焼けてしまいそうだ。


 それだけの熱量を私は感じていた。

 だが当然でもある。危険度10ダンジョンのボス魔物が相手なんだ。


 これ程の攻撃は寧ろ予想するべきだ。

 しかし、だからといって物語みたいな拮抗した様な展開はいらない!


 だから私は到達者になった事で莫大に増えた魔力を使い、ゴリ押す事を選んだ。


 私はブレードに魔力を込め、クロス状に振るって斬撃を目の前へと放った。


 そうすれば私が作った球体へとぶつかり、そのまま重力球を押していく。

 そして一気に均等は崩れた。


 デストロイアの炎を弾きながら重力球は向かって行き、最後にはデストロイアへと直撃した。


「良し! 今のは手応えがあった――」


『ギャオォォォォォォン!!!』


「……そんなに甘くはないよな」

 

 重力と高密度の水魔法を受けたデストロイアは、顔面に傷と、牙が少し折れたが怯まずに咆哮をあげていた。


 全く、本当にタフだな。

 今の攻撃も並みのボス魔物なら、一撃で倒せる程の威力があったんだが。


 それが多少の傷と牙を折る程度とは、流石に恐怖心が芽生えるというものだ。


「だからといって呑まれはしないよ。さぁ、再開だ!」


『ギャオォォォォォォン!!!』


 そう言って私がブレードを構えると、デストロイアは咆哮をあげながら飛び上がった。


 そして私目掛けて突っ込んでくるのを、私は跳んで回避。

 そのままデストロイアの背に飛び乗る形で、共に空へと舞い上がった。


『ギャオォォォォォォン!!!』


「――クッ! なんで速さだ……! マスクをしていても呼吸がしずらい!」


 私は咄嗟にブレードを背中に刺して耐えたが、あまりの風圧に逆に腕が持ってかれそうに思えた。 


 デストロイアも一切怯んだ様子もなく、空を縦横無尽に飛び回って私を振り落とそうとしていた。


 だがこんな所で落ちて堪るか! 

 普通に死ぬ! 魔法で何とかできるとは思うが、そう叫びたい! 死ぬ!!


 そんな事を数分だろうか、少なくとも長く感じていた私が必死に耐えていると、デストロイアが急に高度を下げた。


 好機だ。咄嗟にそう思った私だったが、デストロイアは頂上に戻った瞬間、急に身体を反転させた。


「おい! まさか――」


 嫌な予感を抱いた私は、すぐにデストロイアからブレードを抜いて横へと跳んだ。

――瞬間、デストロイアは背中から頂上に着地したのだ。


「こいつ……! 私を潰そうとしたのか!?」


 なんて考えを実行するんだ、この飛竜は。

 私は常識が通じない事に、思わず愚痴りそうになるのを呑み込んだ。


『ギャオォォォォォォン!!!』


 だが当の本人は吠えていて元気である事を示していた。

 あんな無茶な着地してもダメージ無しか。全く、泣きたくなるよ。


 いや、そんな呑気な事を言っている場合じゃない。

 デストロイアは私を見つけると、今度はそのまま突っ込んで来た。


「全く――これでも喰らえ!」


 私は咄嗟にエミックの口に手を入れて、一つのキノコを取り出した。

 それは『ダイナマイタケ』だ。


 投げて衝撃を与えれば、大爆発を起こすキノコだ。

 それをデストロイアの顔面に投げつけると、すぐに大爆発を起こした。


「よし!――って、うそだろ!?」


 大爆発を起こしたの間違いなく、ダメージもあった筈だ。

 だがデストロイアは爆風を払いながら、足を一切止めずに突っ込んで来たぞ!?


 咄嗟に私がデストロイアの顔面――牙をブレードで受け止め、両翼の腕をエミックが闇の腕で受け止めてくれた。


「耐えろぉ……エミック!!」


『――!!』


 巨体、故の質量の突進を受け止めた自分達を褒めたい。

 デストロイアの口から凄い熱気を感じる中、私達は必死に受け止め続けた。


 すると、今度はデストロイアの口が光りだすのを私は見逃さなかった。


「コイツ! また炎を出す気か!――ニブルヘイム!!」


 私はブレードをニブルヘイムに変えた。

 そして魔剣ニブルヘイムの刀身から放たれる冷気により、デストロイアの顔面が凍り付いた。


『ギャオォォォォォォン!!?』


 その瞬間、僅かに怯んだのを私は見逃さない。

 冷気を私の足へと纏わせ、一気に回転蹴りを放った。


「絶氷脚・氷破!!」


 魔力を乗せた蹴りはデストロイアの顔面にめり込んだ。

 そして、その巨体を大きく吹き飛ばすと、デストロイアは頂上から落ちて行った。


「やったか――」


『ギャオォォォォォォン!!!』


 終わったと思ったが現実は甘くないな。

 落ちた瞬間に、デストロイアは空中に飛んでおり、羽ばたきながら私を睨んでいた。


 まだ闘争心は消えていないか。

 だが飛び方が、やや変な動きである以上、もうすぐの筈だ。


「決着を付けようか……グラビウス・ニブルヘイム」


 私はそれぞれのブレードを魔剣へと変えると、その刀身の色が変わって行くのを感じた。


 右ブレードは重力魔法で漆黒に、左ブレードは冷気で真っ白に。

 同時に私はあるだけの魔力を解き放ち、一気に勝負を決める事を選んだ。


 その魔力の余波で、一瞬で頂上周辺の雲が吹き飛んだ。


 それを始まりの合図とし、私はデストロイアへ向かって走り出した。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!」


『ギャオォォォォォォン!!!』


 デストロイアも近付く私へ火球を放ってきたが、私はそれを一切足を止めずに回避して行った。


 駆け抜け、横へと跳び、回避が不可能ならばブレードで叩き斬った。

 そして私が間合いに近付いた瞬間、デストロイアは再び私に突撃してきた。


 だが好都合だ!


「それを待っていた!!」


 私は両脚に魔力を込め、大きく跳んだ。

 そして背中に乗った瞬間、背中へ両ブレードを突き刺し、そして一気に走った。


「うおぉぉぉぉぉぉ!! 重魔絶氷――」


『ギャオォォォォォォン!?』


 デストロイアが咆える。しかし私の足は止まらない。

 そのまま首から尾まで一気に駆け抜けた。


 そして最後の一閃を振るう。


「双魔一閃!!」


『――!!!!』


 私はそのまま地面へと着地すると、ブレードを収納した。

 もう見なくても分かる。手応えを感じた。


 デストロイアは、もう咆えることなく今度こそ頂上から落ちて行った。

 そして轟音が下から聞こえてきたのを感じ、私はようやく膝を付いた。


「……終わった」


 レベルが下がって行くの感じる。

 デストロイアを撃破した証拠だった。


 私は思わずそう呟いてしまったが、すぐに両手で顔を叩くと気合を入れなおした。


 まだ終わっていない。私の目的はここからだ。


「さぁ、死兆石の採取……始めるか!」


 ここから本番だ!

 そう言って私は頂上の岩々を見渡すのだった。



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