アルコルの門番
獣臭い風、死臭。
死の山から来る酷い風を受けながら、私はアルコルを進んで行く。
風の音に紛れて魔物の鳴き声や、明らかに警戒している鳴き声ばかりが聞こえてくる。
そして、そういう鳴き声が聞こえると山からの風から血の匂いが混ざる。
気持ちの良いものではない。
更には私の本能が告げている。
ここは人の入っていい場所ではないと。
この場所では人は餌以外の価値はない。
それ以上の価値を望むならば強くなければならない。
それを証明するかの様に私の目の前に門番達が現れた。
「凄い歓迎だな……」
『グルルルル……!』
死の山のふるいであり、絶対的な門番。
私の目の前にいるのは、一軒家並みに大きな狼の群れであった。
まるで家にいるかの様に横になっている狼たちのテリトリー。
そこへ私とエミックが入った途端、一斉に眼光と牙を向けてくる。
「死の山の門番……デュエルウルフか」
――デュエルウルフ:レベル66~72
力量の瞳で見る限り、群れのボスのレベルは72だ。
だがボスは私の姿を見ても動かず、彼の傍にいた個体――群れの№2に視線を向けた。
すると№2は起き上がり、ゆっくりと私の下へとやってくる。
『グルルルル……!!』
「群れの№2……レベルは70か」
危険度によっては、そのダンジョンのボス魔物にも成れる個体だ。
そんな№2が私の目の前まで来ると、他の個体は次々と周りから離れていく。
まるで決闘の様だが、それで間違いない。
――デュエルウルフ。別名『決闘狼』
群れで狩りはするが、特別な相手には必ず一対一で戦う特殊魔物だ。
それを察してかエミックも荷物を持って、私の腰から離れる。
「死星山アルコル――その出入口は君達の縄張りだったな。勝手に縄張りに踏み入った以上、強さを示さなきゃ先へ進めないか」
それか死だ。
敗者になれば私は彼等の餌になるだろう。
先へ進む為には勝つしかない。
もし彼等のルールを破れば、群れとなって私へ襲い掛かってくるだろう。
私は力量の瞳を開眼させ、同時に両腕のガントレットブレードを展開した。
そして腰を降ろして身構えると、№2も口を開いて牙を見せ、毛を逆立たせた。
それが準備完了の合図と見たのだろう。
デュエルウルフの長が天へと顔を向け、一気に吠えた。
『アオォォォォン!!』
『――!』
「――!」
それが戦いの合図となり、私は群れの№2へと向かって行った。




