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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十五章:対決! 永遠の黄金船(エルドラド)
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冒険者+5:おっさんVS永遠の黄金船(8)

「行くぞエミック! ベヒー!」


 私が飛び出すとエミックとベヒーも共に飛び出し、ベヒーに至っては建物を粉砕した。


「クゥッ!! おのれぇ……なにをやっているの半魔人達!! 早くルイスを排除しなさい!!」


 破片が飛んだのかクシルが怒りの声をあげている。


 だが怒りを抱くのはお互い様だ。

 私だってミアを痛めつけられて怒りを抱いている。


「お前等! やっちまえ!!」


「ハッハー! ダンジョンマスターつっても、所詮はおっさんだ!」


 叫びながら私の目の前に飛び出してきた一人の半魔人。


 右腕がカマキリの様な鎌で、背中にもカマキリ特有の羽がある半魔人だ。


 だが、その形状に私にも見覚えがあった。


「ハンターマンティス……なら――」


 私は道具袋から、一種のけむり玉を取り出した。


 そして、それを目の前の半魔人へ投げつけると、煙玉は大きく破裂し、煙を周囲へ飛散する。


「ゲホッ! なっ、なんだこの煙……! く、苦しぃ……!!」


「ど、どうなってる……! い、息が!!」


「ぐあぁぁぁぁ!! 誰かぁ……!」


 すると、目の前にいた半魔人を始め、()()()の半魔人達が一斉に苦しみだした。


「やはりそうか……種が分かれば簡単だな」


 私は今までの魔人戦、そして目の前の現状を見て、自身の考えが確信へと変わった。


 魔人化――それは強力な力という名の魔物の力を得ることだ。

 しかし、それは同時にリスクもある。


 私が投げたのは、昆虫型魔物に良く効く殺虫型の煙玉だ。


 そう、魔人化の弱点。それは元となった魔物の弱点も受け継ぐということ。


 そうと分かったら対処は簡単だ。

 半魔人としてではなく、魔物として見れば彼等は脅威ではない。


「弱点が分かった! エミック! もう少し前線を押し上げろ! ベヒーはその場で待機して零れた敵を対処だ!」


『~~!』


『グオォォン!』


 私の言葉を聞いて戦闘形態のエミックは、目の前の半魔人達へ闇の腕を振るい、おもいっきしぶっ飛ばしてくれた。


 ベヒーも横を抜けてミアやアレン君達を狙う半魔人達へ、前脚や尻尾を振るってぶっ飛ばしていく。


 そして私も目の前の海鮮の半魔人達へ、特殊なレモンを取り出すと、全力で握って果汁を飛ばした。


「なっ、なんだ!? 身体が痺れて……しかも痛ぇ!!」


「誰か! 洗い流してくれ!! 身体が……!?」


「どうだい……<ライトニングレモン>の果汁は? 相変わらず、呆れるほど海鮮魔物に効果があるね」


 対処を誤ると私ですら危険な果実――<ライトニングレモン>


 漁師が魔物除けとして使う事で有名な危険な果実。


 素手で掴んで、一滴でも果汁を浴びれば、落雷に撃たれた様な衝撃を受ける果実だ。


 それを浴びた海鮮魔物の半魔人達は一斉に転がっていき、それを見て他の半魔人達も怯み始めた。


「なっ! なんだこれ!? 半魔人の俺等がなんでたった一人に!」


「魔物について詳しすぎる! これがダンジョンマスターなのか……!?」


「怯むな!! 数で押せば行ける!! ミミックは無視してダンジョンマスターを一点で狙え!!」


 冷静な奴がまだいるものだ。


 怯んでいる者達に檄を飛ばし、数名の半魔人が私へ目掛けて飛び出してきた。


 しかしやることは同じだ。

 私は道具袋から、相手の魔物の弱点となる道具を取り出そうした時だった。


 突如、私の側面から飛び出してくる者達がいた。


「月閃光!!」


「大螺旋!!」


 綺麗な一閃の剣技に、豪快な回転斬り。

 

 それを放ったのは騎士団の紋章を背負う二人――


「エリア! グラン!」


「遅くなり申し訳ありません、ルイス殿!」


「すまんな! 強制調査状の発行が手間取った!」


 そう言って半魔人を切り伏せたのエリアとグランだった。


 しかもそれだけじゃない。背後が騒がしくなっていた。


「師匠!」


「遅くなりました!」


 振り返ると、そこにいたのはクロノと小太郎だった。


 そして彼等のギルドメンバーや騎士団員達もおり、私は思わずホッとしてしまった。


「あぁ……良かった。よく来てくれた」


「遅くなり申し訳ありません」


 クロノは謝ってくれるが、そんなことは気にしていない。


 これで数の差は縮まったし、半魔人を制圧すれば、この戦いは終わる。


 私はグランとエリアを見ると、二人も私の視線を見て頷いてくれた。

 

 きっと察してくれたのだろう。

 エリアは強制調査状を広げると、クシル達に聞こえる様に読み上げた。


「聞け!! 王は、五大ギルド『永遠の黄金船』に違法薬物などに対する調査状を出された! ギルド長・クシル・オールドラッシュ! 抵抗を止め! 直ちに武装解除せよ! しなければ強制的に排除する!!」


 エリアが読み上げると同時、騎士達や冒険者達も武器を構えていた。


 私もいつでも動けるように身構え、半壊したバルコニーにいるクシルを見上げた。


 すると、彼女は怯むどころか笑っていた。


「アハハハハ!! 無能な騎士団に何が出来るのかしら!――これ、何か分かるかしら?」


 そう言ってクシルが見せてきたのは、宝石の様に輝く石だった。


 しかし、その邪悪な輝きに私はどこか見覚えがあった。


「あれは……まさかグアラが使ったダンジョン化の!」


「その通り! ダンジョン化の秘石よ!――さぁ! 見なさい! これがダンジョン化の力よ!!」


「やめろ!!」


 私は叫んだが無駄だった。

 クシルはダンジョン化の秘石を砕くと、周囲に汚れたマナが溢れ出した。


 そして『永遠の黄金船』の本拠地が変異し始めた。


 禍々しい植物の蔓が建物を包み込み、柱や壁に宝石の様な石が生えてきた。


「ルイス殿!? これは……!」


「ダンジョン化してしまった……! グラン! 皆を下げるぞ!」


「あぁ! その方が良さそうだ!――全隊! 下がれ!!」


「私達もだ! ギルド員全体下がれ!!」


 変異して瓦礫が降ってくる中、私達は一旦下がった。

 私もエミックとベヒーを下がらせ、建物の様子を見る。 


 『永遠の黄金船』の本拠地。

 邪悪な植物や、禍々しい宝石を生やし、最後は建物全体が黄金の様に輝き始めた。


「これは……!」


「まるで黄金の建物だ……!」


 小太郎とクロノの言葉に、この場にいる誰もが頷いた。


 変異が終わる頃には建物全体が黄金に変わり、宝石が所々から生えた異様な建物となってしまった。


 そして、そのバルコニーではクシルが笑っていた。


「アハハハハ!! どう! これが我が『永遠の黄金船』のダンジョン――『無限欲・永遠の黄金船(エルドラド)』よ!!」


「無限欲……永遠の黄金船……!」


 その言葉に私も、誰もが言葉を失ってしまった。


 グアラの時とは違うダンジョン。

 その名の通り、無限欲を満たす為だけの場所。


「それだけじゃないわよ! これがダンジョン化の力よ!!」


 クシルはそう言って指を鳴らすと、檻に入った動物達を半魔人達が運んできた。


 すると、汚れたマナによって動物達が変異し、魔物化を始めた。


 そして最後には自ら檻を壊し、私達へ牙を向けた。


 しかもそれだけじゃない。半魔人達の様子も変わっていた。


「うおぉぉ!! 力が……力が溢れる!!」


「これがダンジョン化の――半魔人の力か!!」


 半魔人の身体から、歪んだ魔力が溢れていた。


 同時に感じる確かな圧。

 それを見て誰もが無意識に武器を構えていた。


「まさか王都でダンジョン化などと……ルイス殿!」


「分かっている! 全員! 気を抜くな! ここからはダンジョン攻略……クシルを抑えるんだ!」


 グアラの時の様に、きっと力の源を倒せば収まる筈だ。


「ルイス! エリア! 奴等は俺等が抑える! お前等はその隙を突いてクシルの下へ行け!」


「援護します、師匠」


「ここは私達『黒の園』にお任せを!」


「分かった! ここは皆に任せるぞ! エリア! 頼めるか!」


「はい! お供いたします!」


 グランを始め、小太郎やクロノが半魔人達を抑えてくれる様だ。

 

 私はエリアへ声を掛けると、既に彼女も覚悟が出来ているようだ。


 力強く頷き、私の傍に来てくれた。

 そしてエミックも私の腰に戻ってくると、私達は互いに頷きあう。

 

 さぁダンジョン――『無限欲・永遠の黄金船』攻略開始だ。

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