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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十五章:対決! 永遠の黄金船(エルドラド)
133/152

冒険者+5:おっさんVS永遠の黄金船(13)

「これでどうだ!」


 間違いなく致命傷の筈だ。

 

 樹縛により動きを封じた中で、エリアの魔法刃が間違いなく腹部に突き刺さっている。


 実際、クシルも限界の筈だ。


 それを証拠に<力量の瞳>で見て分かる。

 彼女の魔力の減少に、魔人化によるレベル。その低下も。


「ルイス殿!」


「あぁ! 決着だ……!」


 未だに突き刺しながらエリアが私の名を呼んだ。

 それを聞き、私も頷いた。


 魔人化の中ではかなり強い相手だったが、流石にダメージが大きい筈だ。


 これ以上の戦闘は――


「舐めるなぁ!!!」


「なっ!?」


「なにぃ!?」


 私とエリアは驚いた。

 最後の力と言えば良いのだろうか。


 クシルは無理矢理に樹縛を破り、そのまま後ろに下がって魔法刃から脱した。


 いくら魔人でも痛みはあるだろうに。

 五大ギルドの長――その最後の意地なのか。


「ルイス殿!」


「大丈夫だ……悪あがきさ」


 傍に降りてきたエリアが心配そうな声を出すが、私は首を左右へ振って返す。


 それを証拠に、クシルの呼吸は乱れている。


 ただ魔人化による再生能力があるのだろう。

 

 腹部の傷が癒え始めているが、それと同じく魔力が凄まじく減少していた。


 少なくとも、もう戦える魔力ではない。

 レベルも彼女本来の<42>に戻っているし、魔人化の見た目も見かけ倒しだ。


 私はそれを察して、少しずつエリアと共にクシルの下へ歩き出した。


「降参しろ……もう終わりだ。ダンジョン化も解くんだ」


「フフ……フフフ。降参? 甘く見られたものね……確かに勝負には負けたわ。でも《《戦いは》》まだ終わってないわ!――ハァッ!!」


 何をする気だ? 

 突然、クシルが両手を天へと上げたぞ。


 私とエリアも警戒して身構えるが、それは攻撃ではなかった。


「さぁ出てきなさい!!!」


「なっ!? これは……!」


「なんだ! 周囲の宝石の壁が――!」


 ダンジョン化したこの建物全体が一瞬揺れたと思った途端、周囲の宝石の壁や柱が砕け始めた。


 砕けるだけなら良い。

 だが砕けた宝石から次々と何か出てきていた。


「あぁ……! あぁぁぁ!!」


「がぁぁぁぁぁ!!」


「あれは……半魔人!?」


 エリアが彼等を驚愕した表情で見ていた。


 続々と出てきたのは今、下で皆が戦っている半魔人の様な冒険者達だ。


 だが目が虚ろで、発狂したかの様に叫んでいる。

 明らかに普通じゃない。


「あれは……! おい! どういうことだ!」


「見たまんまよ……半魔人化でも耐えられなかった者達。その成れの果てよ。フフフ……さぁ! やっておしまい!」


「ウオォォォォ!!」


 まるでアンデットだ。

 意識がないのに彼等は獣の様に、私とエリアへと向かって来る。


「マズイ……! エリア構えるんだ!」


「はい!」


 私達はそう言って互いに構えるが、既に肩で呼吸し始めている。


 長期戦はマズイ。

 しかも砕けた宝石の中に何人いたんだか、かなり数の半魔人がいた。 


 次々と現れる彼等と、もう一戦するのは骨が折れるが仕方ない。


 私は眼前の敵へ身構えた。

 そんな時だった。


「キシシシ! なんじゃ? 苦戦してるねぇ、馬鹿弟子」 


「えっ……!」


 上空からの声。女の声。

 それを聞いて、思わず飛び出そうとした身体が、反射的に止まった。


 この年寄りみたいな話し方と、若者みたいな話し方が合わさった話し方。


 それに声――


「まさか! マリアン師匠!?」


 私が思わず上を見ると、そこには箒に直立で立つ若い女性がいた。

 翡翠色の長髪に、魔女の様なとんがり帽子を被った女性。


 私の師匠――マリアン・ロードが。


「なんでここに!? それにまた若返ってる!?」


「キシシシ! 久しぶりじゃのルイス!! ほれ、下がってな!!」


 師匠がそう言って笑みを浮かべながら腕を翳すと、巨大な雷雲が空を覆った。


 これはまずい! デカいのが来る!


「下がるぞエリア!!」


「えっ!? は、はいぃ!?」


 私はエリアを抱えて急いで後ろへ下がると同時だった。


 巨大な魔力が天から降り注がれた。


「雷帝招来!!!」


 一瞬、周囲が光った気がした。

 それと同時に轟音が背後から聞こえたが、見るのが怖い。


 だが反射的に振り返ると、そこには落雷が落ちた様に、周囲ごと丸焦げとなった半魔人達がいた。


「す、すごい……あれだけの数の半魔人が!」


「相変わらずデタラメだ! 弟子が近くにいるのに最上級魔法を撃つなんて……!」


 あのババァ! 

 相変わらず滅茶苦茶だ! 少しで動くが遅かったら直撃していたぞ。


「無茶するな! クソババァ!!」


「誰がババァじゃ! よく見な! ピッチピチの肉体じゃないかい!」


 そりゃそうだろ。定期的に若返りやがって。

 

 ある意味、半不老不死状態だよ全く。

 

 私は内心でボロクソに言ってた時だった。


 不意に師匠に接近する影に気付いた。


「良くも半魔人達を!!」


「なんじゃ……これが魔人か」


 影の正体はクシルだった。

 クシルは怒りの形相で手に宝石の槍を持ち、師匠に向けていた。


「危ない!!」


 エリアが思わず叫んだが、心配はいらないよ。


 あれでも私の師匠だし、デタラメな人だからな。


「ジュエルス・ランス!!」


「宝石系のスキルか……成程のう」


 何やら呟いているが、マリアン師匠は攻撃を避ける感じはなかった。


 そして、そのまま放たれた宝石の槍が迫っていたが、師匠はただ指を向けるだけだった。


 そして、指一本で槍を受け止めていた。


「なっ!」


「うそ……!」


 クシルもエリアも驚いている。


 だがそれだけデタラメなんだよ、あの人。

 

 レベルだって素で<90>超えてるし、定期的に若返るから経験も豊富。


 油断もまずしないから、本当に無敵なんだよ。

 実際、今だって笑ってるよ。あの人。


「ほれ、仕置きじゃ――滅怒(メギド)


 そう唱えた瞬間、マリアン師匠の指先が光った。


 そして瞬きぐらいの時間だろうか、気付けばクシルは丸焦げとなって落下していた。


 そのまま地面に叩きつけられ、やがて魔人から人の姿へと戻っていた。


「キシシシ! 死んでおらん。見た目より無事じゃ。――鈍っとるのぉ、どうよルイス!」


「全く……来るなら来るって言ってくださいよ。本当にもう……!」


「キシシシ! 愛弟子の驚く顔が見たかったんだよ! どうじゃ、嬉しかろう?」


 そう言ってマリアン師匠は笑い、それを見て私が肩を落としていた時だった。 

 

 空が晴れ始め、汚れたマナが消え始めた。


「ダンジョン化が収まったのか……」


 ダンジョン化が消え、空気が変わる。

 そして下の方から、歓声の様に騎士団と冒険者達の声が聞こえてくる。


――終わった。


 私はそう思いながら、気絶したクシルを背負うと、未だに唖然とするエリア。

 そして師匠と共に下へと降りて行くのだった。

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