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<16万PV達成>おっさん冒険者+レベル5  作者: 四季山 紅葉
第十五章:対決! 永遠の黄金船(エルドラド)
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冒険者+5:おっさんVS永遠の黄金船(6)

「っ!? 力量の瞳が……!」


 両目がうずく。突然、力量の瞳が発眼したからか。


 不意に窓を見てみる。

 朝日が差し始め、カーテンの隙間から微かな光が漏れていた。


――こんな時間になにが?


「――うっ!?」


 私は何事かと思ったが、力量の瞳が教えてくれる。

 同時に『+Level5』も私に教えようとしていた。


「戦いが起こっているのか……! この王都で!?」


 しかも早朝だ。なのに激しい力をぶつかり合いを感じる。

 

「まさか……ミア?」


 こんな王都で激しい戦いが起こるとは考えにくい。


 だが心当たりはある。

 ミアと『永遠の黄金船』だ。


「まさか……ミア達が!」


 私はすぐに立ち上がってガントレットブレードを装備し、道具袋や装備を整えた時だった。


「おっさん起きろ! 大変だ!! おいおっさん!!」


「この声は……アレン君か!」


 突如、拠点の扉を大声で叩く青年の声。

――それは騎士団のアレン君の声だった。


「今、開ける!」


 私はすぐに扉を開けると、そこにいたのは完全武装をしたアレン君と複数の騎士達だった。


 急いで来たのだろう。

 彼等の額には早朝にも関わらず、汗が流れていた。


 そして彼は私の顔を見て、続きの言葉を叫んだ。


「おっさん!! 大変だ!! オリハルコン級ギルド……アンタの弟子の<幻爪のミア>が作戦よりも先に『永遠の黄金船』へ殴り込んでるぞ!!」


「っ!! ミア……!――エリアやクロノ達は!?」


「副団長達は急いで強制調査状を発行してる! それでオレ等はおっさんや、他の協力するギルドへ急いで伝令だ! 急げおっさん! 現地集合だし、何より、なんかヤバイ魔力が発生してるらしいぞ!?」


 アレン君が焦っている。

 そして彼の言う通りだ。


 街中に妙な魔力を感じるし、力量の瞳がズキズキと痛むほどに戦いの規模を知らせている。


 ここから離れた場所――恐らく『永遠の黄金船』の本拠地だ。


 そこで大勢の戦闘が行われているぞ。


「なんてことだ!――エミック! ベヒー! 起きるんだ!!」


『~~♪』


『グオォォン!!』


 私は二匹を起こし、エミックが腰へ装着されるとベヒーの頭の上へと乗った。


「行くぞアレン君!」


「お、おう! 馬車を出せ!!」


 アレン君達は急いで馬車に乗り込むと、すぐに馬車を走らせた。


「行くぞベヒー!」


『グオォン!!』


 私もベヒーに指示を出し、馬車の後を追う様にベヒーは走り出した。


「ミア……! 無事でいろよ!!」


 力量の瞳がここまで強く発動することは滅多にない。


 私は嫌な予感を抱きながらも、アレン君達と共に『永遠の黄金船』の本拠地へと向かうのだった。


♦♦♦♦


 その頃『永遠の黄金船』本拠地では、まさにミア達<天極の獅子(てんごくのしし)>と『永遠の黄金船』が激突していた。


 しかしミア率いる<天極の獅子(てんごくのしし)>側は圧倒的に劣勢だった。


「グッ……ちくしょう……!」


――こんな筈じゃ……!


 ミアはそう思いながら拳を握り締め、目の前の敵を睨んだ。


 今のミア達は傷が多数あり、所謂ボロボロ状態に近いものだった。


 無論、最初は圧倒的にミア達の方が優勢だった。


 ミアも前線で戦っており、同時にミアの仲間も歴戦の冒険者達だ。


 並の冒険者では彼女達を止める事はできず、序盤で『永遠の黄金船』のガード達は壊滅寸前となった。


――連中が出てくるまでは……!


 ミアは血走った瞳で、目の前の敵を睨み続ける。


 肉体の一部が――魔物化する、謎の集団を。


「クククッ……! これがオリハルコン級ギルドの力かよ!」


「俺等のこの力の前じゃ、こんなものか!」


「んの……野郎……!」


 ミアは拳を握り締めなおし、再び構え、倒れていない仲間へ檄を飛ばした。


「お前等!! 個別に戦うな!! 怪我人を下げて! 連携でやるぞ!! コイツ等は普通じゃねぇ!!」


 ミアはそう叫ぶが、目の前の敵は最初はただの冒険者だった。


 しかし、突如として身体の一部を魔物化――変身を始めると、圧倒的な力でミア達を苦しめた。


「オラァァァ!! 獣王拳!!」


 ミアは走り、目の前の敵へ拳を放つが、その前に立ちはだかったのは亀の甲羅だった。

 

 そしてその甲羅にミアは見覚えがあった。


「なっ! ()()()()()()()の甲羅……!」


「その通り! 大槌すら砕くと言われるバトルタートルの甲羅だ! 更に俺様の固有スキル――『打撃吸収』と合わさり、最強の防御力を生み出したのだ!!」


「んだと……! オレの攻撃はスキルすら貫くのに……奴のスキルの方が上なのか……!」


「下がって団長!! 相性が悪い!!」


「退くんだ!!」


 ミアを援護しようと炎や雷を纏った矢を、仲間達が敵へと放つ。


 すると、今度は悪魔の様な翼と両腕を持った男が矢の進路上に現れ、それを何の問題もなく受け止めた。


 そして受け止めた矢は、結晶化し、そのまま砕け散ってしまった。


「そんな! 炎の矢を!?」


「僕の雷の矢が……!」


「ハァ……ハァ……! その羽に腕……()()()()()()()()()の奴かよ……!」


「その通りよ!! 魔法に強いと言われる悪魔の羽と腕! そして我がスキル『結晶化』の前に魔法や、その類は通じん!!」


「これが俺達!! 『永遠の黄金船』の《《半魔人》》の力よ!!」


 そう言って大勢の彼等――半魔人達は徐々にミア達へ距離を詰めてくる。


「ちくしょう……! 厄介過ぎるぜ……魔人化と固有スキルの組み合わせが……!」


 どちらか片方だけなら、苦戦はしても劣勢にならなかった筈だ。


 ミアはそう思いながら、近くで倒れている仲間を掴んで後退するが、怪我人があまりに多い。


 だから迅速な撤退も出来ず、ミア自身も誰一人として置いていくつもりもない。


 それ故に撤退が出来ないでおり、ミアは軽率な動きをしたことを後悔した。


「すまない……すまない皆ぁ……! オレのせいだ……オレのせいで……!」


「謝るなギルド長! 俺等もアイツらを許せなかった!」


「ここに来たメンバー! 誰一人としてイヤイヤ来た奴はいないよ!!」


 仲間達は悔し泣きするミアを励ますが、そんな仲間をどう助ければ良いのかミアには分からなかった。


 そして、そんなミア達を建物の上から嘲笑う者がいた。


「アハハハハ! 全く、ダンジョンマスターを誘いだすつもりが、こんな小娘が釣れるなんてねぇ」


 深いな女の笑い声に、ミアは建物の上を見上げた。

 するとそこには全身を宝石で着飾ったドレスを着た、クシルの姿があった。


「テメェがクシルか……!! なんでだ! なんでセンセイを……ルイスを狙う!!」


「目ざわり、ムカつく……それ以上に理由はないわよ。ここまで築いた財を、たかが一人のおっさん冒険者に揺るがされてるのよ? 胸糞悪いじゃない!!」


「テメェ……! ルイスもオレの家族だ!! 絶対に手を出させねぇ!!」


 ミアは拳をクシルへ向かって向けるが、クシルはそれを見てわらうだけだった。


「アハハハハ!! 魔人ならともかく、半魔人にすら苦戦しているあなた達に何が出来るのよ?――ほらアンタ達!! とっとと始末しなさい!!」


「了解!!――見ろ! アビスクラブの腕に甲羅だ! 巨石にすら耐える甲殻! 全てを切り裂く最強のハサミ! さ~て、誰から切ってやろうか? やっぱテメェか幻爪のミア!!」


「クソがっ……!」


 近寄る敵にミアは再度構えるが、既に身体はガタガタで、上手く力が入らない状況だった。


――血の匂いがする。オレの血だ……足も、腕も痺れてきた……!


 自分の状態はミアは一番よく分かっていた。


 きっとまともに戦えない。それを確信しながらも、ミアは身構えた。

 仲間を守る為に。


――そんな時だった。


 目の前のアビスクラブの半魔人は、不意に巨大な影に日を遮られた。


「あん、なんだ? 雨でも降るのか?」


 曇りかと思い、半魔人が上を向いた時だった。


『グオォォン!!!』


 アビスクラブの半魔人は、巨大な質量――ベヒーによって潰された。


 同時にベヒーが飛んできた衝撃で、崩壊する『永遠の黄金船』の所有する周囲の建物。


 目の前の出来事にミアは一瞬、理解が遅れたが、すぐにベヒーだと分かった。


「ベヒー!?」


『グオォォン♪』


 ルイスが留守の間、面倒を見てくれるミアを見てベヒーは嬉しそうに鳴いた。


 すると、更に背後から騒がしい声がミアは聞こえてきた。


「おい!! おっさん無茶すんな!!」


 それは騎士達――アレン達が乗る騎士団の馬車の集団だった。


 それを見てミアは、つい少し安心してしまうと同時に、ベヒーの頭から聞こえてきた声に我に返った。


「……ミア」


「……あっ」


 声の主――朝日が差すと共に姿が鮮明に映る人物。

 

 ルイスの声に、ミアは再び涙を流した。


「ルイス……オレェ……!」


「何も言うな。遅れてすまない……」


 ルイスはそう言うとベヒーの頭から降りた。

 そして、周囲の状況を見る。


 倒れているミアの仲間達。

 そしてベヒーに潰されている異形の冒険者。


 それを見てルイスは悟った。


「『永遠の黄金船』……! 弟子が世話になったな……!」


「なっ、ベヒーモス!? それになんだアイツ……!」


「テ、テメェ……何モンだ!!」


 突然の派手な登場に唖然とする半魔人の冒険者達は、そう言いながらルイスへと身構えた。


 それを見てルイスは怯む事はなく、そのまま彼等へと歩みを進めていく。


「私か? 私はルイス・ムーリミット……君達より()()()()()()、ただの冒険者だ!!」


 ルイスの放つ言葉に、エミックも腰から降りてシャドージャブで威嚇するのだった。

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