冒険者+5:おっさんVS永遠の黄金船(12)
「なんて強さだ……! 魔人化に奴のスキルが合わさり、より強大な力に……!」
「おのれ……! 怪物め……!」
私とエリアがそんな事を言っていると、クシルは私達を凝視していた。
「怪物? 違うわ進化よ! 神の領域と言ってもいいわ!――ジュエルス!!」
私の眼前に再び現れる、何色もある綺麗な宝石たち。
これで鋭利じゃなければ美しいのだが、そうも言ってられない。
あれは恐るべき凶器であり、クシルの狂気だ。
「エリア……長期戦は危険だ。一気に決めるぞ」
「はい!――第三スキル『光翼』!」
私がそう言うとエリアは頷いた。
同時に彼女の背中に光の翼が生え、彼女は上空へと上がる。
私は身構え、左腕のブレードをニブルヘイムから魔剣ガイアに変えた。
それを見たクシルは、驚きの表情で私を見ていた。
「それは魔剣……? 一体、何本の魔剣を持っているのかしら? 興味が出てきたわ。――ジュエルス・カラーズランス!!」
クシルは手をかざした。
その瞬間、一斉に小さな宝石の破片が私へと向かって来る。
「魔剣ガイア!――樹印・魔獣壁」
あれを受けるのはマズイ。
私は、ガイアの先端から魔法陣を展開した。
すると屋根の地面から大量に生えてくる巨大樹。
それは絡み合いながら形を作っていき、やがてベヒーの頭部の様な形を模した。
その樹壁によって私とエリアは守られる中、次々に樹壁に宝石が刺さる感覚を感じる。
やがて収まり、樹壁の口を開くとクシルがイラついた表情で私を見ていた。
「えぇい! どこまでも面倒な!!」
「また返すぞ! 魔獣壁・樹突激昂!!」
魔獣壁は口を開け、樹木の牙を見せながらクシルへと突っ込んでいった。
しかしそれを見たクシルは再び手をかざしていた。
――また何かする気なのか?
だが怯まず、そのまま魔力を込め続けて魔獣壁を維持させる。
「その程度で勝てる程! 魔人は柔じゃないわよ!!――ジュエルス・グランドランス!!」
「なっ! 巨大なダイヤモンドの槍!?」
驚いた。クシルが作り上げたのは巨大なダイヤモンドの槍だ。
それで魔獣壁を迎撃しようとしているのだろう。
だが、こっちも対策済みだ。
さぁぶつかり合おう!
「いけぇぇぇ!!」
「この質量のダイヤモンドよ! 受けなさい!!」
互いに叫んだ瞬間、両者の攻撃が衝突した。
強風が吹き、魔力の突風に私もエリアも吹き飛ばされそうになったが耐える。
互いに拮抗する魔法。
だが、その拮抗がやがて崩れた。
魔獣壁から亀裂が走り、やがて砕かれながらダイヤモンドに貫かれてしまった。
それを見てクシルは大いに笑っている。
「アハハハハ!! どうだ見たか! これが私の力! 魔剣すらも凌駕する力よ!」
「それはどうかな!――樹縛葬!!」
この時を待っていた。
粉砕された事でクシルは油断しているが、魔獣壁はまだ生きている。
そこから次々に木々が伸びていき、一気にクシルを縛り上げた。
「なっ! なによこれ!? 身体が――だが、この程度! すぐに脱出して見せるわ! ジュエルス――」
「今だエリア!!」
私が空へ叫ぶと、空では大量の魔力を溢れだし、輝いているエリアの姿があった。
そして私の声に彼女は頷くと共に、剣で巨大な魔法刃を構成していた。
「はい! 魔法刃・光――聖天招雷!!」
「なに!?」
クシルの表情が変わった。
ずっと私ばかり意識していた彼女だが、初めてまともにエリアの認識したのだろう。
必死に足掻ているが、それよりも先にエリアが真っ直ぐに飛んでいった。
「覚悟!!」
その言葉と共に、クシルの腹部に光の魔法刃が突き刺さった。




